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噓の上塗り

 

 妻と連絡がつかないまま1週間が経った夜、パジャマに着替えてベッドに入ろうとしていた時にスマホが鳴った。慌てて手に取ったが、妻ではなかった。妻の母親からだった。電話が通じないので心配してかけてきたのだ。


「新型コロナに感染してしまって病院に入院しているんです」


 とっさに嘘をついてしまった。


「大丈夫なの?」


 殺気だった声が責めるように耳の奥を刺した。


「大丈夫です。でも、隔離が必要なのでしばらくは入院することになります」


 入院期間は10日ほどになることに加えて、家族も見舞いに行けないことを伝えた。


「でも、電話が繋がらないってどういうこと?」


 不信感を(あら)わにした声だった。


「それは……、病院の規則だと思います」


「規則?」


「はい。入院患者は退院するまでスマホを使用できないので、電源を切っているのだと思います」


 嘘を上塗りした。


「そう……」


 がっかりしたような声になった。


「心配するから連絡しないでと言われていたものですから」


 訊かれていないのに言い訳をしてしまった。


「そう」


 無理矢理自らを納得させるような口調になった。しかしそれも束の間、「退院したら必ず連絡してね」といきなり電話を切られた。


 どうしよう……、


 すぐにばれてしまう嘘をついてしまったことに落ち込んだ。しかし、失踪したとは言えなかった。そんなことを言えるはずがない。だから、これは必要悪なんだと思い込むことにした。


 仕方がない、

 仕方がない、

 仕方がない、


 同じ言葉を何度も繰り返して、自らを慰めるしかなかった。



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