クリパ回
蒼先輩のお陰で色々とスッキリした。
俺はただ漠然と、俺に何らかの問題があって新崎さんに避けられていると思っていた。けど、もしかしたら新崎さん自身が何かを抱えていて、それが原因で避けられているかもしれないという可能性が浮上した現在、俺に出来ることは一体何だろうか。
12月23日。土曜日。
今日から冬休みだ。
明後日の25日にクリパをする話がいつものメンツ内で持ち上がっている。
和泉さんは勿論、新崎さんも参加する。
他には石蕗の野郎とミアさんなんかも参加するらしい。
新崎さんとまともに会話が出来ないままクリパに参加するのは少し気まずいけど、このクリパ回が楽しいだろうことは俺でもわかる。
ので、参加すると答えた。
さて、クリパと言えばプレゼント交換だ。
誰に渡っても良い交換用のプレゼントは既に購入済み。中身は見てからのお楽しみということで伏せておこうと思う。
そのプレゼントとは別で、まあ念の為、俺はある物を買いに来ていた。
俺は今日ここで、仲直り──って言うのは少し変な感じだな。別に喧嘩してるわけじゃないし。
また会話するきっかけ──だな。うん。
俺は今日ここで、新崎さんとまた仲良く話せるようになるためのプレゼントを買うんだ。
物を贈ってご機嫌取りと言えば聞こえは終わってるかもしれないけど、俺に出来ることなんてこれくらいしか思いつかなかったし、今年はかなり新崎さんにお世話になったんだ。
あのスラムを共に頑張った仲でもあるし、言ってしまえばお礼みたいな物だな。
……もし新崎さんがそれを受け取りたくないほど、致命的なほどに俺を嫌っていたとしたら、その時はその時だ。
* * *
「あい! かんぱーい!」
「「かんぱ〜い!」」
笹塚の音頭でシャンメリーや各々の好きなジュースが入ったグラスをカチンと打ち付け、クリパがスタートした。
「チンチン!」
「ミアさんワードチョイス声量! 隣の部屋兄いるから!」
ちなみに、開催場所はなぜか俺の部屋だ。
曰く、「程よく広いし、ボドゲもあるし、Switchもあるし、PS5もあるから」とのことだけど、さすがに6人も入ると少し狭いな。テーブルもパンパンだ。
「んっ、シャンメリーおいしい」
斜向かいに座る新崎さんは今まで飲んだことがないのか、シャンメリーの味に目をキラキラと輝かせている。
「ね。俺もこれ好きなんだ」
俺はここぞとばかりに新崎さんに話しかけてみたんだけど……
「あっ、う、うん……」
これもんだよ。
何がいけないんだ? 今の新崎さんの呟きにリアクションすること自体が駄目だったのか? 普通に同調しただけなのに、なんでそんなに気まずそうな反応をされなきゃいけないんだ?
「小鳥遊お前……」
泣きっ面に蜂。隣に座る石蕗から肘で小突かれた。
「うるさい」
俺だって悲しいんだよ。友達にこんな反応されて。
てか何だよお前マジ。もう少し応援してくれたよ。
お前がもっと話の通じる奴だったら相談の一つもしたかったよこっちは。
「シャンメリーってさ、飲むとちょっといけないことしてる気分になるよな」
「うん。大人の味の味見」
はぁ。和泉さんのレスにはいつも通りの反応か。
……でもよく考えるとあれだな。
蒼先輩が言っていたように、俺に何か問題があるわけじゃなくて、新崎さん自身が何かを抱えていそうだ。
そもそも俺が嫌だったら今日は不参加だったろうし、こんな、俺にも拾われるような声量で何かを言うわけがないんだから。
嫌われてるわけじゃなさそうだよな、やっぱ。
「別に喧嘩とかじゃないから、安心しろよ」
新崎さんには聞こえないよう、石蕗に一言。
当の石蕗は相変わらず、
「ならいいんだ」
と、菩薩顔負けの穏やかさを取り戻したのだった。
コイツのチョロさヤバいな。
もし石蕗が見てる前で新崎さんにプレゼントを渡したら……多分めちゃくちゃに騒ぎそうだな。
俺と新崎さんのことを未だに付き合っていると思い込んでいる、俺たち激推し過激派のコイツのことだ。なんなら
「ここが式場だ」
とか言い出しそうまである。
もしくは普通に泣き出したりな。
となると、どうにかして新崎さんと2人きりになるか、石蕗を部屋から追い出す必要がある。
……個人的には笹塚とか皆に見られるのは緊張するし恥ずかしいから、2人きりになりたいんだけど……
「あ、新崎さん。はいティッシュ」
「ふぁっ、あっ、あ、ありがと……」
これもんだ。
ティッシュを探してキョロキョロとしていたから渡しただけなのに、こうも激しく反応をされてしまっては、2人きりになっても会話にならなかったり、最悪逃げられたり……
どうしたもんか……




