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[第18記]いってらっしゃい

町から人は消え、4人だけが道に残った。ゲートの方向から数人の政府軍が歩いてくる。


「…あんたらも隠れてな。」


「いや…マルディエだけじゃ…!」


「肉も骨もオレのだ。他人にはダシも取らせねぇ。」


「…負けそうだったら助ける」


「そりゃどーも。早く行け」

そう言われてオペ達はしぶしぶ物陰に隠れた。


ザッザッザッザッ……


「…あん?お前だけか?上から聞いたのは大規模な保護施設があるって話だったんだが…」


「オレの心は大規模に寛大だからその情報は大正解だな。よかったじゃないか」


「総員…構え。撃て」

政府軍の一斉射撃がマルディエを襲う。


ニヤリとマルディエが笑う。その瞬間ー


マルディエが()()()


「は?どこいっ」

バァンバァン…バァン


政府軍の3人が撃ち抜かれる。


「後ろだ!」


パタタタタタッ…


「いないですよ!」


「馬鹿…な」

バァン


「ちょっ」

1人になった政府軍が焦燥する。前にはいつの間にかマルディエがいた。


「あの世で仲間たちに自慢しな」


バァン


自分の真下に向かって弾丸を放つ。


突如、マルディエの影が消え、政府軍の真後ろから弾丸が飛んできた。


ヒュン…

「うっ…」


「急所は外した。帰ってロダーのおっぱいでも吸いながら愚痴ってろ。『ママ〜仲間が全員ルドに殺されちゃったよ〜』…ってな」


「うわぁぁぁ!」

ヘリに走っていく。その政府軍を乗せた瞬間、逃げるようにヘリは飛んで行ってしまった。



「「うぉぉぉぉ!」」

周りから沢山の獣人がマルディエにわらわらと集まってくる。


「またやっつけちゃったよ!すげえ!」


「ルド!さすがだな!」


「虫を追い払っただけさ?羽音がうるさくてね」

マルディエが冗談を吐きながら銃をしまう。


「…え?お前ルド?」

物陰に隠れていたサディが指を差しながら現れる。


「はははっ、初めましてかな?」


「ルド…今の戦闘力…お前が必要だ」


「スカウトかい、あんたお偉いさんなのか?」


「一応、SIMの総司令をしてる…オペだ。」


「ふぅーん…じゃあさ…」

ルドがサディの足元にリボルバーを滑らせる。


「1発だけ弾を入れてる。頭に当てろ。3回やって死ななけりゃ、あんたらの仲間として戦うぜ。」


「…………俺がやる」


「ダメだ。オレが見込みアリと判断したのはその嬢ちゃんだ。」


「…………」

サディが静かにリボルバーを拾う。


「…6分の3…だよな?」

サディがルドをチラリと見る。

ルドは頷き、小声で"バーン"と言った。


「よし…やるぞ…」

サディが息を吸う。そして…


カチカチカチカチカチカチ…

6回引き金を引いた。


「…ふぅ…死んでないよ。ルド。」


「やんじゃん…なんで空砲って分かった?」


「正義の化身であるお前が、わざわざ獣人殺しをするわけないと思ったからな。」


「……もし弾が入ってたら?」


「…あの世で自慢するよ。」


「はっはっは!嬢ちゃんほんと…イカれてるねぇ。喜んで仲間になろうじゃないか。」

嬉しそうに笑い、ルドは手を差し出した。


「よろしくな」

サディも手を出し握手をかわす。


「ルド様…この町を離れるんですか?」


「悪いね。世界を救わなきゃなんで」


「……………」


「それとも、この町はオレがいなきゃなにも出来ないへなチョコタウンだったかな?」


「…『ウェイクロックを訪れし者、町を家族と思え』」

下をうつむいたまま、震えた声で話す。


少し驚いた顔をし、すぐにルドは微笑む。

「……『ウェイクロックを離れし者、家族を支えと思え』…ありがとうよ。」


「いってらっしゃい…ルド様…!」


「ああ。」


「あっちに俺たちが来た飛行機がある。」


「あれか。」


「お待ちを!ルド様!!」

塔から獣人がこちらに走ってくる。


「これ…!塔にあった情報です!」


「ありがとう。じゃあみんな!達者でなー!」

ルドが封筒を振ってゲートを出る。


「「いってらっしゃいルド様ー!」」

町のみんながルドを見送る。涙を流す者もいた。その光景を、ルドは振り返らず後にした。



ガチャ…


「さてと、よろしく頼…」


ガチャ…

ルドはすぐに飛行機の扉を閉めた。


「…やっぱやめていいかい?」


「え?」


「え?いやだって」

ガチャ…


扉を開け、ルドは飛行機の座席に乗り込んだ。



「……なんでこいつがいるんだい」

飛行機は飛び立ち、ルドはため息をつく。


「仕方ないやんうちも仲間なんやし」

不満そうにザヤが頬杖をつく。


「はぁ…テンション終わったねこれ…」

ルドがザヤと反対のほうに頬杖をつく。


「ルドはなんでザヤのことが嫌いなんだ?」

オペが後ろを振り返りルドに問う。


「こいつ、前にこの町に来た時にやたら家の中をジロジロ見るし、全員とツーショット撮り始めるし…陽気すぎて疲れるんだよ。」


「ルドはん、うちと写真撮ってくれないし…うちが町を華やかにしようとしてもすぐに『昔からこうだ』とか言って…ただの頑固ジジイやん」


「はぁ?ザヤてめぇ…」

ルドが腰のリボルバーを手に取る。


「うわ〜!ジジイが怒った!大丈夫?脳の血管キレて死んじゃうけん安静にしとき〜?」


「…ここで撃っても墜落するだけだ。降りたら殴る」


「次の目的地はどこなんだっけ?」

サディが町の人に貰った果物を食べながら言う。


「一度マインドボイラーに戻ります。集まった情報を照合しないと…」



フィーン…飛行機が支部の滑走路に着陸する。

「なんか懐かしいな。」


「せやな。」


ウィーン…自動ドアが開く。

「…なんかこの支部だけ未来的だよなあ」


「うちのアジトは新しいもん積極的に取り入れるようにしとるけぇな。」


「…じゃ、そこの会議室でやろか。」

アジトに入って歩くと、ザヤは廊下の向こうにある部屋を指差した。


「ボクは広間で過ごしておくよ。」

シズは来た道へ戻っていった。


カチャン…



「…じゃあ始めよう。」

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