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となりの新崎さん  作者: 桜百合
一年生二学期
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ギャルと七三

 ──マジで怪我するかと思ったな。


 ──ナイフあれ本物だろ。


 ──隣の部屋もヤベェぞ。俺本気で空気注射されるかと思ったもん。


 ──なんで学校側はこんなん許可したんだ?



 お化け屋敷オムニバスを終え、満足されたお客様のお声の数々。

 気持ちがいい。


 噂を聞いてか、他クラスや他学年の生徒も多く出入りし、どのエリアが一番危なかったかを論議している。

 これには我がクラスみな鼻高々だ。


 クラスメイトからは、既に最優秀賞は取ったも同然だなんて声も聞こえてくる。


 とは言え油断は禁物だろう。

 なんだかんだ言って隣のクラスの女装男装メイド喫茶なんかは安定して人を稼いでいるし、午後には講堂で劇やバンド演奏などの目玉イベントも控えている。

 現状は優勢でも、文化祭はまだ始まったばかりなんだ。


 まあ、とりあえずは休憩だけどな。


 「行くべ〜小鳥遊」


 「ああ」


 新崎さんは和泉さんとミアさんの3人で回るらしい。

 いつものメンツから人が引かれ、何の因果か笹塚と俺で男2人旅と相成った。


 別にいいんだけどさ。

 なんかさ。

 華が無いよな。


 2人でトロトロと廊下を進んだ。

 当て所無く、目に付いた出し物があれば入ってみる。

 そんな、放課後の寄り道のような感覚で歩いていると、向かいから文化祭実行委員の2人が歩いてきた。


 「奏く〜ん」


 「笹塚、昼休みはどうするんだ?」


 ユニコーンカラーのギャルと黒髪七三の、対照的な2人組。

 腕につけた腕章を外しながら、声をかけてくる。


 「おー、小鳥遊と適当に回っけど?」


 「そうか。いや、俺たちも暇を持て余していてな。良かったらお邪魔してもいいか?」


 「え、あ〜……」


 笹塚が俺の方をちらりと見てきた。

 おおかた、2人とは絡みの無い俺に気を遣っているんだろう。


 「俺は良いよ。むしろ多い方が楽しいしな」


 余計なお世話と言いたいけど、交友関係が狭いのは純然たる事実だから、ぐぅとすら言えないな俺は。


 「あーし卜部うらべ〜、よろしく〜」


 「櫻田さくらだだ。急にすまないな」


 「ああ、気にしないでいいよ。こっちこそよろしく」


 「ふぅん?」


 挨拶もそこそこに、当然卜部さんが顔を覗き込んできた。

 悪戯っぽい笑顔を浮かべて、まるで俺を試しているかのような視線を送ってくる。


 「もしかしてぇ、小鳥遊くんって結構モテる?」


 「モテ……? いや、そんな事ないよ」


 この人ゆるギャルみたいなビジュして、結構距離が近いな?

 いや、ゆるギャルだから近いのか?

 これが所謂『オタクに優しいギャル』なのか?


 「卜部。彼は……」


 「わーかってるよ〜」


 ん? 何の話だ?

 俺の悪口か?


 と、2人はお邪魔するなんて言っときながら、俺と笹塚を先導するように少し先を歩き出した。

 この2人は意外と仲が良いんだろうか? やり取り的に気心知れてるっぽいし。


 「こいつら幼馴染なんだよ」


 「ああ、どうりで」


 先の方では卜部さんが櫻田君の脇腹あたりを肘でガツガツと小突いている。

 漫画でよく見る、いかにもな幼馴染の空気感だ。


 こういう場合、ギャルが真面目君の気を引きたくてお転婆やっていがちなんだ。

 この小突きもそういうのだったらアツいな。


 「2人とも。ここに入ってみないか?」


 櫻田君が立ち止まり、指差した先にあったもの。

 それは祭りの屋台をイメージした出し物であった。


 「あーし気になってんだよね〜ここ」


 「だそうだ。どうだ?」


 暖簾を開けて中を覗いてみると、射的に輪投げに型抜きに千本くじ……と、そこは完全にお祭り空間となっていた。

 人の入りも凄い。


 「おー、入るか」


 「だな」


 俺はこう見えてお祭りは結構好きなんだ。

 スピーカーから流しているだろう音頭的なBGMも自然と心が踊る。


 「やりぃ〜」


 卜部さんが先陣を切る。


 俺たちもそれに続いて入って行った。



 * * *



 ヤバい。


 「こんなものか」


 超ヤバい。


 「かっけェ〜」


 「さっすが竜ちん♪」


 ここに遊びの天才がいる。


 その名も『櫻田竜信』。


 どこかの武装的な戦線の四代目頭と名前の読みが同じという事を知ったのは、何と背後のモブから。


 櫻田君が屋台を端から一つずつ攻略していく様を見ていた何処かの誰かが徐に言ったのだ。



 ──あれは……かつて『破壊神』の名を欲しいままにした、伝説の屋台クラッシャー……!!


 ──なにっ!? あの伝説の屋台クラッシャーだと!?


 ──武装戦線四代目頭と名前の読みが同じことから『片松の武装戦線四代目頭櫻田竜信』と呼ばれている男だ。


 ──マジかよ通り名長ぇな。



 そしてあっという間の制覇劇。


 「勝たんしか竜ちゃん!」


 獲得した景品は全て卜部さんへと渡すという徹底ぶり。


 「すまない。景品がシケていてこんな物しか無かった」


 櫻田君はそう言うけど、当の卜部さんは景品のぬいぐるみを大事そうに抱いていた。

 乙女の顔だ。


 「笹塚」


 「何だ」


 「この2人って、もしかしてそう言う……?」


 「有名な話だぞ」


 マジか……


 もしかして、俺が知らないだけで皆結構恋し愛し合ってたりするのか?


 実は笹塚にも好きな人がいて、和泉さんにも好きな人がいて、ミアさんにも、石蕗にも……



 新崎さんは……どうなんだろう。



 浅見さんは結局、俺の事が好きなんだろうか。



 恋愛なぁ……





 今はまだ、別にだなぁ……





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