01.すごい人になりたい
主人公レル・ラ・レルの物語です。
彼がどんな行動をするのか、私にも分かりません。
1人の人間の人生だと思ってお楽しみください。
小説の書き方どころか、物語の構成の仕方すら分からない人の素人作品ですが、長編となる予定です。どうか暖かい目で見守っていてください。
俺は何者にもなれない...
そう悟ったのはたった今だ。
いつも通り朝起きて、布団から出られない自分を責め立てたあとに憂鬱な気分で起きる。
そんないつも通りの生活を送るのだとばかり思っていた。
なぜそう思ったのか?
俺にも分からない。
ただ、何となくそう思った。
俺は体力テストだってA判定、扱える力も【雷】でしかもその実力は平均以上。
プレイしたゲームの実績だって平均以上で、友達も多い方。
自分で言うのもなんだが優秀な方だ。
だけど、それだけだ。
「相変わらずボーっとしてんな、レル。」
そんな事を考えていると、後ろからそんな事を言いながら肩を叩いてくる無礼者がいた。
「クリファ...お前!ついに明日だな!試験!
一緒に頑張ろうな!」
俺は一気に元気になった。
「お前って1人の時と話す時でギャップ凄いよな。
今日はまた一段とすごいけど...」
それもそのはず。
俺が元々知り合いに合うといきなり元気になる属性持ちなのもあるが、それだけでは無い。
明日は試験だ。
それも、あの有名な『ナトラノモス天造術高等専門学校』略してナトラス学校に入るための。
「俺はナトラスを卒業したら、天造術士になってのらりくらりと生きるんだ!」
天造術士は、自分の国を他国の攻撃やモンスターの襲撃から守ったり、災害の際に住民の保護、避難、支援をしたりするために存在する職業で、いわゆる国家公務員という奴だ。
天造術士になれば、力がつき、生活も保証され、みんなに尊敬される存在になれる。
俺は筋トレとかの修行じみた事をするのも大好きだから、これ以上俺の人生ニーズに合う職業はないと思った。
そんな甘い考えで天造術士になろうと思っていた。
「レル。あのな、天造術士ってそんな簡単な仕事じゃないんだぞ?死ぬ可能性だってあるしよ。
本当にいいのか?」
だが、クリファは違った。
クリファは本気で天造術士を目指している。
いわゆる真面目くんだ。
俺はクリファを良い友人で、尊敬出来る存在だと思っている。
それと同時に劣等感の塊である俺は、嫉妬を覚えていた。
クリファは俺の事を案じて言ってくれたのだと、頭では分かっていた。
だけど、なぜかイラついた俺は、心にも無いことを言ってしまった。
いや、心に無ければ言葉に出来るはずが無いんだ。
「お前の方が実技の成績低いだろ?筆記だって俺と大差ないし。しかも、お前の扱える力は【風】で、
その中でも最低ランクのカマイタチだろ?他の人の心配より自分の心配したら?」
クリファはいきなりそんな事を言われるとは夢にも思っていなかったみたいだ。
彼はしばらく唖然としていた。
その後、ハッとした様子を見せ、俯いて肩を震わせながら廊下へと出ていった。
やった。
やってしまった。
やってしまったんだ。
知っていた。
俺は知っていたはずなんだ。
クリファが自分の能力で悩んでいること、それを補うために人一倍勉強していたが、報われることは無く、一人夜な夜な泣いていたこと。
他にもある。
そんな努力家で自分の友人でいてくれる大切な人を傷つけてしまった。
その事実が頭をグルグルにし、胸を締め付けた。
その日、クリファと言葉を交わすことはなかった。
その日は学校で何をしたのか覚えていない。
俺の言葉が試験に影響をもたらさなければいいが...
まあ、クリファは強いやつだ。
それに俺なんかの言葉だし、気にする訳ないよな!
そんな淡い希望を胸に、試験へ向け眠るために目を閉じた。
強く、優しく、安心感のある。
そんなすごい人になりたい。
ナトラス学校に入れば、なれるのかな?
そんな事を考えていると自然と意識は暗闇へと落ちていった。