新しい席と、となり
「お別れだね。小鳥遊くん」
「そうだね。新崎さん」
あらかじめ言っておく。今日はこれから席替えだ。
物事には、終わりというものが必ずある。寿命だったり、期限だったりがまさにそれ。
今回のこれも、いずれ来るものが今日来た。それだけの話だ。
夏休みが明けた今日からは新学期だし、前回の席替えも「夏休みまではとりあえずこれ」って事前に説明されてた。全てはわかっていた事なのだ。
……でも、それでも、もう特等席から新崎さんの独り言を聞いたり、奇行を見たりが出来ないんだって思うと、こう、物悲しい気持ちになる。
今の席が奇跡的に仲の良いメンツで固まれていたってのもあるし、今回の席替えは少しあれだ。しんどい。
「じゃあ引いてくるよ」
くじ引きは番号順に順番が回る。
つまり、新崎さんはもう自分の新しい席を知っているという事だ。
笹塚も、和泉さんも、浅見さんもそうだ。
笹塚と和泉さんは離れてしまったそうだ。浅見さんは和泉さんの近くで、列を挟んだ斜め前らしい。
……そして、新崎さんは、そんな浅見さんの列の最後尾だ。
そのため俺が狙うのは、3人のうち唯一隣が空いている新崎さんの隣か、せめて一つ前の席だろう。
現状は笹塚以外の3人が近くに集まっているんだ。俺もその近くがいい。
絡みのない人が隣でも別にいいけど、俺はもっと、新崎さんの独り言や奇行を堪能したい。
せめて……
せめて──……
* * *
「それでは、年内はこの席でお願いします」
席替えが終わった。
新しい席に着いた。
黒板の見える角度が今までと違う。
今までは窓際だったから、右斜め前を見るのが主だった。しかし席替えを経た今、俺は黒板を正面から見ている。
少し距離のある正面だ。
隣の列の最前には笹塚がいる。
隣の席の女子と何やら楽しそうに話しているが、先生の話はまだ途中だ。
やっぱりお前は廊下に立たされるべきだな。
和泉さんは、笹塚とは逆隣の列にいる。
隣の席の男子からは、若干怖がられているようだ。
和泉さんは見た目が少し怖いから、多少は仕方ないのかもしれない。話してみると全然そんなことないんだけどね。
浅見さんは、この列の真ん中にいる。
じっと先生の方を見ていて偉いな。
隣の席の男子とは仲良く出来るだろうか。
そして新崎さんは、
「そんな気がした」
なんて言いながら、隣の席に座っている。
隣の席に座りながら、1ピクセル版初代ポケモンを描いている。
緑、赤、青、緑、紫、茶色……
まるで現代アートだ。
これこれ。これが欲しかったんだよ。
「うん。実は俺も」
不安ではあったけど、男子側の残りの席は結構少なかったから、もしかしたら──なんて下心は当然のようにあった。
そして、現実がその通りになった。
これで全然別の席だったら頭を抱えたけど、結果オーライ。
笹塚も遠いったって、列が隣になっただけ。
俺は俺で、仲の良い人が近くにいるからか、変に寂しい思いをしなくて済んだ。
今回の席替えガチャも大当たりだ。
先ほど先生は、「年内はこの席で」と言った。
つまり、次の席替えは冬休み明けということになる。
3学期は短いし、そこまでいくと不安なのは席替えよりもクラス替えだ。
まあそんな先のことを考えても仕方ないんだけどな。
「これからもよろしくね。小鳥遊くん」
「こちらこそよろしく。新崎さん」




