少女漫画的な5センチ、少年漫画的な5センチ
Amazonのおすすめに松任谷由実の50周年記念ベスト盤(6枚組みアナログレコード)が出てきて、さんまんさんぜんえん!という値段に驚きつつも、「こんなの出ていたんだ」とCD3枚組みの方を見ていたら懐かしくなった(ポチった)。その曲が、
「5センチの向こう岸」
今までのベスト盤には収録されていなかった筈だし、YouTubeでも観た記憶が無い。
「自分より彼氏が5センチ背が低くて、周りの目を気にして別れました。」という曲。
普遍的ともいえる、少女漫画的な曲。「その頃の私たちは子供過ぎたの」と悲劇のヒロインムーブになるユーミンらしい曲。1980年の曲(「時のないホテル」収録)。
背が低めの男子にとっても、キツい曲ではある。
その数年後、1989年。ラジオの深夜放送で聴いたのが、「−5センチの愛を抱きしめて」。いんぐりもんぐりの曲である(「白黒」収録)。
明確には「5センチの向こう岸」のアンサーソングとしては書かれていないけど、同じシチュエーションから分岐して明るい曲にもできるんだなあ、と感心した覚えもあるし、ある意味救われた思いもあった。
身長差のある男女の漫画としては「小さな恋のものがたり」(著者;みつはしみかこ)を外せない。昭和37年から52年4ヶ月連載!って、つい10年前までやっていたのかよ……。
137センチと179センチだから背の差があり過ぎ(それによるアレやコレやもあるわけだが)、それでも背の高い男は見た目が良い、ある程度の男女差があった方が(チッチとサリーは極端すぎるけど)宝塚で見るように画面の収まりが良い、というのは共通認識としてあったのかなあ。少女漫画も、近年のラノベの扉絵も、背の高さが男>女。
少年漫画も同じ傾向、いやもっと酷いかな。「デカイ方が偉い・強い」というジャイアン的な理論で画面が構成されている。
その中で、「The♥かぼちゃワイン」(三浦みつる、週刊少年マガジン1981年〜84年)は男女逆転、男<女で初期設定は120センチと175センチだったかな?のちに設定は曖昧になったようだけど。彼氏は身長を気にしているけど、彼女は彼氏にベタ惚れで気にしていない、なんてラブコメ全盛の週刊少年マガジンでも男性読者に甘い毒を回す作品だった。
もっともこの時代、「タッチ」(あだち充、週刊少年サンデー1981年〜86年)などは10センチちょっとある筈の差が画面ではほとんど差が無く見えることもあったり、身長にさほど拘っていない作品もあったかなあ。「ドラゴンボール」(鳥山明、週刊少年ジャンプ1984年〜95年)の悟空みたいにクソ強ければ少年漫画文法もスパイスだし。
少女漫画でも(作品名を覚えていないけど)、彼氏が5センチ低いカップルが(牛乳を飲んだりして)同じ背丈になったけど、「(まだヒールが履けない)」と彼女がジレジレするラストカットが可愛いかった少女漫画があった。彼氏のあだ名が「芽キャベツ」だったんだよなあ。その時代の少女漫画文法を乗り越えていて、記憶に残っている。
古い日本映画だと、背があまり高くない俳優でも男性が背広、女性が和服で一歩後ろに控えていると、画面に収まりが良い作品がある。恋愛映画で洋装なら男>女の方が収まりが良いが、お見合い結婚の配偶者としてなら周りの目を気にすることも無いし。和装の結婚写真だと元から角隠しあるから男<女バランスになりやすいのが自然に見える。気になるなら、女性を座らせれば良いのだし。
「5センチの向こう岸」も「−5センチの愛を抱きしめて」も立位で物語が進むんだよね。座るか横になれば、それこそベッドの中では差は無くなるんだよ。