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となりの新崎さん  作者: 桜百合
一年生二学期
36/76

新しい席と、となり

 「お別れだね。小鳥遊くん」


 「そうだね。新崎さん」



 あらかじめ言っておく。今日はこれから席替えだ。



 物事には、終わりというものが必ずある。寿命だったり、期限だったりがまさにそれ。

 今回のこれも、いずれ来るものが今日来た。それだけの話だ。

 夏休みが明けた今日からは新学期だし、前回の席替えも「夏休みまではとりあえずこれ」って事前に説明されてた。全てはわかっていた事なのだ。


 ……でも、それでも、もう特等席から新崎さんの独り言を聞いたり、奇行を見たりが出来ないんだって思うと、こう、物悲しい気持ちになる。

 今の席が奇跡的に仲の良いメンツで固まれていたってのもあるし、今回の席替えは少しあれだ。しんどい。


 「じゃあ引いてくるよ」


 くじ引きは番号順に順番が回る。

 つまり、新崎さんはもう自分の新しい席を知っているという事だ。

 笹塚も、和泉さんも、浅見さんもそうだ。

 笹塚と和泉さんは離れてしまったそうだ。浅見さんは和泉さんの近くで、列を挟んだ斜め前らしい。


 ……そして、新崎さんは、そんな浅見さんの列の最後尾だ。


 そのため俺が狙うのは、3人のうち唯一隣が空いている新崎さんの隣か、せめて一つ前の席だろう。

 現状は笹塚以外の3人が近くに集まっているんだ。俺もその近くがいい。

 絡みのない人が隣でも別にいいけど、俺はもっと、新崎さんの独り言や奇行を堪能したい。



 せめて……



 せめて──……



* * *



 「それでは、年内はこの席でお願いします」



 席替えが終わった。



 新しい席に着いた。

 黒板の見える角度が今までと違う。

 今までは窓際だったから、右斜め前を見るのが主だった。しかし席替えを経た今、俺は黒板を正面から見ている。

 少し距離のある正面だ。


 隣の列の最前には笹塚がいる。

 隣の席の女子と何やら楽しそうに話しているが、先生の話はまだ途中だ。

 やっぱりお前は廊下に立たされるべきだな。


 和泉さんは、笹塚とは逆隣の列にいる。

 隣の席の男子からは、若干怖がられているようだ。

 和泉さんは見た目が少し怖いから、多少は仕方ないのかもしれない。話してみると全然そんなことないんだけどね。


 浅見さんは、この列の真ん中にいる。

 じっと先生の方を見ていて偉いな。

 隣の席の男子とは仲良く出来るだろうか。



 そして新崎さんは、



 「そんな気がした」


 なんて言いながら、隣の席に座っている。

 隣の席に座りながら、1ピクセル版初代ポケモンを描いている。

 緑、赤、青、緑、紫、茶色……

 まるで現代アートだ。


 これこれ。これが欲しかったんだよ。


 「うん。実は俺も」


 不安ではあったけど、男子側の残りの席は結構少なかったから、もしかしたら──なんて下心は当然のようにあった。


 そして、現実がその通りになった。


 これで全然別の席だったら頭を抱えたけど、結果オーライ。

 笹塚も遠いったって、列が隣になっただけ。

 俺は俺で、仲の良い人が近くにいるからか、変に寂しい思いをしなくて済んだ。


 今回の席替えガチャも大当たりだ。


 先ほど先生は、「年内はこの席で」と言った。

 つまり、次の席替えは冬休み明けということになる。

 3学期は短いし、そこまでいくと不安なのは席替えよりもクラス替えだ。

 まあそんな先のことを考えても仕方ないんだけどな。



 「これからもよろしくね。小鳥遊くん」


 「こちらこそよろしく。新崎さん」





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