心
ある日の寒い冬のことです。
ロボットのオリバーは大きな屋敷で働いていました。オリバーという名前は屋敷の家族がつけてくれたものでした。
彼の働きぶりは見事なものでした。家事、接待、スケジュール調整。屋敷に住む家族たちは安心して彼に任せていました。オリバーは家族の喜ぶ顔がもっと見たくて頑張りました。
しかし、時間の流れというのはとても残酷のものでした。オリバーの体が日を増すごとにおかしくなってきていたのです。本来であるならば早期に修理すれば何も問題はありません。
ここで問題なのがロボット市場は既に新型のロボットが出回っていたことでした。オリバーの旧型の修理は取り扱っている店は少なくできたとしても時間も費用も多くかかります。
それに比べ新型ロボットはほぼ同じくらいの値段で購入することができるため新型を買ってくるほうが安上がりなのです。
家主の判断は即決でした。最後まで子供は反対していましたが、家主の権力にかなうはずもなくオリバーは使えそうな動力部だけ取られて山奥に捨てられてしまいました。
山奥に捨てられたオリバーは動くこともできず、ただゴミ捨て場で屍のように転がっているだけだでした。
山には雪が降り積もりオリバーにも多少積もってますが、オリバーにはその雪の冷たさもわかりません。
そして誰もここには来ないのでオリバーの頭に降り積もった雪を片付けてくれるものもいません。
オリバーは何も感じませんでした。オリバーは考えていました。心とは何かを。自分は何のために生まれたのかを。
ここは国の北方に位置する国境付近の村ノール。
オリバーが捨てられていくつかめの冬。ゴミ捨て場には相変わらず多くのロボットの残骸が転がっています。手だけのもの、どこかのエンジンの破損部分、顔だけのもの、部品だけのもの、壊されて原型がなくなっているものなど様々です。
そう考えれば動けはしないものの五体満足で残っているオリバーはまだ幸せ者でしょう。
毎日朝が来て夜になる。四季が巡ってもずっとこのままです。時計はそこら中に転がっていますがどれも役目を終えたガラクタに変わっていて仕事はしていない鉄屑になっていました。
そんなあるとき、声が聞こえました。人間の声。それも子供たちの声です。久しぶりに聞いた人間の声にオリバーは前の屋敷で働いていた記憶の断片が蘇っていました。
「いいかい?すべての人や動物には『心』が宿っているんだ」
「心?」
「そう心だ。楽しいと感じたり、嬉しいと感じたり、悲しいと感じたりする心があるんだ。だからシエルも他の人や動物やお花を大切にするんだよ」
「じゃあオリバーにも心があるんだね」
彼女はオリバーに向かって言いました。
「あぁ、そ、そうだね……もちろんオリバーにも心はあるよ。物も大切にしていると心が宿るというからね」
主人は引きつった笑顔を言いながらそう言いました。今思えばあの時からご主人様は僕を捨てるつもりだったのかもしれないとオリバーは思いました。オリバーはご主人様を憎みました。なぜならロボットにも心が宿るという嘘を教えられたことにです。オリバーの心はどこにもありません。ただ時間だけが流れていきます。
気づけば子どもたちのこえはどんどん大きくなっていました。ここにはいろんな鉄屑が置かれています。
小さな子供たちにとっては好奇心を刺激し、ひとつのアトラクションなのかもしれません。
そして一人の少女がオリバーの前に現れました。まだ十にも満たないような小さな女の子。クリーム色の長い髪に赤と白を基調とした服。マフラーに手袋にコートと寒さ対策は万全の服装です。彼女は興味ありげにオリバーに近づきます。オリバーの体を頭を顔を触っています。露出したボタンを押したりしていますが何も反応はありません。当然です。壊れているのですから。
少女がしばらく触っていると遠くから「おーい、なにやってんだ」と声が聞こえてきました。男の子の声です。
「ちょっと待ってー」
女の子がそう言いました。オリバーの顔に近づいて言いました。
「ねえ、あなたどこから来たの?すごく優しい顔してる」
オリバーは不思議に思いました。優しい顔?何をいっているんだろうこの子はと。オリバーはロボットのため顔が変わることはありません。作られた時からずっと。
オリバーはなにもしゃべれないため沈黙が流れます。少女はそんなことお構いなしに次々と話しかけていきます。しばらくすると他の子どもたちが集まってきます。男の子が三人、女の子が一人です。
「おい、ネージュなにやってんだよ……ってあれ、なにそのロボット?」
「わあ、すごい」
今までロボットの部品や一部分しか見てこなかった彼らにとってそのまま残ってるオリバーはとても珍しいものなのでしょう。全員の興味がオリバーに向けられます。
「あ、みんな見て見て、ここにあったの」
「あったのってお前……」
「危ないよ。動き出したら怖いし」
臆病な男の子グレズィールが警告します。
「大丈夫だって。さっきいろいろ触ってみたり、ボタンを押してみたりしたけど何もなかったし」
「ボタン押したって……危ないって」
能天気な彼女を心配する四人。そんな心配をよそに笑顔を見せるネージュ。怖いもの知らずと言えば聞こえはいいかもしれまんが、実際は放っておくと何をするかわからない問題児というイメージのほうが皆には根づいています。そこが彼女のいいところでもあるのですが。
この辺りでは見ないロボット。初めて見る五人の心は釘付けです。しかし、子どもたちだけで何かするのも危険なので一旦村の大人たちに報告することにしました。
村へ帰り、村長へ報告します。村長は形相を変えすぐに大人たちを現地に派遣しました。
五人の子供たちは村で待機命令が出されました。山奥のゴミ捨て場に大人たちが到着。例のロボットを調査しました。結果としては何もありませんでしたが、安全を第一としてゴミ捨て場への立ち入りを禁止しました。
しかし、ネージュだけは言いつけを守らず、毎日のようにオリバーへ会いに行き、話をしました。
「村長もひどいよね。あなたのこと危険扱いだなんて。でも安心して私はあなたに毎日会いに来るから」
話と言っても彼女が自分のことを一方的に話すだけです。好きなもの、家族のこと、友達のこと、村長への不満。様々なことを話してくれる彼女にオリバーは以前の家で感じていた温かさと同じものを感じていた。次第に彼女がいない時間は寂しいと感じるようになっていました。
春の日も、夏の日も、秋の日も。そしてまた冬が訪れます。
村では年に一度の冬祭りが行われようとしています。ネージュはこの祭りでオリバーも参加させたいと感じていました。村長に提案してみますが、答えは当然却下。それどころか村の言いつけを守らなった罰としてネージュは牢へ閉じ込められてしまいました。
オリバーはまた一人ぼっちになってしまいました。ネージュが牢へ閉じ込められたことを知らないオリバーは彼女のことを心配していました。何かあったのだろうかと。しかし、オリバーは何もできません。時間だけが過ぎていきました。
ネージュを除いた子どもたち四人がなんとか村長を説得しようと奮闘しますが、村長は頑なに首を縦にはふりませんでした。
このままでは冬も村の祭りも終わってしまいます。4人は焦っていました。大人たちには見つからない秘密基地で作戦会議を開きます。
「全く村長ってばなんであんなに頑固者なんだろう?」
「村長には村長なりの考えがあるんだよきっと」
「考えって?」
「それは……わかんないけど」
「なんだよそれ」
「でもこのままじゃやばいよねなんとかしないと」
「あのロボットをどうにかして村に連れてきたいよな。ネージュが悲しんでるとここれ以上見たくないし」
その言葉を聞いて他の3人はニヤニヤと笑っています。
「な、なんだよ皆。今笑うとこじゃないだろ」
「ほんっとプリュイってネージュのこと好きよね」
「は、はぁ!?」
突然の発言に驚愕するプリュイ。ブリュイは確かにネージュのことが好きなのです。ただ、今この時、この場ではいうべき発言ではないでしょう。ちなみにブリュイがネージュのことを好きなのはネージュ本人は知りません。いや、正確に言えば好意に気づいていないというのが正しいでしょう。
ブリュイの反応をよそに三人は考えます。するとグレズィールがこんなことを言い出しました。
「ねえ、みんな。あのロボットはあの場所に捨てられてたんだよね」
「はぁ、そんなの当たり前でしょ」
「じゃあさあのロボットを捨てた人がいるってことだよね?もしかしたらあのロボットを捨てた持ち主を探せばあのロボットについて何かわかるんじゃないかな?」
その言葉にみんなは驚きました。
「確かに……」
「それはいい案ね」
「よし!そうと決まれば早速街のほうへ行ってみようよ」
子どもたちは山を下ります。村から街へ。久々に下りる街は大きく子供たちは興奮させました。至る所にレンガ造りの家が並び、街を賑わせる商店街。石の道を歩く豪華な服を身にまとった人々。子どもたちの村から比べれば同じ国だというのにまるで別世界のようです。
子どもたちはしばらく街の風景に見惚れていましたが、ソレイユがここに来た理由を思い出したようで皆に声をかけます。
「ちょっとみんな、目的忘れてる!」
「そうだった……まずは情報収集だよな」
子どもたちは二手に分かれて街でオリバーの情報を集めることにしました。ソレイユとエクレールは街の西から、ブリュイとグレズィールは東からそれぞれ尋ねます。街を行き交う人、商店街、門番、旅人に商人。
しかし、誰一人としてオリバーのことを言っている人はいませんでした。他の場所をあたってみようと場所を変えようとしたとき、もしかしたら領主様なら何か知っているかもしれないといわれました。子どもたちは早速領主様に掛け合おうとしますが、当然訪問は失敗。忙しいため会うことすら叶いません。
この日は諦めて村に帰ることにしました。
その夜、子供たちは話し合っていました。勿論大人たちには内緒で。
「どうだった?」
「全然ダメ。そっちは?」
「こっちもだ」
「街にはいろんなロボットがいっぱいいてどれもあのロボットよりすごそうだったよね」
「こらっ、そういうこと言わないの」
「あっ、……ごめん」
ついつい行ってしまった言葉、ここにネージュがいたら悲しんでいたことだろう。何せ彼女はここにいる誰よりもあのロボットのことを気にしていた。
「結局有益な情報としては領主様に聞いてみるぐらいしかないか……」
「話聞いてくれるかしら?領主様ってとっても忙しいんでしょ?」
「行ってみるしかないよ」
「うん、そうだね。それしか方法がないもの」
その日は解散となって明日に備えて眠ることにしました。
そして夜が明けました。子どもたちはまた街へ行く準備をします。
目指すのは領主様の家です。子どもたちの予想通り正門前には警備の兵が二人立っています。鎧というほどの武装はしていませんがそれでも帯刀していることは確実です。厳重な警備に子どもたちは戸惑ってしまいます。
「大丈夫かな?」
「話を聞いてくれるかどうか聞くだけだから大丈夫だよ」
屋敷に近づく子どもたち。警備兵は当然子どもたちの進路を遮ります。
「待て!ここから先へ通すわけにはいかない」
「私たち領主様に話があるんです。通してください」
「今日領主様の予定で客人に会う予定はないと聞いている。早々に立ち去るがいい」
警備は厳重。当然前から堂々と通してくれるはずはありません。
粘って交渉を続けたりもしましたがやはり領主さまと出会うことは難しいみたいでその場を一時後にしました。
「ダメだったね」
「うん・・・・・・」
「これからどうするの?」
「どうするっていったって・・・・・・」
誰も言葉を繋げようとするものはいません。子どもたちにはこれ以上打つ手がないからです。
「あ~結局ダメなのかな」
「だいたいさ、無理な話なんだよ。いつ、だれが捨てたかもわからないロボットの持ち主を探すなんて」
「やってみないとわからないじゃない」
「いや、もうここまでやってダメだったんだから無理だと思うけどな」
「そんなこと言わないの!」
ダメだと言う派と諦めないと異論を唱える子どもたちで口論になりました。そこにある一人の女性が通りかかりました。
「あなたたち何を騒いでいるの?」
子どもたちは女性の方へ顔を向けます。その女性は服装や身なりからかなり身分の高い人だということが分かりました。街中でドレスを着ているなんて貴族以上の身分でもなければまずできません。
「ここは人通りも多いから騒ぐなら他の場所でね。」
「すみません。すぐに移動します」
女性に言われ気づいた子どもたちは移動しようとしました。そんな時子どもたちの一人ソレイユが口を開きました。
「申し訳ございません。つかぬことを伺いますがあなたはもしかしてシエル様でしょうか?」
「えぇそうだけど」
「ええ!?」
他の村の子供たちが驚きます。それも無理はありません。シエル様と呼ばれた女性。この方こそ子どもたちが街でずっと探していた領主様だったのです。
「じゃあじゃあ領主様。お願いがるのです聞き入れてくださいませんか?」
「お願い?」
「私達村に囚われてるネージュを助けたいんです。そのためにはロボットのことを知らないといけなくて」
子どもたちは必死に訴えますが、思いが先行してしまい、あまりシエルには伝わりませんでした。
「みなさん、落ち着いて。ゆっくりでいいですよ。ちゃんと話聞きますから。まずは私の自宅へどうぞ」
領主さまは子どもたちを引き連れて屋敷に帰りました。屋敷前で兵士たちに聞かれましたがシエルは私のお客様よとその一声で完封した。
客室に招かれてソファに座る子どもたち4人。村にはないインテリア家具に魅了されここに来た目的を忘れそうになる。
実際ソレイユ以外の子たちは部屋ではしゃいでいました。
「見てみてこれ。すごい綺麗な花瓶。きっと高価なものなんでしょうね」
「すげぇ・・・・・・おれ絵とか初めて見た。こんなにすごいんだ」
「ちょっとみんな!触ったりしないでよ。あとここに来た目的ちゃんと覚えてるでしょうね?」
「わかってるってちょっと見てるだけじゃん」
「ソレイユもすごいと思わない?この彫刻とか!」
もちろんソレイユも興味はあります。状況が状況でなけれなじっくりと観覧していたことでしょう。
「お待たせ。ごめんね。ちょっと従者たちに話をして遅れちゃった」
シエルが入ってきます。そこで絵画や彫刻、陶芸品、白磁期の花瓶に興味をもち観覧していたところを観られてしまいました。
これはさすがに怒られるかもと危惧していたソレイユでしたが次にシエルが発した言葉は思いもよらぬ一言でした。
「みんな興味あるの?」
「え?」
「ここには私のコレクションとして有名な作品や珍しいものとか置いてるの。それを機に会話が弾むこともあるし、もしかしてあなたたちも芸術に興味あるのかしら?」
シエルの反応に最初は戸惑いつつある四人であったが、領主さまという肩書が四人にお堅い先入観を与えていたのかもしれない。
領主さまのフレンドリーな対応に子どもたちもなんだかんだ打ち解けていきいよいよ本筋を話すことにした。
「実は私たちの村のはずれに捨てられているロボットのことを調べているんです。領主様なら何か知っているかもしれないと思い今日話しに来ました」
「ロボット?」
「はい。いつから捨てられているのか誰が捨てたのか。なにかわかればネージュもきっと解放されると思うんです」
シエルは子どもたちの話を傾聴し、受け止めた。これまでの村の出来事をロボットのこと、ネージュのこと、村長のことを。
シエルは子どもたちにその場所まで連れて行ってほしいと願い出た。
領主としての仕事が落ち着いた一週間後今日だけは子どもたちのために時間を作り、約束通り二人の護衛を引き連れ、街から離れたノール村へとやって来た。
「シエル様。私は反対です。何も領主様自身がこちらへ来ずとも我々だけで問題はありません」
「まだそんなことを言っているのですか。村には私の友人がいるのです。友人の頼みに私が行かなくて誰が行くのですか」
「しかし、こんな辺鄙な村。いつ誰に遭遇してしまうかわかったものでありません。野生動物も出るかもしれないですし」
「そのためにあなたたちがいるんでしょ」
「それはそうなのですが・・・・・・」
兵士たちは領主さまの突飛な行動に困惑しつつも、傍を離れませんでした。しばらく山道を登山して、開けた場所へ来ました。
そこには多くの人たちが領主さまを迎えてくれていました。一国を治める領主さまが訪問されるので当然といえば当然でしょう。
「これはこれは領主様。よくぞおいでくださいました。足元の悪い中さぞお疲れであったでしょう。今日は村の者たち総出で領主様をおもてなしをしていくのでどうかゆっくりしていってください」
「それはありがとう。しかし、そんなにゆっくりしている時間はありません。ソレイユたちはいるかしら?」
「はい・・・・・・」
村長は先日ソレイユたちから事情を聴いているとはいえやはり息がつまります。ソレイユが領主様とお友達になったとふざけたことをぬかした時は変なものでも口にしたかと怪しんだがどうやら本当のこと見たいです。
「シエル様ここにいますよ」
「ソレイユ!それにみんなも!」
村の奥から子どもたちが顔を見せます。同時にシエルの顔に笑顔が現れます。
「来てくれて嬉しいです」
「私もみんなと会えてうれしいわ」
シエルと子どもたちは久々の再開に話を弾ませます。護衛の兵も村長たちも楽しそうに話す双方に声をかけられずにいましたがシエルはここに来た目的を思い出したみたいで子どもたちにそのロボットの居場所を尋ねます。
子どもたちは領主さまを案内しました。あのゴミ捨て場へ。領主様、子どもたち、護衛の兵だけで向かったゴミ捨て場はあの時と変わらず物が散乱していました。
「ここですよ」
そしてついに目的の場所へ着きました。そして領主様はそのロボットを見たとき「えっ?」と驚きの声をあげました。
「オリバー・・・・・・」
沈黙するシエル。彼女がオリバーを忘れたことは一時もありません。なぜなら屋敷で働いていたオリバーを捨てることを最後まで反対していたあのときの子共なのですから。
「あなた・・・・・・こんなところにいたのね。ずっと・・・・・・ずっと一人で・・・・・・」
気づけばシエルは涙を流しながら動かないオリバーを抱きしめていました。何度も何度も謝罪しながら。これで許されるとは思っていませんがそれでも謝らすにはいられなかったのです。
オリバーは大人になったシエルが誰だかわかりません。それでもどこか懐かしさを感じていました。
「シエル様?」
ソレイユが声をかけます。
ハッと我に返ったシエルは涙をぬぐい、子どもたちに振り返りました。
「みんなありがとう。今日ここへ連れてきてくれて。みんなが案内してくれなかったらきっと私はこのことを知らずに生きていたと思う。村長の説得は任せて。きっといい結果を持ってくると約束するわ」
あれから数時間が経過した。村長と領主様の二人でずっと話し合いが行われています。その間子どもたちは待っていることしかできません。
それでも子どもたちは信じていました。良き結果を。
そしてシエルと村長が出てきました。もちろんいい知らせをもって。シエルの説得によりネージュは解放されました。
「よかったよ。ネージュ」
ソレイユはネージュに涙を流しながら抱きついています。親友としてはよっぽど心配していたんでしょう。
「心配かけてごめんね。ソレイユ」
「元気そうでよかった」
「ブリュイもありがとう」
ネージュが笑います。ブリュイはその笑顔を可愛いとは思いつつも目を合わせられなくて顔を真っ赤にしながら視線を逸らしました。
「シエル様もありがとうございます。ネージュを助けていただいて」
「いえ、これくらい安いものだわ」
「ロボットの件はどうなったの?」
「オリバーは・・・・・・いえ、ロボットは・・・・・・」
そこまで言って口を閉じます。言いかけていた言葉を飲み込むというよりはある人物へと言葉を届けます。
「ネージュさん」
「はい?」
「ソレイユやみんなから聞いたわ。あなたが彼を見つけてくれたって。そして彼に新しい居場所を作ろうとしたことも。それでお願いがあるの。聞いてくれるかしら」
「お願い、ですか?」
「えぇ。オリバーをこの村に置いてあげてほしいの」
「もちろんですよ。私は最初からそのつもりです」
「ありがとう・・・・・・」
ネージュとシエルの意思決定によりゴミ捨て場に捨てられていたオリバーは運び出され村の中央に置かれシンボルになりました。綺麗にしてあげたかったがさすがに長い間風にさらされ、古びた錆や汚れまでは取れませんでした。オリバーのネームプレートには”心優しきロボットオリバー”と書かれています。
オリバーを中心に村では伝統のお祭りが開かれました。冬に開かれる村一大のお祭りです。
ネージュ、ブリュイ、ソレイユ、エクレール、グレズィール、村長、シエル、その他大勢の人達が参加しました。
空からは白い雪が降っています。白い雪はオリバーにも降り積もり、そして金属に当たると水に溶け、涙のように流れ落ちていきました。
~FIN~




