お茶会と言う名の戦場
「まあ、レミーナはおやすみですか。」
第4王女はお茶会を欠席。元々、身体が強い方ではなく何方かと言えば寝込みがちで、あまり人前には現れない。それを知っていても、わざわざ口にだすミセル姫。
「あら、ミセル姉様。グレンさんがいらっしゃらないようですけど…もしかして愛想つかされました?。」
扇子で口を隠し、従者のいないミセル姫を小馬鹿にするような目線を向け、黒服の男性の手を支え代わりにしながら中庭中央の茶会テーブルの席へ座ったのは第2王女のセシル姫。年齢は19歳でグレンと同い年。腹違いのミセル姫の1歳年下の彼女もまた、どういうわけか発言がいちいち棘がある。
国王は強面だが、性格は穏やかなで器が広いと言われているが、いったいこの二人のひねくれ感は誰に似たのかは、まだ誰もわからない。
「遅くなったっす!」
確かに一番遅く茶会に現れたのは第3王女のマール姫。
年齢は14歳。少しだけ二人と歳は離れているが、口も態度も軽い。
数カ月に一度の頻度で催される王女達のお茶会。そのお茶会は最上流階級の優雅なひとときとなれば良いのだが
付き従った僅かな従者達は毎回苦痛を与えられる。
上品な姫様のイメージなど、誰も思い描かない。
下品で汚い言い争い。どうやら今回もまた始まりそうだ。
「剣よ!」
「魔法よ!」
「お金。金っす。」
今後の王国に必要なものは何か?
今回の茶会内での議題を決めたのは、宮廷料理長のバルザミさん。議題担当は毎回、姫達が順番に決めていく。当てられた宮仕え達は、たまったものではないが、議題次第では、他の宮仕え達から冷たい目で見られるから、簡単で浅い内容で済む議題をださなければならない圧で毎日頭を悩ませている。
「剣聖の国に剣がなくてどうするのですか!」
国の象徴は常に剣。一番国の御印を推すのは第1王女のミセル。
「剣?。そんなの当たり前よ。これからは魔法よ。」
象徴は剣。でも時代は魔法を求めているのが何故分からないのかしら?。
そう言いながら従者の黒服の男の炎の魔法を空に打ち上げるように指示する第2王女のセシル。
「無駄。無駄。無駄っす。世の中、金っす。権力で金を積めば安泰っす!」
小さなテーブルを運ばせ積まれた金貨を従者達に投げ捨てる第3王女のマール。
不意に訪れた稼ぎ場に従者達は職務を忘れ膝まつきながら金貨を必死に集めだす。
金で解決でしょ?と二人の姫に手を広げ主張する姿は、結局、ミセル姫セシル姫と同類の臭いがする。
頼みの綱の第4王女は伏せがちときたものだから、宮仕えの者達は皆、将来をあんじて頭が痛くなっていた。
一方で、後から来なさいと言われたグレンは3人の姫の醜い争いがまた始まっているだろうとは思いながらも、
ロナールと剣術の話しで盛り上がっていた。
やはりロナール様は僕より剣術の先が見えている人だ。
尊敬を込め質問を続けるグレン。ミセル姫には全く感じないこの気持ちを押さえるのは、自分の為にはならないと思うと、茶会にいくのはだいぶ遅くなっても問題ないだろうと言う考えになってくる。
「たった半歩踏み出すだけですか!」
間合いの取り方を念入りに聞くグレン。さっそく教えてもらった感覚を掴もうと構えをロナールに見てもらった。
なるほど。なるほど。間合いが遠い攻撃は、こちらからは攻めないであくまでも自分の間合いに誘い込むのですね。
長距離に対してわざわざ近距離の間合いをつくる必要はない。
「長距離攻撃は観察の時間をくれるですか!」
その教え…いただきました。
ロナールはグレンと知り合って5年。騎士団にも過去に手合わせした中にもいなかった、素直さと吸収力の速さ。そして…才能と可能性が嬉しくて仕方がなかった。
弟子だとは思っていない。
ただ、自身の全盛期にもし現れて対峙したら…
戦場で背中を任せ共に戦えたら…
もう少し、切磋琢磨できる時代が一緒だったら…
良き好敵手だっただろうと。
年齢的に彼の先が見れない悔しさと国の象徴の剣を掲げてくれる英雄かもしれない期待。
嬉しさと寂しさを両方感じてしまう青年をロナールは常に気に掛けていた。
だから…
報告が遅れたけれど、婚約の話しを切り出したら、木剣を膝で叩き割り…
「儂の孫を誑かす不届き者は誰じゃ!」
と、騎士団を招集し婚約者の領地へ乗り込むと言い出した時は必死にしがみついてしまった。
こんなに反対されるとは思わなく少しショックだったけれど…
孫と言われたのは…なんだか嬉しかったな。
姫達の年齢は、
ミセル姫が20歳
セシル姫は19歳
マール姫は14歳
そしてレミーナ姫は16歳でセシル姫と母親が同じです。
グレンは今年で19歳です。