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となりの新崎さん  作者: 桜百合
一年生二学期
37/76

ゴキゲンなニューカマー

 9月になった。


 俺は春夏秋冬を、3〜5、6〜8、9〜11、12〜2と分けている。勝手に。

 暦の仔細なんて調べたこともないから、それが合っているか間違っているかなんてわからないけど、なんにせよ、俺は9月は秋だと思っている。


 さて、季節が変わり、学期も変わり、しかし気温は変わらず、けれども席は変わった。

 この際に、ゴキゲンなニューカマーの紹介をしよう。


 「グッモーニン、タカナシ」


 俺の一つ前の席に座る女子。

 ミア・ミラーさんだ。


 こんな名前でカタコトで、色素の薄い肌と髪を併せ持っているけど、どうやら育ちは日本らしい。しかも新崎さんと彼女の会話を聞く限り、相当なアニヲタのようだ。

 日本のアニメや漫画に描かれている留学生やアメリカ人のカタコトが好きで日常的に真似していた結果、ネイティブな日本語を話せなくなってしまったんだとか。

 こんなところにも悪影響の種は埋まっているんだな。と、勉強になるな。


 「ミラーさん、おはよう」


 「オータカナシ、ワタシ『ミラーサン』じゃないヨ。『ミア』ネ」


 ……多分、わかる人にはわかるんだろう。

 俺はこの人のこの口調を聞くと、池袋にある某寿司屋の前で客の呼び込みをしている系ロシア人の顔が浮かんで仕方ない。

 のクセに、名前呼びに拘るギャルみたいな側面もある。

 情報過多になった俺は、「一つ前の席の人」以上に踏み込む気を手放してしまった。


 「ミアさん、おはよう」


 「ン! スラマッパギネ!」


 「……スラマッマラム」


 アニメが好きなら、そりゃやりたいよな。この挨拶。


 結局、踏み込む気が無いなんて言っておきながら、この曇りない笑顔と天真爛漫な性格に絆されている。

 俺だって別に、邪険にする気はないからな。


 「お前、朝っぱらから浮気かよ」


 と、そんな俺に喧嘩腰の男が1人。

 ミアさんの隣の席の男。新崎さんの一つ前の席の男。石蕗君である。

 名は体を表すとは言うけど、この人は本当にその通り。ツワブキの花言葉が服を着て歩いているような人物で、変化を嫌い、先を見通す能力に長けているらしい。

 笹塚曰く、


 「『諸行無常アンチスレ』の住人」


 とのこと。


 簡単に言えば、何でもかんでも変化し続ける。という意味を持つ『諸行無常』だけど、変化を嫌う彼からすれば、これは座右の銘の対極に位置する概念ということで、親の仇ほど憎んでいるんだとか。


 「してないよ」


 変化を嫌い、不変を愛している。なので、俺は変化してない旨を答えればいい。

 すると彼は、


 「そうか。ならいいんだ」


 そう言って納得する。簡単なお仕事だ。


 彼は夏休み前のとある出来事を信じて疑っていない。

 その"とある出来事"と言うのは、大紅先輩と蒼先輩を追い返すために新崎さんが吐いた嘘。


 私と小鳥遊くんは付き合っている。


 これを信じてしまったらしく、不変を信条としているこの石蕗君は、俺が他の異性と口をきくたび、こうして突っかかってくる。困ったものだよ本当。



 そして最後のニューカマー。

 いや、ニューではないか。


 「小鳥遊くん、おはよう」


 「おはよう、新崎さん」


 前回に引き続き、今回も隣の席。つまり、俺はこれからもこの人の独り言や奇行を堪能出来るという事だ。


 ああ……挨拶をしただけなのに、石蕗君が穏やかな笑顔を浮かべている。

 普段は人殺しみたいな目つきしてるのに、何をどうやったらそこまで目尻を下げられるんだろう。表情筋が柔らかくないと出来ない芸当だ。


 「小鳥遊くん、パンドラ最新話、見た?」


 「見た見た。いよいよ決戦って感じで興奮したね」


 「ね。それでさ──」


 なんて話していると、そこに笹塚と和泉さんもやって来て、パンドラを知らない石蕗君は居心地が悪そうに、知ってるミアさんは激しい身振り手振りで会話に混ざってきた。



 わいわい。わちゃわちゃ。



 そんな空気で新学期が始まった。





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