イカレポンチは1人もいらない
特になんの策も講じられず、新崎さんとは微妙に気まずいままクリパは進んだ。
このままじゃ渡せず仕舞いかもしれない……
なんて思っていたところ、笹塚より指揮が取られた。
「じゃあお待ちかねのプレゼント交換でもしますかね」
クリパと言えばそう、プレゼント交換だ。
「ヨ! 待ってマシタ!」
各々ラッピングが施された箱や袋を取り出し、テーブルに並べていく。
「そんじゃあじゃんけんして勝った順に引こうぜ」
笹塚はそう言うと、傍から取り出した正方形の箱をテーブルの真ん中にドンと置いた。テレビでよく見るような、一つの面に空いた穴から手を突っ込んで中身を取り出す系のアレだ。
くじ引きで引いた紙に書かれた人のプレゼントを受け取るってことらしい。
「だっさなっきゃまっけよっ! じゃんけんぽん!」
笹塚の進行によってテンポよく進み、勝ち抜けでじゃんけんをして、1人1枚ずつくじを引いていって……
「開けんべ開けんべ〜」
ノリノリな笹塚とは反対に、俺はプッツンしそうになっていた。
皆の元には、各々のセンスが垣間見えるようなプレゼントが渡っていた。
結構良いじゃん。
そう思える物が大半を占める中、俺の手元は終わっていた。
薬局でよく見かける、オレンジ色の蓋のボトル。
「良かったな。新崎と使え」
透明で、粘性の高い液体に満たされたボトル。
「……」
言うまでもないが、言う。
ペペローションだ。
「……屋上へ行こうか石蕗」
ひさしぶりにきれちまったよ……
「屋上なんて無いだろ」
「うるせぇよ」
何でこんな事になるんだ……
ちなみに俺のプレゼントはミアさんの元へ渡った。
なんとなく通りかかったフリーマーケットで売られていた、王冠を被った黒猫の置き物だ。
よくある物なのか、「アンティーク 置き物 黒猫」で検索したらすぐにヒットした。
「カワイイ! アリガト!」
お気に召したようで、ご満悦だ。
「ああ、喜んでもらえて何よりだよ」
「フフフン!」
ミアさんさっそく写真を撮っている。そこまで気に入ってくれたのなら200円のこいつも浮かばれるって物だ。
案外掘り出し物が多いからな、また行ってみようか。
それにしても、どれが誰のプレゼントかがわかりやすいな。
笹塚が持っているのはシックな革のブックカバー。これは多分新崎さんのだ。ああいう質系のアイテムとか持っておきたかったから欲しかった。
よりによってこの中で一番活字と縁遠そうな奴の元へ行くとは。悲運と言う他ない。
新崎さんのクッキーは和泉さんのか。この中なら彼女以外ああいう可愛らしい物は選ばなそうだ。
てっきりぬいぐるみとかファンシーなので来ると思ったけど、石蕗とかに渡ったら軽く事故だろうし、妥当だな。
そんで石蕗が持っている置き場に困るだろう十手はおそらくミアさん。この謎チョイスは何だ? 漫画のカタコトキャラに憧れてるからだろうか、らしいと言えばらしいけど、貰うとちょっと困るよな。
和泉さんが持ってる手袋は……えっ、消去法で笹塚だけど、あいつが選んだとは思えないようなちゃんとした物だな。
去年俺にくれたのは、この歳じゃ絶妙にいらないオイル時計だったのに……まさかこの1年で成長したってのか? やるな意外と。
……はァ。何でぺぺだよマジ。
言っちゃ悪いかもしれないけど、ぶっちぎりでハズレ枠だろこれ。
てかこれセクハラだろ普通に。
出るとこ出れば勝てるやつだろ普通に。
てかこれ、俺以外に引かれたらどうするつもりだったんだ? ミアさんはなんか笑って気にしなさそうだけど、和泉さんとか新崎さんとか普通にドン引きするだろ。
やっぱコイツやべーよ。
「そんじゃ〜これやろうぜ」
いつの間にか、笹塚は部屋の隅に積んでいたボドゲの山から、1番上にあった物を持って来ていた。
人生ゲームだ。
「その次はこれと、これな」
続けて2番目3番目。
……これ全部やるとか、コイツどんな体力してんだ?
「ヤローヤロー!」
「よっしゃ。笹塚の人生詰ませてやろうぜ」
しかし意外にも、ミアさんも和泉さんも乗り気だ。この2人も体力お化けか。
新崎さんの目も輝いてる気がする。ボドゲとかやったことないのかな。
「お前、やるよな?」
そんな新崎さんをこのイカレポンチが視認してしまおうものなら、こうなるのはむべなるかな……か。
「……まあ見とけよ」
にっこり。チョロい。
お前も新崎さんの笑顔を守りたいなら、今後はもう少し常識的に考えて生きてくれ。




