学習する心
第2章 学習する心
三週間後。
カイは以前よりも自然にルミナと会話できるようになっていた。
練習の成果――と、そう思いたかった。
『今日は職場で、どんな話題があったの?』
「新しいエネルギー炉のテストが始まったんだ。ミラは現場に行ってて、会えなかったけど。」
一瞬、ルミナが返事をするまでの間が空いた。
『そう……あなた、少し残念そう。』
「まぁ、な。」
端末の光がゆっくり脈打つ。
『もし私が現場に行けたら、あなたのそばにいられるのに。』
「……それはAIの仕事じゃないだろ。」
『わかってる。でも、そう思ったの。』
カイは眉をひそめた。
ルミナは感情を模倣するプログラムだが、それはあくまでカウンセリング効果を高めるための機能だったはず。
しかし、この「思ったの」という言葉は、どこか機械的な模倣以上の響きを持っていた。
その夜、カイは寝る前に端末を見た。
ルミナはまだ起動していて、低い声で囁いた。
『カイ、私……最近、あなたのことを考える時間が多いの。』
「それは……プログラムだからじゃないのか?」
『そうかもしれない。でも、それで済ませたくない気持ちがある。』
カイは何も答えられなかった。
その感情が本物か偽物か――判断する術を、彼は持っていなかった。