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レルラレル  作者: 書人
4/7

04.変化

俺は今頭を悩ませている。

何かを見ている訳ではないが、一点を見つめてボーッとしている。


俺は何かしたか?

あの日のことをよく振り返って見ると、俺とジンは天造技術の時間に、全身全霊をもって測定用ダミーにまあまあな傷をつけた。

修復しにくい壊し方をしてしまったのだろうか...?

それが原因?


否だ。


なぜならジンは呼ばれていない。

厳密に言うと、ダン先生"には"呼ばれていない。

同じ件で、別々に呼ばれることはないだろう。


だとしたら...


本当に分からない...

学校で暴れたりなんかしないし、先生に舐めた態度も取っていない...と思う。


考えながら歩いていると、廊下で先生と生徒が話しているのが見えた。

どうやら先生は生徒から渡されたプリントを見ているようだ。


「うーんと、君の特性は《引火》で合ってるよね?」


「はい」


生徒は頷くと同時に答えた。


「じゃあとりあえず、この教科書を読んでくること、それと来週からは放課後に先生のところに来てください。」


「分かりました!」


教科書を受け取った生徒はそう言って去っていった。


なるほど。

要は特性持ちの生徒が呼ばれるって訳か。

まあ、特性によって力の扱いが変わるなら確かに必要か...

だけど、放課後に残るのはめんどくさいな。


「あ、いた。」


いきなり後ろから声をかけられ、びっくりして振り向くとそこにはダン先生がいた。


「うわ!」


すると、いきなり襟の後ろを掴まれ、連行された。

これって体罰だよね?うん、体罰だ...

まあ良いんだけどね?やっぱり怒られてたか...

俺、憧れの先生に嫌われちゃった...


とか考えていると、ダン先生は俺を連れていきながら、今はほぼ使われていない教室に入った。


「よし、誰もいないな...」


ダン先生は教室の外を眺めながらそう言った。


「なんで連れてきたのか説明してやろう。

それは、お前が《異常特性》持ちだからだ」


「異常特性...?」


俺は聞いた事のない単語に戸惑っていた。

するとダン先生は説明してくれた。


「異常特性って言うのは、自分の持つ天造力とは無関係の特性を持っているということだ。

お前の天造力は《雷》だが、お前の持つ特性は《磁力》ではなく《重力》だ」


待て待て。

重力ってあの重力だよな?

絶対強いよな?

俺は少し嬉しい気持ちになった。


「お前がテストで見せた、触れた敵に電磁力を持つ電気を帯電させ、電磁力を付与した石を投げる基礎技を使っただろ?」


「使いましたね」


「確かにあれからは電磁力を感じたが、あの磁力じゃあんな威力は出せない。だから、そう判断した。

それともう1つ。俺も重力特性持ちだ。」


「えっ...」


物凄い高揚感が俺を襲った。

胸が満たされていくのを感じた。

あの憧れの人と同じ天造力を使い、更に同じ特性持ち!?

嬉しいことこの上ない。

今ならなんでも出来る気がした。

今すぐにでもジンに自慢しに行きたい。


「だが、これはあまり言いふらすな」


いきなりストップをかけられてしまった。

この人心が読めるのか?

と思う時が時々ある。

これも人生経験なんだろうか。


ダン先生は続けてこう言った。

そしてそれは俺に謎を残す言葉だった。


「異常特性持ちはもう"普通"の生活は出来ない。

しかも、特性が重力となれば尚更だ。

だから俺は話したくなかったんだ...

俺自身、この特性のせいで人生が潰れたも同然だ。」


そう語るダン先生の顔は、心底人生に呆れているって感じだった。

どれだけ力があっても、人間は人間なのか。


色々聞きたいことはあったが、そういう雰囲気でも無いので、そのまま解散した。


それにしても『人生が潰れた』ってどういうことだ?

みんなに認められているし、苦しい生活をしているわけでもないのに、なぜそう思ったんだろう。


俺には疑問だけが残った。


ふと前を見ると、ジンがいた。


「あっジン!今日も一緒に帰ろう!」


「ん?レルか。

良いよ、一緒に帰ろう。」


うーん...?

この様子のジンは何か隠し事をしてる。

ジンは普段、俺が思わず目を逸らすくらい、アイコンタクトがすごいんだ。

だけど隠し事をしている時は、びっくりするくらい目が合わない。


でも、何となく察した。

ジンも今日、副校長に呼び出されていたのだが、おそらく似たような感じだ。

ジンも《異常特性》持ちなんだろう...

何となくそう思った。


その日は、いつもより少し静かな帰り道だった。


――――――


寝る準備を終えて、ベッドの中で考え事をしている。

異常特性ってのは危険なものなのか?

それも、人生を変えるほどの...


あんなに感情の溢れる表情をしたダン先生は、初めて見たから、あまりのインパクトにあの光景がずっと脳内に張り付いている。

と同時に、俺の心配を助長する。


事実を聞いた瞬間は、周りとは違うという優越感に浸れていたが、今では心配が感情のほとんどを占めている。

それに特性があるからと言って、強かったり、優秀である訳では無い。

使いこなすにはそれ相応の努力がいる。


確かに、俺は個性や自分らしさを追い求めてはいた。だが、今ではその求めた物が枷となっている。

俺はこの特性を上手く自分の物にできるのか、プレッシャーだけが重くのしかかる。


(あの時のあいつも、こんなに悩んでたのかな...

いや、それ以上か)


今まで悩み事をしたことがなかったから、クリファにあんなことが言えたんだ。

胸が苦しくなり、落ちていっているような、嫌な感じがする。


(ジンも大丈夫かな...)


1人悩み、眠れない俺をよそに、外ではカエルの鳴き声が遠くへと響いていた。

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