私は……
文化祭準備も佳境。来週末にはいよいよ開催。
このお化け屋敷は、笹塚とミアさんによって鋭意製作中のリングをオマージュした4DXの仕掛けを始め、多くのエリアでレベルの高い合格点をオールウェイズ出してくれそうだ。
他にも自作アナベル人形の展示や、結構ガチで注射を刺そうとしてくるナースの群れなど、バラエティにも富んでいる。
美術担当の尽力もあり、上手くいけば出し物カテゴリで最優秀賞を獲れるかもしれないような、そんな手応えを感じている。
勿論、俺たちの担当エリアもとんでもない仕上がりだ。
エリアは完成し、あとは手順などの仔細を詰めて練度を上げていくだけ。
スピード施工ではあったけど、とてもそうは思えないな。
「何じゃこりゃ……」
貞子のコスプレをした笹塚もこの反応だ。
怪訝そうな顔で俺たちの力作を見上げている。
「クフフフ」
「むふふふ」
順調だ。
あまりにも順調すぎるもんだから、俺も新崎さんも変な笑いが出ちゃう始末だ。
「前夜祭の試運転をお楽しみにしとけ」
「楽しいよ。絶対」
「ほ〜ん。楽しみにしとくわ。じゃあな〜」
教室を出て行く貞子ってシュールだな。
まあいい。なんにせよだ。
自信満々とはまさにこのこと。
紛れもない大作がここにはある。
思い返せば、俺はここまで自分の作った何かに自信を持てたことは無かった。
図工や美術の授業で作った作品も、終わるとか完成するとかじゃない、魂も込められてないような妥協と諦めの結石を提出したのが精々だ。どうして自信なんか持てようか。
しかし、今回は出来た。完成した。
それも、思わずにやけてしまうような精度で。自惚れてしまいそうなぐらいの自信をもって。
言わずもがな、これは俺一人の成果ではない。
俺の隣で、むふむふとにやけて止まないクラスメイト、
「新崎さん」
彼女のおかげだ。
「どうしたの、小鳥遊くん」
「君が居てくれなかったら……いや、君が居てくれたから、コレは完成したんだと思う。ありがとう」
「……ん?」
あれ、伝わらないか。
我ながら変な言い回しになったもんな。ごめんよ。
「えっと……」
でもこれ以上何て言ったらいいんだ?
もう、そうとしか言いようがないと思うんだけど。
「……ごめん、何て言えばいいか……」
俺自身、まだこの作品に浮かれているんだろう。上手く言葉が出てこない。
とにかく嬉しいんだ。この嬉しさを、喜びを、新崎さんと分かち合いたいだけなんだ。
「小鳥遊くん、嬉しい?」
不意に、新崎さんが言った。
「うん。色々、その、嬉しいよ」
これを作るに当たって、色々なことがあった。
テーマ決めの討論は盛り上がったな。
ヒトコワから始まって、発展して、今の形に落ち着いたんだ。
材料が足りなくて各々で家から持ち寄ったり、他の班から分けてもらったりもした。
完成目前に人形の腕がもげて、これは心霊現象なのか、耐久度の問題なのか、頭を抱えた。
結局耐久度の問題だったから補強して、今では解体する時の事を考えて憂鬱になるレベルの頑強さだ。
「楽しかったし、面白かったし、嬉しかった」
「うん。私も同じ。
小鳥遊くんが居てくれなかったら出来なかったし、居てくれたから出来た。
嬉しい」
「んん……」
なんか小っ恥ずかしいな。
新崎さんは結構真っ直ぐな人って言うか、ストレートにものを言いがちな気がする。
それに釣られてこっちも本音を言ってしまう。
隠してるわけじゃない、伝え方のわからない本音を。
* * *
「新崎さん、また明日」
「うん。ばいばい」
小鳥遊くんは帰っていった。
私はせーちゃん待ち。
教室で受付のマニュアルを覚えてるみたいで、邪魔しちゃ悪いから、中庭のベンチで涼んでる。
夕方の日陰は涼しい。
もうすぐ10月になる。
ミルクセーキおいしい。
「新崎」
呼ばれた。
振り返ると、廊下の窓から浅見さんがこっちを見ていた。
またあの感じ。
いつもの浅見さんじゃなくて、かっこいいほう。
「少し、いいか?」
こないだ、私にあんなことを言ってきた時のほう。
「なに?」
「改めてな、言っておきたい」
「……」
この人はこないだ、私に言った。
小鳥遊くんと帰ってる時、渡り廊下ですれ違いざま、
『それはワタシのだ』
って。
「退いて貰えるか」
やっぱりこの人は、小鳥遊くんのことが好きなんだ。
好きだから、デートに誘ったり、放課後に呼び出したりするんだ。
こうやって、近くにいる女に牽制するんだ。
……どうしたらいいんだろう。
私と小鳥遊くんは友達だから、そういう風にはならない。
でも、浅見さんは小鳥遊くんと、友達からそういう風になろうとしてる。
「歯に衣着せずに言うとな、邪魔なのさ。
此の儘じゃあ変わらないんだよ。此奴は」
こいつ? こいつって誰?
「文化祭が終わる迄に、私は奴に伝える」
──えっ?
「は?」
「結ばれるとは限らんがな、場合に依っては──」
告白……する……?
お似合いの2人。きっと、付き合う。
そうなったら、私は──
「お前には……少し、嫌な思いをして貰うかも知れないな」
私は、どうしたら……




