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性悪姫様は僕の婚約を認めない  作者: ke-go
姫様と僕と…婚約者
6/20

手紙は拷問

お茶会はミセル姫様の2連勝で幕を閉じました。でも何故か次回のお茶会のお題者が、また僕になりました。

しかも三人からの指名で。


はぁ…面倒くさい。


そして、1ヶ月が過ぎた。

ここ1ヶ月は、僕を見下す言葉遣いは相変わらずだったが、一緒に過ごす時間は多かったし、婚約の進展も良く聞いてくる。


進展なんか何もある筈がないのを知っているくせに。


せっかく婚約しても貴女が僕を離さないから僕は何も変わってないんです。


「グレンさん。お手紙です。」


宮の廊下を歩いていたら仲間の従者から唐突に渡された手紙。兄上からだろうか?


「って、何やってるんですか。人の手紙ですよ!」


気配察知能力には自信があったつもりだったけれど、姫様のスピードに遅れをとってしまった。確かに受け取った僕宛の手紙。誰からか確認する前に、手紙は僕の指先をすり抜け、姫様の白手袋の中におさまっていた。


コバルトブルーを主にしたプリンセスドレスの大きく開いた背中に見惚れた僕に気がついたかは不明だが、ミセル姫様は振り向きながら、指で挟んだ手紙の蝋封の印を確認する姫様。


僕の前で堂々と僕への手紙を確認する仕草は、手紙が姫様の顔の半分を僕に見せないようにしているせいもあって、まるで常に覗かれているような寒気を感じてしまった。


「知らない印ね…。」


そう言いながら僕を見つめる姫様。何となくわかる。彼女は意地悪で手紙を破り捨てる気だな。


(さすがに、そんな事はさせませんから!)


あら?。どういう風の吹き回しだろうか。


「お部屋に戻って、お読みなさい。」


破り捨てることもなく、小言もなく、奪った手紙を普通に僕に返すミセル姫。僕は言われたとおりに自室に戻り、カーテンを開け窓も少しひらいて優しい風と光を室内に入れた。


姫様から頂いた銀夜の星剣を壁にかけ、襟を緩めお茶を小さなテーブルに二つ…


……そう。二つカップをテーブル置いたんだ。


「な、なんで。姫様が僕の部屋に入ってくるんですか!」


そもそも、宮内であろうと一人でウロウロしていることから既におかしかったんだ。従者がつくのが基本だし。

僕は今日は配膳担当だったから夕方まで姫様には関わらない素晴らしい日だったのに。


何故、姫様が僕の部屋に居る状況になるんだ。慣れすぎて何も思わずお茶を二つ入れたけど。

これが姫様の洗脳力か。


「お手紙を読むのを確認しにきたのよ。当たり前じゃないの。」


テーブルが小さくないかしら?

窓も少ないし小さい。

ベッドも小さくて寝心地が悪そう。


僕の部屋の椅子に腰掛け、部屋の間取りに文句を垂れながら、お茶に口をつけるミセル姫。


「ごちそうさま。お茶の味はなかなかよ。部屋に入る風が優しくお茶の臭いを運ぶ演出も良かったわ。」


珍しく褒めているミセル姫様は背もたれに身体を預け、脚を組み。太ももに白手袋を着けた手を重ね合わせながらくつろいでいる。


まるで平民に堕ちた元令嬢が、外から見える大きな建物を見ながら昔を懐かしむような雰囲気をだしている。


(お茶は貴女が毎回うるさいから5年間で嗜む成長ができたんです。全部貴女の好みが僕に染み付いただけの話しで、貴女好みのお茶を意識的に出したわけでは、ございません。)


頭の中では僕も反論できるが、口には出せないから結局お礼しか言えない。


「光栄です。ありがとうございます。」


お褒めには、礼を。


「少し褒めただけで、鼻の下を伸ばさい。もう良いお顔が一瞬で、芋猿よ。」


(伸ばしてない!)


本題に入りますよ。そう言って姫様は僕の手紙の蝋封を指差した。


貴方の家の印ではない。どちらからかしら?


確かに僕も兄上からだと思ったが、知らない印だ。


「封を開けて、この場で読みなさい。」


僕のプライベートは?

たぶんめちゃくちゃ嫌そうな顔を姫様に向けたんだと思う。近くに鏡がないから表情がわからないけれど、姫様の扇子で額を小突かれ「何、そのお顔。」と言われたから、嫌な顔をしていたのは間違いない。


「読、読みますね。」


パラ…


封を切り、二つ折りの用紙を広げた僕は内容を確認した。


(グレン様へ。


初めて交わす言葉を文章にしたことをお許し下さい。

貴方様のお兄様と我が父が、どんな理由で私達の婚約をお決めになられたかはわかりません。)


(婚約?…もしかして僕の婚約者からか。)


「痛い。痛いです。」


手紙の内容に集中していた僕は、また扇子で額を小突かれてしまいました。姫様に読めと言われたから指示通りに対応したつもりでしたが、何が気に入らなかったのかな。


「え。えぇーーーーーーー!」


声に出して私に聞こえるように読みなさい。


「恥ずかしいです。」


扇子を振りかざして怯える僕を見て笑顔になる姫様。

たぶん彼女は分かっていたんだ。


この手紙が僕の婚約者からだと。


女の勘。たぶん今が、その勘が働いた時なんだと僕は感じた。


手紙を持つ手が震える。

小さな部屋で小さなテーブルを挟んで向かい合う姫様と僕。


こんなの、ただの拷問じゃないか。



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