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[第16記]ウェイクロック

「…お!気がついたで!」

目を開ける。ザヤが顔を覗き込んでいた。


「良かった…!大丈夫だったか?」


「…どうなってるんだ…」


「サディは夢を見てたんや。」


「ゆ…め…」

「よかった……よかったぁ…」

サディの目からポロポロと涙が落ちる。


「どんな夢見てたん?」


「オペとかみんながアタシのこと嫌いで…ザヤとキスしててぇ…夢で…よかった…ほんとによかったぁ!」


「ちょっちょまっ」

「オペとキスしたん?うちが?」


「そうだよぉ…哀れとか言われて…」


「きっしょいな、うち自分で自分に死ね思うの初めてやわ。生き恥ーザス(いきはじーざす)や」



―シズの夢

「………煙みたいなのが出たけど…みんな大丈」


「        」


「  」


「      」


「…石になってる」

感じた時には既に、石になっていた。


「いったんこの建物から出てみよう…」

感じた時には既に、歩き出していた。


「……」

外に出ると暗闇が広がる。


「…暗い…真下の地面以外見えない…戻ろ」

振り返った時には既に、建物は消えていた。


ヒタ…ヒタ…


「…………」

何かが後ろを歩き回る。


「ねぇ」

聞いたことのある、知らない声。


「…誰?」


「あなた知りたい?」


「……なにをさ」


「あなた知りたい?」


「…知りたい」


「きっとできるわ」


カラン…ッ

目の前に鎌が落ちてくる。



「はっ…」

シズが目を覚ました。


「起きたかシズ!」


「夢…?」


「あぁ、夢を見させられていたんだ」


「どうやらそれぞれが最も嫌悪することが夢として出てきてるけん。シズちんはどんな夢見はったん?」


「ボクは…真っ暗だったよ」


「真っ暗?」


「何もなかった。何もなかったんだ。」

シズは深く息を吐きながら自身の手を見た。


「…そうか。ニックも起こさないと。どこだ?」


「そういえば夢にニックはんは出てきてないでな」


「ザヤもか?俺も出てきてない…」


「…早く見つけたほうが良さそうやな」

4人とも建物の中を歩き回る。


「……いたよ」

シズがそう言い、下を見たまま固まる。


「ほんとか!早く起こさない……と」

オペがシズに駆け寄る。そこには…


ニックの死体があった。

全身が砕けている…


「…は?なんで…」


「…夢見てる隙に殺されたんかな?」


「クソッ…!」


「…どうする?ここから…」


「…まず情報を見よう…」


建物の奥に戻っていき扉を開ける。


「俺の夢と構造が違う…」


通路が続いており、その先に更に剛鉄の扉がある。


ゴンゴン…


「…誰です?」

扉の向こうから声がする。


「SIMの総司令オペだ。カードはこれを…」


小さな窓からカードを入れる。


「…たしかに。ではお入り下さい。」


ガチャ…


「政府の情報ですかね?」


「あぁ、そうだ。頼む」


「わかりました。」

奥へ進み、封筒を取って戻ってくる。


「…どうぞ」


「ありがとう。」

封筒を開け、全員で中身を見た。


「…なるほどなぁ。こりゃ重要なわけや」




その紙には、政府本部の所在地が書いてあった。


「これで潰すべき場所が分かったね…」


「ガルガイド…か。意外と都会にあるんだな」


「あっ…」

何かを思い出したかのように案内人が声をもらす。


「そういえばここに入ってくる前に皆さん倒れてましたよね。もう1人はどうしたんです?」


「ニックは死んじまったけん…」


「…まて。なんで倒れてたと分かった?」


「監視カメラですよ。保呪者由来のアナログですが」


「…なら俺たちを眠らせた奴の姿が写っているかもしれない…!確認してくれ!」


「わ、わかりました!」



しばらくして、申し訳なさそうに案内人が歩いてきた。写真を2枚だけ持っている。


「すみません…これとこれの一瞬しか…。」


黒い軍帽にウィンドブレイカー、鉄のマスクを身に着けている茶髪の男だ。


「まだ手がかりが…こっちは…?」


もう1枚の男は正面を向いていた。

黄色い瞳をしている。


「顔がみえた…!これは大きいぞ…!」


「倒すべき敵の顔はこれか。」


「う〜ん…」

シズが難しい顔をする。


「……ボク達だけでこいつと戦うのは危険すぎる。またさっきみたいに眠らされて全滅だよ。」


「確かに…本気で来られたらまずいな」


「もう1人強い味方がいる…」


静かに聞いていた案内人が話す。

「あ…それならこの支部から南の方に行った『ウェイクロック』という街にある支部が凄く強い保呪者がいるとかって噂ですよ。」


「ほう…『ウェイクロック』…」


「ええ。お役に立つ情報かは分かりませんが…」


「ありがとう。助かったよ。」

オペは深くお礼を言い、後ろの扉を開ける。3人もオペに続いてマリンヴェルタ支部をあとにした。



「ウェイクロックってことは…あいつかぁ……はぁ…っ…うちはあんま好かんね」


「知ってる奴なのか?」


「正義を擬人化したような奴や。SIMに入ったときも政府軍しばいて話聞いて自分から入れてくれ言うて入った異常者。楽観的なうちとは合わん」


「ザヤが仲良くないなんて…」

シズが唾を飲み込む。


「うちの事なんやと思ってん?ちゃんと好き嫌いはあるでな。」

飛行機に乗り込みながらふてくされた顔をする。


「おかえりなさい。出発しますか」


カチャ…ブルルルル…

運転手が鍵を回した。エンジンがなる…


「ほらあんたらも乗り。うちはノリ気じゃないけど」


「運転頼むよ。」


「任せて下さい。次の目的地はどこへ?」


オペが顔を向ける。シズ…ザヤ…サディ…

3人とも頷く。オペは運転席に向かって宣言した。




「『ウェイクロック』…だ。」

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