結構バカ
「ごゆっくりどうぞ〜」
店員が席までバーガーを運んできた。
最近ではめっきり量の少なくなったポテトをつまむ。
ポテトとバニラシェイク。これは鉄板だ。
まァそれはそれとして。
どうしたもんかなぁ。
一応言っておくと、俺は小鳥遊と新崎の仲を取り持つ──
なんて気は全く無い。
いやもちろん荒らす気もねぇけど。
こっからコイツらがどうなろうが、ぶっちゃけ俺の知ったこっちゃない。仮にコイツらが喧嘩してたとして、それは俺にはカンケーねぇし、当事者でもねぇのに首突っ込むってさ、ほら……その……どうよっつー話っつーか。
コイツらで解決しねぇとしょーがねーっつーか……上手く言えねぇな。
なんにせよ、コイツらの仲を取り持つ気も荒らす気もねぇ。
……まァ、傍観するだけってのも面白くねぇから、せめて何がどうなってんのか把握するだけしときてぇんだ。
「りっちゃん最近あんま食ってなくねぇ? どっか悪いか? 大丈夫か?」
「せーちゃんよりは食べてるから大丈夫だよ」
しっかしまァ、平気そうに振る舞うのが上手ぇよなコイツも。
てか、和泉はさすがに気付いてるよな……? まったく気付いてなさそうにしてっけど……あっ、あれか? あえてカンショーしすぎないようにしてんのか?
もしそうだとしたら俺も同じふうにした方がいよな……?
あれ、同じふうって、じゃあ俺も何もしねぇ方がいいのか?
変にそれっぽいこと聞いたりして疑われたら、和泉の苦労もイミなくなっちまわねぇか?
……頭がバグりそうだ。
やっぱアレコレ考えるとか向いてねーな。俺。
こうなりゃタンチョートクニューだ。
「新崎さァ、最近何で小鳥遊と……あー、なんつーか……」
「……うん」
おっ。やっぱり新崎って意外とわかりやすいよな。
答え辛ぇ時とか、なんか不満に思ってる時とか、返事に間があんだよな。最近は小鳥遊と話してる時もずっとこんなんだし。
「なんつーかこう……他人みてぇなんだ?」
「……」
すっかり黙っちまった。
聞き方が悪かったか……?
「笹塚」
「いや、普通に喧嘩してんならいーんだよ。どうせこの2人ならほっといてもそのうち仲直りすんだろ」
「……別に、喧嘩とかじゃない。ただ、なんか……」
「なんか、話辛ぇって?」
ズボシだったのか、新崎は頷いた。
和泉はやっぱし気付いてるっぽいし。
「笹塚。りっちゃんと小鳥遊の事は、あたしも前から気にしてたんだ。
でもりっちゃんも頑張ってる。今は待ちの時期なんだよ」
待ちねぇ。
「あと、その……」
ふと新崎が口を開いた。
いつの間に染めたのか、顔が赤ぇ。
そんな赤ぇ顔で、マジメな空気で、
「小鳥遊くんが、推しと似てるって気付いちゃって……」
……は?
「おし……?」
こんな意味わかんねーこと言うとか、誰が予想できるよ。
「らしいんだよ。あたしはピンときてねぇんだけどさ、ほらりっちゃん、誰に似てんだっけ?」
「えっと、REBORNの主人公の、沢田綱吉に似てて……意識しちゃうと、ハルちゃんみたいにはひすら言えなくてっ……!」
……いや、わからん。何ソレ。誰ソレ。
サワダツナヨシ? ハルちゃん?
は?
俺のフリーズを察してか、和泉はスマホの画面をこちらに向けてきた。
画面には、おそらくサワダツナヨシだろう人物のイラストが表示されている。
えっ何これ、デコに炎ついてんじゃん。熱くねぇの?
てかえ、なに、どこが小鳥遊と似てんだ?
「いつも眉間にシワを寄せて、祈るように拳をふるうの」
似てる……か……?
和泉は……ああ、首振ってる。
ってことは似てない。
……いや、似てる似てないはどうでもいいだろ!
「とても優しい人なの」
似てる……か……?
和泉は……ああ、ちょっと頷いてる。
ってことは似てる。
いやだから!
「よくわかんねぇけど、この人がアイツと似てることに気付いて……なに、キンチョーしてるとか?」
新崎はまた頷いた。
色々言いたいことはあるけど、情報量が多すぎる。頭がオーバーヒートしそうだ。
顔も背格好も全然似てねぇのに、どこを見てそんなんなってんだ?
もしかしてアレか? コイツ、結構バカか?
てか、推しに似てるからキンチョーして上手く話せねぇって……
……根っこ浅…………
どこもなんもこじれてねぇじゃん。
「じゃあなに、思ったより大丈夫そうなヤツ?」
「ああ。今は専ら、REBORN再履とイメトレを重ねる毎日だ」
イメトレ……ってああ、推しと対面した時のね。
何にせよだ。何ともねぇならよかったよかった。
俺らしくもなく気にしちまったぜ。
これであと残るは、小鳥遊が急に苦手な接客業のバイトを始めた理由だけだが──
「ちなみに小鳥遊がバイトしてんのもアレな。ただの小遣い稼ぎだから。
もし勘繰ってるなら無駄だぞ」
……ん? 今何つった?
「ただの小遣い稼ぎ……?」
「推し活っつってたからお前にゃ何も言ってなかったろ? お前アニメとか興味無ぇもんな」
「それガチ?」
「マジのガチ。マジガチだ」
小遣い稼ぎで苦手な接客……?
レジへ目をやる。
ぎこちない笑顔を浮かべながら、客とやりとりする小鳥遊がいる。
毎日つるんでんのに、あいつがあんなふうにちゃんとやれるなんて、俺は知らなかった。
「男子ってめんどくせーよな。
心配かけたくないって理由で本音言わねーのとかその典型。
しかも結局心配かけてるし」
「心配……?」
「ん? お前、要はアイツが心配だったんだろ? 新崎と何かあったと思ったり、アイツが不向きな接客やってんのもなんか裏があるとか勘繰って」
「それが心配じゃないならなんだよ。なァりっちゃん」
「うん。気遣いい同士。類友だね」
心配。
「心配か……」
……腑に落ちたわ。
上手いこと言葉にできなかったけど、そうか。
別にそんなタイソーなもんじゃねぇと思うけど、なんとなく言いてぇことなら、わかる。
「で、どうだ? お前が気にしてたアレコレは全部取り越し苦労だったわけだけど、今どんな気持ちだ?」
コイツなんでこんなイキイキしてんだ? 俺が空回ってんのを見て楽しんでんのか?
どうせあれだろ。安心したとか言わせてぇんだろ? 言わねぇよ?
「うっせーマジうっせー! お前が思うより健康だっつーの!」
「マック食いながら何言ってんだよ」
「甘いもん欲しいからソフツイ買ってくるわ!」
「不健康まっしぐらじゃねぇか!」
ブーブーうっせー声のクレームは受け付けねぇ。
レジへ向かいながら、後ろのアレは全無視だ。
「店員サーン、ソフツイとぉ〜、スマイル1つ、お持ち帰りで☆」
心配ね。
「お持ち帰りですね。ご一緒にポテトはいかがですか」
「いやいや、シケっちゃうって」
コイツ、ちゃんとやれてたよな。さっきも。
向いてねーとか苦手とか、別にそれが間違ってるとは思わねぇけどさ……
「で? ソフトツイストだけ?」
「だけ! よろしく!」
だからってやんねー理由にはなんねぇか。
頑張ってんなら心配より応援してやんねーとだしな。
そんな事もわかんねーとか、俺も結構バカかもな。
「ソフツイだけとか、金んなんねーなコイツ」
「おーい聞こえてんぞ。食べログ☆1んすっかんな」




