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となりの新崎さん  作者: 桜百合
一年生三学期
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君って人は……

 教室でも浅見さんの態度は相変わらずだった。

 無愛想で、邪険に、迷惑そうに、心配の声を跳ね除けていった。

 浅見さんと仲の良かった女子連中もそんな対応をされたもんだから、1人……確か、上原さんだったか。

 を残して、皆離れていった。


 そんな様子を遠巻きに見ていた和泉さんだったが、見かねて浅見さんの元へ向かい、一言二言交わす。


 交わすも、あえなく撃沈。

 半泣きで自分の席に着いた。


 プリン頭で喧嘩とか強そうなヤンキー風貌なのに、心が純情すぎると言うか、ピュアすぎると言うか……

 ああ、新崎さんと笹塚が慰めてる。

 いいなぁ。もうすぐチャイム鳴るけど、俺もそっち行こうかな。


 でもなぁ……


 「あ、浅見ちゃん、ホントにどうしちゃったの?」


 「別にどうもしてない。

 あなたも、無理して良い人のフリしなくていいよ」


 「フリだなんて……そんな……」


 上原さんは今にも泣き出しそうだ。

 流石に見ていられないな。


 「浅見さん。何か嫌な事があったとしても、それは誰かを傷付けていい免罪符にはならないよ」


 変に刺激しないよう平坦な声音で言ったつもりだ。

 俺のそんな言葉を受けた浅見さんはと言うと。


 「へぇ。そう」


 聞く耳など持っていないようだった。


 上原さんと目が合う。

 席は近いけどほぼ初対面って感じだから、こう言う時、どういう顔をしたら良いかわからないな。


 「ハハ……」


 とりあえず笑ってみた。

 笑えばいいよと言われると思ったんだ。

 だから笑ってみたけど、


 「あっ、あはは……」


 余計に気まずくなっただけだった。


 そんな俺たちを尻目に、浅見さんはわざとらしくため息を吐く。

 何がそんなに気に食わないのだろうか。

 この1週間に、いったい何があったのだろうか。


 「浅──」


 「はい、席に着いてください」


 チャイムと同時に先生がやってきて、俺の言葉は強制的に閉店ガラガラ。

 間の悪い事だ。


 この後は修了式。

 それも終われば簡単なHRをやり、午後を待たずに放課となる。


 一度しっかり話をしたいのに……次に話せるとしたら放課後か。


 ちゃんと話してくれるだろうか……



* * *



 俺の隣は、相も変わらず仏頂面である。

 今はHR。

 つまり、もうすぐ放課だ。

 春休みだ。


 だと言うのに、仏頂面だ。


 いや、もちろんアレだ。先週辺りまでのこの人の心情をベースに言うなら、笑顔でなくても不思議じゃない。

 むしろ、笑顔な方が不思議まであった。


 ただ、それを差っ引いても、今日のこの人は明らかに様子がおかしい。


 何がどうなってそんな不機嫌そうな顔で、不機嫌そうな態度でいるんだろう。


 これは浅見さんにも、アザミにも見られなかったものだ。


 ……もしかして、また何か新しい人格でも作ったのか?


 えっ、人格ってそんなホイホイ産めるもんなのか?


 てか何だ? じゃあもう、アザミの事は良いのか?

 今のその人が、アザミの代わりなのか?


 それはちょっと……だいぶ……かなり……いや、


 めちゃくちゃ嫌だな。


 「それでは、一年間お疲れ様でした。

 来年度もよろしくお願いします」


 なんて考えているとHRが終わった。

 浅見さんは案の定、号令と共に席を立つ。

 きっと、そのまま教室を出ていくつもりだろう。


 俺は少し強引に、浅見さんの腕を掴んだ。


 「な、なに……!」


 すると、流石に動揺したようだ。

 ややアザミみがある。


 「浅見さん。話をしよう」


 押し切れそうな気配を感じた俺は、ここで少し強気に出ることにした。


 「はあ? いいよもうそう言うの」


 「いいとかじゃなくて、最低限説明をするのが、浅見さんの責任だと思うよ。

 だから、教えてよ。

 どうしてそうわざとらしく、皆を邪険にするのかをさ」


 「っ!」


 「わざとらしく」に反応した。

 一縷の望みをかけて、何か意図があって無理してるんじゃないかって、そんな希望からついかけたカマだったけど、図星だったようだ。


 少しだけ、浅見さんの腕を掴む力を強めた。


 「そうすることで、アザミに会えるって思ったんだよね?」


 俺はもう一度希望的観測を口にした。

 周囲の視線が刺さってる気がしないでもないけど、そんなのは無視だ。

 今日を最後にお別れするような人間ばかりなんだから。


 「……うん」


 浅見さんは力無く返答した。

 その声音は、俺たちのよく知る、いつもの浅見さんそのものだった。


 「で、でも、ここだと話せないから……その、い、いつもの……とこに……」


 消え入りそうな声だった。


 浅見さん、君って人は……


 「わかった」


 説明を受けた方が良いだろう人たち。

 上原さん。和泉さん。

 あとはまあ、個人的に来て欲しい新崎さんも連れて、俺たちはいつもの場所へ向かった。



 いつもの場所。

 第二書庫だ。





 

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