02.別の道
よく聞く学校のチャイムが聞こえてくる。
やっと終わった。
小学生の頃から思っていたが入学式に限らず式というのは非常に退屈だ。
しかし、そんな考えがすぐに消えるくらい俺は緊張している。
なぜなら周りの同級生がみんな出来るやつに見えるからだ。
中学校の入学式の時もそうだった。
実際はそんなことないと分かっているのに毎回同じようなことを思うのだ。
それにもう友達は作りたくない。
だけど、孤独なのは嫌だから話せる人位は作っておくか...
「この学校の生徒としてふさわしい行動を...」
校長の話、早く終わんねえかな。
―――1ヶ月後―――
「レル、次の授業なにか分かるか?」
「分からん...でも授業変更がどうとか言ってたよな。」
結局友達が出来た。
こいつは『ジン』。
俺とかなり似通った考え方をしていて、趣味も近かったからすぐに仲良くなった。
あれから1ヶ月、普通に学校に馴染めたし楽しく過ごしてる。
でも時々それでいいのか不安になる...
「謝りたいな...」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、なんでも無い」
(声に出てたか...?ここまで思い悩むのは初めてだ)
ジンと話しながらそんなことを考えていると、教室の扉が開くガラガラという音がする。
あまり関わりのない生徒が教室に入るや否やこう言った。
「次の授業、天造技術だって!グラウンドに集合して!」
あの先生の授業か...
――――――
「じゃあ天造術教えていくぞー」
この気だるそうにしてる先生は『マック・ダン』先生だ。
ダン先生は一言で言うとめっちゃ強い教師だ。
この国では毎年開催される天造技術の練度を競う大会『ナトル』が行われるのだが、ダン先生はもう35年連続で優勝している。
この大会は俺の国含め12カ国で開催されていて、5年以上連続で優勝すれば栄誉天造術者に選ばれる。
そしてその栄誉天造術者は8人いて、ダン先生はその中でもtop3に入る実力の持ち主だ。
「まず、天造術を教える前にお前たちの実力を見ておきたい。
だからまずはあのダミーに得意の技をそれぞれ打ってもらうぞー。
あれはS級天造術者でも破壊するのは難しい、
思う存分力をぶつけてみろ。」
S級でも壊せないのか...
『ナトル』の上位層のほとんどはS級天造術者だ。
それほどの力を持ってしても壊せないと...
「あれ壊せたらS級相当か、面白いじゃん。」
ジンがそういうとそれにダン先生が反応した。
「自信ありって感じだな。
その通り半壊以上でS級レベル、部位損傷でもA級レベルだ。
自分の実力は知っておいて損はないだろう。
ところでお手本は欲しかったか?」
「欲しいです!」
俺とジンは即答した。
ダン先生は最強だ。
使う天造力も雷。
だけど、使う天造術は最弱の《強化系》なんだ。
シビレルだろ?
何を隠そうこの俺は、ゲームでも弱キャラを使いたい所謂、逆張りプレイヤーなんだ。
そういうのに憧れるんだ。
ありふれているって?それでもいいさ。
ふとダン先生に目をやると、ダミーの前に立っていた。
どうやら本当に手本を見せてくれるらしい。
ワクワクしているとダン先生はゆっくりと動き出した。
と、思ったら消えた。
次の瞬間、地面は抉れ、それと同時にゴウッと強風が吹いた。
あまりの風に眉をひそめながらダミーの方を見ると、
ダミーの前に、蹴る直前であろう体勢のダン先生の残像が見えた。
ダン先生が通ったであろう空間には稲妻が走り、ものすごい光を放っていた。
ダン先生がダミーの後ろに着地すると同時に、バンッという耳を劈く爆発音のような轟音が鳴り響き、ダミーは粉々になった。
砂煙と共にダミーの欠片が降り注ぎ、
まだ轟音が反響し響く中、それを見て俺は思った。
この学校に来てよかった。
この先生に会えてよかった。
――――――
ダミーはかなり高額らしく粉々にすると修復が難しいため、ダン先生はこの後教頭にめっちゃ怒られたらしい。
強い先生キャラって良いよねッ!