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転生女神ノ救世譚  作者: X-PICA
第二章 学術国家ハクシス編
8/12

第8話 関係性が変わっても……。

ジークがトワレナに水を飲ませると、少しずつ落ち着いた。

顔面蒼白状態だったトワレナの顔色も良くなって来た。


「申し訳ありません。

 取り乱しました。」

「何があった?」

「いつもジーク様が狩ってきた魔物のお肉ばかりなので、たまには魚をソフィ様に食べさせてあげたいと思いまして、川に向かったんです。

 そしたら…、その…、川の近くの木に…、ひ、人の…、骨が…、あったんです…。」

「人の骨?!」


私はびっくりして声を上げた。

対してジークは冷静に質問した。


「場所は?」

「ここから南西の位置にある川です。」


場所を聞いたジークは顔色を変えた。


「ありえん。

 その場所は、我が今朝魔物討伐をした場所だ。

 その時は人の骨などなかった。」

「わたくしは嘘などついておりません!」

「分かっている。

 だからこそ、ありえんと言っているのだ。

 最近落ち着いてきたと思っていたが、まさか、また空間の歪みが発生したのか…?

 あと少しで元通りになるはずだったのに、また一からなのか…。」


ジークは頭を抱えた。

しばらくして、ぽつりと言った。


「その場所へ連れて行ってくれ。」

「はい。」


私とジーク、そしてマタローはトワレナに連れられ、骨のある場所へとやって来た。

ジークは骨を見て言った。


「今朝は、ここに人の死骸などなかった。

 間違いない。

 また空間に歪みが生じたようだ。

 ソフィ、この人物は恐らくエレーラ大陸で死んだ人の遺体だ。

 この服装に見覚えはないか?」


私は恐々とその遺体を見る。

その遺体が来ていた服を見て、私は驚愕した。

銀色の鎧に、大きな剣。

それは、お祖父様がリーダーを務めていた冒険者パーティ「王玉」のメンバーで、ヒュドラ討伐を依頼されたあの日、お祖父様と一緒に笑っていた、あの筋骨隆々なお婆さんの装いと同じだった。


「知ってる…。

 お祖父様の…、仲間…。」

「え?」


トワレナが心配そうな目で私を見る。


筋骨隆々なお婆さんがここに現れたということは、きっと、小さなお爺さんも近くに現れている可能性がある。

そして・・・


・・・お祖父様も。


そう思った私は全速力で走り出した。


背後から、トワレナの「ソフィ様?!」という声が聞こえたが、私は無視して走り続けた。


そして、探した。

お祖父様の遺体を。

終ぞ見ることが叶わないと思っていたお祖父様の姿を再び見るために。


私の出来る限りの力を持って、辺りを隈無く探したが見つからなかった。

気がつくと、学術国家ハクシスに辿り着いていた。


「居ない。

 ってことは、まだ生きてるってこと…?」


私が呟くと、隣から声がした。


「ソフィちゃん?

 こんなところで何してるの?

 今日は大図書館のアルバイトないの?」


リナだった。

ハクシスの書やリサに関して敏感なリナには、リタと一緒に大図書館のアルバイトをしていると告げている。


「今日は早く終わった。

 リナさんこそ、ここで何を?」

「私はお使いの帰りよ。」



息を切らした私を見て、私の身に何かが起こったことを悟ったのでしょうね。

リナさんはニコニコの笑顔で言った。


「ねぇねぇ、ソフィちゃん。

 なんか、あっちで騒ぎが起こってるみたいなのよね。

 一緒に行ってみない?

 野次馬しに行かない?」

「行く。」


私は即答した。


その場所には人だかりが出来ていた。

よく見るとリタがいた。

私たちは駆け寄った。


「リタ。」

「リナ。

 と、ソフィ?

 お前、まだ帰ってなかったのか?」

「いろいろあって戻って来た。」

「何があったの?

 何か面白いこと?」


リナが聞くとリタは真面目な顔で答えた。


「面白くねぇよ。

 ソフィが大図書館を出てってから、大体30分後くらいか。

 館長に『今日は人が少ないから帰りな。君、六連勤だろう?』って言われてな。

 俺も帰ることにしたんだ。

 で、道を歩いてたら、背後でゴトって音がして、振り向いたら、砕け散った人の骨が落ちてたんだよ。

 それで、当時の状況を警備兵に伝えて、今、やっと解放されたところ。

 危うく殺人犯にされるところだった。」

「何それ、こわぁ。」


怖がるリナさんの横で、私は考えていた。


突然現れた人の骨。

トワレナが筋骨隆々なお婆さんの骨を見つけた時の状況と似ている。


まさかと思い、リタに聞いた。


「ねえ、その骨、どんな服を着てた?」

「え?

 なんでそんなことを?」

「いいから、お願い。

 教えて。」

「灰色のローブと、緑の大きな石がついた杖と、あと…。」


そこまで聞いて分かった。


私は人混みを掻き分け、なんとか骨を目にした。

間違いなかった。

あれはヒュドラ討伐を依頼された時の小さなお爺さんの装いと同じだった。


リタのところに戻るとリタに訊いた。


「他に骨落ちてなかった?」

「いや、落ちてなかったけど。」

「そう。」

「どうしたんだ?

 服装聞いた瞬間、急に人混みに向かって走ってったけど。」

「実は、森にも人の骨が現れたの。

 その骨が私の知ってる人の骨で。

 その人はパーティを組んでる冒険者だったから、他の仲間もいるんじゃないかって思って探してたら、ここに辿り着いた。」


私は人混みで見え隠れしている灰色のローブを見つめながら続けた。


「あの骨は、その人と同じパーティの人の骨。

 そして、そのパーティにはもう一人仲間がいるの。

 私の…、私のお祖父様が!」


私は涙声で言った。

驚愕の顔をした二人を見て、さらに続ける。


「だから、あと一つあるはず。

 私のお祖父様の骨が…。」


私は泣き崩れた。


ヒュドラの討伐に失敗し死んだということは知っていた。

けれど、死体をこの目で見ていないため、どこかで生き延びているのではないかという期待が微かにあったの。

でも、その淡い幻想は打ち砕かれた。

王玉のメンバーの2人の死体を目にしてしまった。

お祖父様だけ生き残っていることなど、奇跡が起きない限りあり得ない。


事実を受け入れるには、現実を受け入れるには、私はまだ幼すぎた。


私は2人に支えられながら、彼らの家に向かった。

リナさんが「ソフィちゃんがこの国で一番安らげる場所は私たちの家じゃないかな。一旦心を休ませよう。」と提案したためだ。


リナさん自身、リサさんの死以来、心が不安定になりやすかったから、心が疲れた時にどうするべきか、よく理解していたのでしょうね。


彼らの家に着くと、玄関の前に私を追って来たトワレナがいた。


トワレナは今にも消えてしまいそうな私を見つけると駆け寄って来た。


「ソフィ様、大丈夫ですか?

 ど、どうしてこんな…。

 え…?」


トワレナも困惑していた。


これまでも私は塞ぎ込んだことがあった。


トワレナの表情を上手く引き出せなかった時、四属性魔法が使えないと知った時などなど。


しかし、この時の私はその比ではなかった。


幼いながらに死というものを理解したが、それを受け入れる心の強さがまだ足りなかった。


「何があったか、これから話します。

 中へどうぞ。」


リタに促され、私たちはリタの部屋へ案内された。


「とりあえず、ベッドに座らせとくか。」


リタはそう言うと私をベッドに座らせ、自分は床にクッションを敷いて座った。


トワレナも床にクッションを敷いて座った。


リナさんは飲み物を持って来た後に、2人と同じようにして座った。


「大森林であったことは、ソフィから大体聞いてます。

 なので、こっちで何があったか、先に説明しますね。」

「分かりました。」


まず、リタとリナさんがハクシスで数分前に起こった出来事を説明した。

その後、トワレナが大森林で起こった出来事を説明した。


3人とも難しい顔をしてたのを覚えてるわ。


「となると、ハクシスか大森林のどっちかに、あと一つ、人の骨が落ちてるってことか。

 ソフィがこんなになっちまったし、見つけてやりたいのは山々だが、さすがに範囲が広すぎるよなぁ。

 どうするか。」

「リタはどっちにあると思う?」

「さあな。

 空間の歪みなんて予測できるものじゃないし、ましてや出現ポイントの推測だなんてできるわけがねぇ。

 大勢での広範囲の捜索ができれば、手っ取り早いが、たかが一般人の骨一つで動いてくれるほど、警備兵たちも暇じゃねぇしな。」

「一般人…?」


リタの言葉にトワレナが疑問を抱いた。


お祖父様はヴィクトリア王国の前国王。

世界に一つしかない王族家系の一人。

一般人ではない。


なら、なぜリタはお祖父様を一般人と言ったのか。


よく考えると、リタたちには自分は遠い場所から来たとは話していたが、一度も自分が王族の人間だとは話していなかった。

つまり、リタたちは私を空間の歪みによって遠い場所から大森林へと迷い込んでしまった一般人と認識しているわけで。

となれば、私のお祖父様も一般人と考えてしまってもおかしくはない。


「あ、あの、ソフィ様のお祖父様は一般人ではありませんよ。」

「え?

 それはどういう意味ですか?」


トワレナの言葉に2人が不思議そうな顔をする。


その顔に向かって、トワレナが告げる。


「ソフィ様からお聞きになっていないんですか?

 ソフィ様のお祖父様はヴィクトリア王国の前国王ですよ。」

「え……。」


2人が目を丸くする。


そして、


「「はああああぁぁぁぁぁぁ?????????」」


と、大声を上げた。


「ちょ、ちょっと待って下さい。

 え?

 て、ことは何?

 ソフィはヴィクトリア王国のーー」

「第二王女です。」


2人が分かりやすく絶句した。


「名前が一緒だから、もしかしてとは思ってたけど、まさか本物だったなんて。」

「リナ、お前、ソフィ…、ソフィ様によく抱きついてたろ!」

「あ……、まさか……、極刑……?」


あなたも分かるでしょう?

2人がこんなに慌てふためいた理由が。


前に話したようにネシヤ三陸戦争後、十二神獣に唯一王政が認められている国、それがヴィクトリア王国。

そんなヴィクトリア王国の王族は、十二神獣に認められた王族と世界にみなされているから、立場は十二神獣の下に位置する。


つまりは神様の次に偉い存在。


それが王族。


一般人の不敬な態度など許されない。


「落ち着いてください、お二人とも!

 ソフィ様は抱きつかれた程度で極刑に処すほど狭い心ではありません!」

「そ、それは分かってますけど…。」

「とりあえず、ヴィクトリア王国の前国王のご遺骨があるかもしれないと警備兵に言ってみてはいかがでしょう?」

「確かにそう言えば間違いなく警備兵は動くが、そもそもの話、こんなことを信じてくれるのか?」

「それはお二人の信用度次第でしょう。」


2人は不安そうな顔をして、国の警備兵のもとへと向かった。


リタの部屋に私とトワレナが残された。


しばらく沈黙の時間が続い後、トワレナが口を開いた。


「申し訳ございません。

 許可なくソフィ様が王族だと申し上げてしまいました。」

「別にいいよ。

 隠してたわけじゃないから。」


それよりも、問題は…。


「ギル兄が言ってた。

 『十二神獣の名を用いた嘘をつくと重い罪に問われるように、王族の名を用いた嘘もまた、重い罪に問われることがある。』

 って。」

「それってつまり、リタさんたちの言葉が嘘だと判断されれば、彼らは罪に問われるということですか?」

「たぶん。」


私はベッドから立ち上がった。


「行かなきゃ。」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないよ。

 でも、私も行かなきゃ。

 2人が危ないから。」

「・・・分かりました。

 警備兵は普段、北にある兵舎にいるそうです。

 リタさんたちは恐らくそこに向かったはずです。」


私は重い足を動かして、兵舎へと向かった。


兵舎に近づいて来ると、何かを言い争う声が聞こえた。


「お前ら、何度言ったら分かる!

 ソフィアリス様がこの国にいらっしゃるわけがないだろう!

 彼女が住むヴィクトリア王国があるのはエレーラ大陸。

 ここと地図上じゃ真反対の大陸だ!」

「だから、エレーラ大陸で大規模な転移災害が起きてて、それに巻き込まれたんだよ!」

「最近、この国の領地内でも、エレーラ大陸にしかいないはずの魔物が発見されてるじゃない!

 なんで信じてくれないの?!」

「転移しているのは魔物だ!

 人も転移したという情報はない!

 我々は先程の人骨のことで忙しいんだ!

 これ以上邪魔をする気なら、お前らを王族名悪用の罪で捕縛するぞ!」

「何で聞いてすらくれないんだよ!」


リタとリナさんが一生懸命説明しようと試みているが、警備兵たちは真面目に聞こうとすらしていなかった。


恐らく警備兵たちは、子供の戯言ぐらいにしか思っていないのだろう。


「子供だからって理由だけで、真面目に取り合いすらしないだなんてね。

 これが大人なんだね…。」

「ソフィ様…?」

「トワレナ。

 私の記憶力、知ってるよね。」

「はい。」

「昔、メロ姉に言われたんだ。

 子供だとバカにするやつがいるなら、明らかに子供じゃない言動をして、相手の度肝を抜かせばいいって。

 私はメロ姉の話し方も所作も、全て記憶してる。

 だから、メロ姉の真似が出来る。

 それもただのモノマネなんかじゃない。

 本物と変わらないレベルの真似がね。

 成人した人っぽい雰囲気を出しとけば、話しを聞いてくれるよね。」


私は深呼吸をした。

そして、メロ姉を『憑依』させた。


私は未だ言い争っている彼らに近づいた。


「この国の警備兵とやらは、随分と傲慢ですのね。

 国民の言葉を聞こうともしないで、国の安全を守れまして?」


警備兵たちは目の前に立つ只者じゃないオーラを放つ少女を見て言葉を失う。


「君…、いや、あなたは…。」

「わたくしはヴィクトリア王国第二王女ソフィアリス・ヴィクトリアナと申しますわ。

 以後、お見知りおきを。」


カーテシーをしながら、自己紹介をする。


その仕草や言葉遣いに警備兵たちだけでなく、通りすがりの人々たちも「ほ、本物…?」「本物だろ。あんなオーラを放つ子供、王族以外にあり得ないだろ。」「でも、何でここに?」などと騒つき始める。


「このガキ共の話は、本当だったのか…。」

「わたくしのご友人たちを『ガキ共』と罵るのはお止め下さいまし。

 極刑に処……、いや、こんなことで極刑は違う…。

 でも、メロ姉なら多分言うよね…。

 ・・・あれ?

 メロ姉、結構残酷な人なんじゃ…。」


場が静寂に包まれる。


リタが口を開いた。


「いや、王族の風格を出すなら最後まで出せよ!」

「ちょ、リタ…!」

「あ…、やべっ…!」


リナさんがリタのツッコミを抑える光景を見て、私は元のような関係には戻れないことを悟った。


私は苦笑いをするしかなかった。


その後も、私が7歳児とは思えない数多の言動を行った結果、警備兵たちにこれまで起こった出来事をなんとか信じさせることができた。

すぐさま捜索部隊が編成され、ハクシスの領地内、ジークフリード大森林での大規模な捜索が開始された。

見つかるまで捜索してもらうのは流石に悪いと思ったので、五日間捜索してもらい、見つからなかったら諦めることに決めた。


ハクシスの警備兵たちが捜索してくれている間、私が何をしていたかというとーー


ーーリタの家に匿ってもらっていた。


ソフィアリス・ヴィクトリアナがいるという情報は瞬く間にハクシス中に広まった。

結果、私を一目見ようとする者が後を絶たなくなり、外出すると身動きが取れなくなるようになってしまった。

ハクシス国内は、私を探して大混乱状態となった。

大森林にも戻れなくなった。


「この混乱、まだしばらく続きそうだな。」

「そうね。

 ソフィ様、お腹空いてませんか?

 夜ご飯に丁度良いお時間ですし、父に言って何か作ってもらいましょう。」

「お腹空いてない…。

 いらない…。」

「ソフィ様…。」


兵舎からリタたちの家へ戻って来てから、私はずっとリタのベッドの上でうずくまっていた。


「はぁ。

 お祖父様が死んだことに気づいたり、外に出れなくなったり、リタたちの態度が変わったり、散々な日だ…。

 もう…いいよ…。」


私が呟くと、トワレナが私の隣に座り、何も言わずに私を抱きしめた。


「トワレナ…?」

「ソフィ様。

 遺骨が発見されるまでは、お祖父様が生きている可能性は消えません。

 希望を捨てないでくださいね。」

「うん。」


私だって、お祖父様が生きていると信じたかった。

でも、現実を見てしまえば信じることはできない。


「私って、意外と現実的だったみたい…。」


この日、私は自分自身を少し理解した。


この日はたくさん走ったので、何としてもお風呂には入りたかったの。

けれど、大森林のツリーハウスに戻ることはできないし、銭湯に行くこともできない。

結果として、リタの家のお風呂を借りることになった。


浴室は例の茶色のレンガで出来ていた。


「このレンガ、水に強いんだ…。」


土属性魔法使いのジル兄曰く、エレーラ大陸には水に強い土は存在しないらしいの。

つまりは、土に強いレンガを作ることが出来ないということ。

そのため、水に強いレンガが存在していることに、何故か少し感激したわ。


シャワーを浴びていると、外から声が聞こえた。


「わたくしは人形です。

 お風呂に入らなくても臭くなりません。」

「でも、汚れはするでしょう?

 王族の隣に立つなら、身だしなみはきちんとしなくちゃいけませんよ。」

「わ、わたくしは関節の隙間を洗浄すれば、それで…。」

「もう!

 じれったいですね!

 四の五の言わずに服を脱いで下さい!」

「あ、ちょ、ちょっと、勝手に脱がさないで下さい…!

 あ、ああ…!」

「へ、変な声出さないで下さい!

 ほら、入りますよ。」


浴室のドアが勢いよく開かれた。


「ソフィ様!

 お背中お流し致しますよ!」


いつも通りのリナさんと恥ずかしがるトワレナが浴室に入って来た。


「ソフィ様、お見苦しい姿をお見せしてしまい申し訳ございません。」


トワレナが言うと、リナさんのツッコミが入った。


「へ?

 そんな立派なモノを持っておいて、何言ってるんですか?!

 私に対する当てつけですか?!」

「それは、どういう意味です?」

「んんん〜……!!!!

 良いもんね!

 私はまだ成長期ですから!

 これからですから!」


何故かトワレナに敵意を剥き出しにしていた。


台詞通り、リナさんに背中を洗ってもらっていると、リナさんが言った。


「寂しい思いさせてごめんなさい。

 トワレナさんに言われたんです。

 私たちが急に他人行儀になったから、ソフィ様が落ち込んでいらっしゃるって。

 それってつまり、今まで通りに接して良いってことですよね?」


私がゆっくり頷くと、リナさんが嬉しそうな声で言った。


「そっか。

 ソフィ様。

 リタと違って、私とソフィ様は出会ってまだ一週間くらいですけど、それなのに、『ご友人』って言ってくださって、私、とても嬉しかったですよ。

 ソフィ様が王族と知ってしまった以上、今まで通りの言葉遣いは出来ませんけど、でも、今まで通りの接し方をするように心掛けますので、これからも私の『ご友人』でいてくださいますか?」

「うん。

 リナさんは私の『ご友人』だよ。」


私はリナさんとの心の距離が縮まった気がした。

いや、確実に縮まった。


私は心が少し楽になった気がした。


背中を洗ってもらい終わると、私は湯船に浸かった。


ぼーっとしていると、リナさんがトワレナの髪を触りながら言っているのが耳に入って来た。


「トワレナさん、これ普段どうやって洗ってるんですか?」

「普段はスプレーを吹きかけて、櫛で梳かしてます。」

「え?

 それだけですか?」

「はい。

 これも髪のように見えるだけで、素材はジーク様がお創りになった全くの別物なので、除菌作用のあるスプレーを吹きかけて梳すだけで、完璧、とは断言できませんが、結構綺麗になるんですよ。

 それに、この髪を人と同じ方法で洗おうとすれば、凄い量のシャンプーとリンスを使うことになるじゃないですか。

 ただのメイドでしかないわたくしが、主人以上に使ってしまうのは、あまり良くないのではないかと。」


ポチャンという水の音と共に、リナの顔が憤怒の顔に変わっていく。


「リナさん…?」

「良くない…。」

「はい?」

「その考え方が良くないです!

 いいですか!

 髪は『女の命』と言われてるんです!

 トワレナさんは女性なんですから、髪は大事にしないといけません!」

「わ、わたくしは女型であって、女性ではーー」

「屁理屈はいいです!

 さっさと頭を貸しなさい!!」

「ふ、ふわぁぁ…!!」


リナさんに叱られながら髪を洗われるトワレナは、いつもより少しだけ幼く見えた。

 

ちなみに、パジャマとして置かれていたのは、青い鳥を模したパジャマだったわ。


風呂を上がり、私はグレイテラさんが用意してくれた就寝用の部屋へと向かった。

そこには布団が敷かれていた。


それを見て、私は呟いた。


「薄い…。」


と。


私はそれまで、王宮でも大森林のツリーハウスでもベッドで寝ていたの。

だから、ベッドと比べて、厚みのない布団に対して、「床で寝るのと変わらないのでは?」と若干の不安感を抱いてしまったのよ。


ふと窓の外を見ると、夜だというのに大勢の人が私を求めて街を彷徨っていた。

人の流れを眺めていると、背後から声が聞こえた。


「ソフィ、炭酸飲めるか?

 ラムネ持ってきたんだけど。」

「炭酸、飲んだことない。

 飲んでみたい。」

「はいよ。」


リタにラムネを手渡された。


喉に流すと何かがパチパチ弾けた。


「うぎゃあ。

 なんか喉の奥がパチパチするぅ…。」

「ははは!

 すげぇ、顔んなってる!」


リタが盛大に笑う。

そのいつもと変わらない彼の言動を見て言った。


「リタはいつも通りなんだね。」

「お前がそれを望んだんだろ。

 それとも何だ?

 俺にだけは敬語を使えって命令か?」

「ううん。

 リナさんは敬語使ってたから、リタはあんまり変わらなくて良かったなって。」

「そうか。」


私はまた心が少し軽くなった気がした。


「それにしても、そうやって子供用のパジャマ着てると、本当にそこら辺にどこにでもいる女の子と変わんないよな。」

「え?

 子供っぽいってこと?」


私が不貞腐れたように口を膨らませて言うと、リタは苦笑いをして言った。


「違ぇよ。

 その逆だ。

 感心してんだよ。

 トワレナさんに聞いたぜ。

 兵舎の前にソフィが来たのは、俺たちを助けるためだって。

 直前まで動けないほどに落ち込んでたのに、俺たちのためにって動いてくれた。

 世間的に見ればまだ幼い俺よりも遥かに幼いくせに、俺以上に世間のことを理解していた。

 それに気づいた時にさ、一見すると、どこにでもいる普通の女の子だけど、実際にはそうじゃない、確かな王族なんだなって思って、感心したんだよ。」


リタは夜空を見上げて呟いた。


「もしも俺もお前くらい世界のことを理解していたなら、あの時、リサを止められてたのかな…。」


私は何と言ったら良いか分からず、黙るしかなかった。


少ししんみりとした空気感が漂っていたが、それはすぐに終わった。

リナさんが部屋の扉を勢いよく開けて入ってきた。

そして、右手に持っていた枕を高く掲げて言った。


「ソフィ様!

 枕投げを致しましょう!」

「枕投げ?」

「はい!

 お泊まり会の醍醐味です!

 って、リタも居たのね。

 やる?」

「俺はいいよ。

 明日、早起きしてジーク様に、こっちの状況を伝えて来たいから。」


リタはそう言うと、「おやすみ。」と一言告げ、飲み終えたラムネの瓶を持って部屋を後にした。


リタの背を見ながら、リナさんが言った。


「前はこういう時、真っ先に遊ぶようなやつだったのに、最近はソフィ様たちのことばっかり。

 自分のことより大事なものが出来たっていうのは、お姉ちゃん的には嬉しいけど、でも、遠くに行っちゃったみたいで、私的には少し寂しいかな。」


悲しそうな顔をするリナさんを元気づけようと、私はリナさんに向かって、近くにあった枕を投げつけた。

顔面に当たり、「ぶふぁ!」と変な声が出た。


「ソフィ様…、やりましたね!

 仕返しです!

 二刀流奥義・二段枕ハンマー!」

「もぶぁっ!」


リナさんの一撃は、いやニ撃は、とても重かったわ。


こうして夜は更けていった。

『教えて!レミアちゃ〜ん!!』


はいは〜い!

どうも皆さ〜ん、お疲れさま〜!

レミアで〜す!


第8回目の今回は、作中で唐突にソフィちゃんが言った「世界に一つしかない王族家系」とはどういうことかについて解説しま〜す!


これは前回の『教えて!レミアちゃ〜ん!!』コーナーの続きのような話になります。


ネシヤ三陸戦争終戦後、この戦争の元凶となった国々が王政であったことから、もうこのような過ちを犯さないために、十二神獣の鼠の席 (十二神獣統括者) の命令により、王政が廃止され、全ての国で王族や貴族といった身分が消滅しました。


また、独裁政治や一つの家系で国を治めることがないように、国政を担う者は5年置きに交代せねばならず、また、その際には、前任者の親族や友人などは新たな国政を担う者に立候補することはできないといった決まりを作りました。


その結果、身分は上から順に「魔法の女神」→「十二神獣」→「その他」となりました。


なら、なぜヴィクトリア王国を建国することが許されたのでしょうか。


それは、まあ、簡単な話です。

ただただ、功績が讃えられただけです。


その身を賭して戦争を止めたレフィーリアなら、十二神獣の大半に友人として認められたレフィーリアなら、それまでに存在した有象無象の王族のような過ちを犯すことはないだろうと、鼠の席は判断したのです。


初めのうちは、元王族や元貴族の人々から、ありもしない噂を立てられたり、ちょっかいを出されたりしたそうですが、レフィーリアやその子孫たちの献身的な行動によって、ヴィクトリア王国は次第に世界に認められていき、建国から約1000年経った今では、世界中の人々から敬われる王族となりました。


現在の身分は上から順に「魔法の女神」→「十二神獣」→「ヴィクトリア王国の王族」→「ヴィクトリア王国の貴族」→「その他」となっています。


そのため、「ソフィアリス・ヴィクトリアナ」が国に居るという情報だけで、まあまあ大規模なパニックが起こってしまったわけなんです。


そういうわけなんです!


え〜、次回は「無意味だった。」だそうで〜す。


ハクシスの書の真実が遂に?!


お楽しみに〜。


・・・王族が出す気品に溢れたあのオーラを私も出してみたいな〜。

まあ、私、王族じゃないから無理だろうけどね〜。

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