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となりの新崎さん  作者: 桜百合
一年生二学期
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文化祭がやってくる

 今日、文化祭の出し物が決まった。

 候補はお化け屋敷やメイド喫茶など俗っぽいものから、飲食系の何かしらや劇の発表という真っ当なもの、地域の変遷を辿るレポートに研究発表などの真面目なものまで多岐に渡っていた。

 しかしこのクラスの人間はどうやら俗っぽいものが大好きなようで、当クラスの出し物はおばけ屋敷に決定した。


 「演者や裏方など希望がある人はこの用紙に書いて提出してくれ。特にないならこちらで勝手に割り振る」


 「ちなみにぃ、そのばーいの文句とかは一切受け付けないんでぇ、よろしく〜」


 役職の希望かぁ……


 「新崎さんは何かやりたい役職あるの?」


 「うん。おばけやりたい」


 「あ〜、おばけ……」


 新崎さんのおばけ……


 なんか、あんまり怖くなさそうだな。


 のそっとした感じで井戸から出て来て


 「うらめしや」


 とか


 啜り泣きながら隅で蹲ってるところに声をかけると


 「探して。私の目玉」


 とか……



 「演出にこだわりたい」


 「……そうだね。テーマ決めとかもするだろうし、用紙書かなきゃだね」


 珍しくやる気そうな新崎さんだ。心なしか目がいつもより開いている気がする。

 ふんすふんすまで聞こえてくる。

 そんなにお化け屋敷が好きなんだな。


 いや、思い返せばそうだ。この人は怖そうな場所にも平気で行けるタイプだった。そりゃ好きか。


 「小鳥遊くんはなにやるの」


 「俺は特にやりたいこともないし、何でもいいかな」


 そんな新崎さんに対して俺は生憎、この手の学校行事にそこまでの熱は無い。

 こういうイベント事っていうのはそれこそ漫画やアニメで何度も観てきた。

 けどその度に思う。


 あまりにも縁遠い。


 準備が盛り上がったり、大勢で居残りしたり、気になる異性と親密になったり、普段あまり絡まない人の意外な一面が見えたり──


 うん。縁遠い。


 俺は紙面や画面越しに作品を見るのと同時に、現実まで見えるタチなんだろう。


 とは言えやる気がないわけじゃないぞ。

 任された仕事はきっちりしっかりやり切りたいし、みんなで色んな出し物を見て回って堪能もしたい。買い出しでこっそりコンビニに寄って買い食いしたりもしたい。

 ただ準備の段階からエイエイオーするほどじゃないだけなんだよな。うん。

 我ながら難儀な性格だ。


 「ダメヨタカナシ! もっとガツガツするのヨ!」


 しかしそんな俺の面倒な内情なんて、彼女のようなやる気漲る人からしたら、ただの無気力マンにしか映らないがちだ。それがネックで仕方ない。


 「最近の若モノはセッキョクセーが足りないヨ! ワタシの国じゃ考えられないネ!」


 「君日本生まれ日本育ちでしょ」


 とは言え、ミアさんは向こうの話を親御さんから聞いてるんだろう。あっちは日本よりかなり騒がしいイメージだし、それと比べられたらまあ、流石になぁ。


 「小鳥遊。お前は新崎のサポートをやるんだよな?」


 ミアさんの次は石蕗の野郎。


 こいつマジ……いや、こないだみたいに癇癪起こされても困るだけか。

 触らぬ神に祟りなし。そっとしておこう。


 「あー、うん。そうだね」


 「ふふ。そうかそうか」


 自分を殺そう。こいつから逃れるためにはそれしかない。


 そう思ってどこか遠い目をしていた俺の袖が、不意に、くいっと引かれた。


 本校にいるソデモギ様と言えば、そう。


 「私は、小鳥遊くんがいると、たすかる」


 新崎さんだ。


 居ないと困るじゃなくて、居ると助かるだもんなぁ。

 そんな風に言われたらさあ。


 「わかった。俺もおばけ役やるよ」


 安請け合いしちゃうじゃないか。


 「ヨロシイ!」


 「当然だ」


 てか、コイツらは何をやるんだ? 俺にだけやいやい言っといて何もしないとかはナシだぞ?


 「ごめんね小鳥遊くん、ありがとう」


 まあいいか。ついでに笹塚も道連れにしよう。

 和泉さんと浅見さんにも声をかけてみようか。


 「気にしないで新崎さん。何でも良いって言ったのは俺だしさ」


 何にせよ、二学期一番の目玉行事、文化祭が始まる。


 流石に少し胸が高鳴る。





 しかし、俺はこの時の安請け合いを後々激しく後悔することになるんだけど、それはまた別の話というか、後の話だ。





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