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転生女神ノ救世譚  作者: X-PICA
第二章 学術国家ハクシス編
11/12

第11話 姉妹を契る耳飾り

ハクシスの片隅には綺麗な花畑が存在する。

私はその近くの切り株に座り花冠を作っていた。

すると、どこからともなく女の子が現れ、私に言う。


「ソフィさま、わたしもはなかんむりほしい!」

「いいよ。

 ちょっと待っててね。」


私が花冠を作り始めると、女の子はそれを凝視する。

完成すると、花冠を頭に乗せてあげた。


「これでいい?」

「うん!

 ありがとう、ソフィさま!」


女の子はそう言うと、友達のもとへと走って行った。



エレーラ大陸から人々が転移して来て、1ヶ月半が経った。

怪我の治療も大体終わり、彼らの居場所が必要だと思った私は、ハクシスを治める代表者に掛け合って、使われていない土地の一部を貸してもらった。


綺麗な花畑が広がるその土地に、転移して来た人々、計500人が住めるほどの巨大な家をハクシスの建築家たちに用意してもらい、住まわせた。


私とトワレナとマタローもそこで暮らすようになった。


土地の借地代と家の建築代は、まあ、莫大な金額になったわ。

でも、当時の私は一文無し。

請求されても、払えない。

だから、私がヴィクトリア王国に帰った後、ハクシスへお金を送ることになったわ。


齢7才にして、人生初の借金を経験したのよ。

凄いでしょ?

でも、当時の私はお金のことなんて分からなかったから、そこら辺のことは諸々トワレナに任せたわ。


言っとくけど、もうちゃんと払ったわよ?

私は義理は返す主義だもの。


あの日以来、空間の歪みは発生せず、平和な日常を送っていた。


この頃の日課は花冠作り。

一度暇つぶしに花冠を作っていた時に、たまたま通りかかった女の子に「欲しい!」と言われ、あげたところ、その話が瞬く間に広がり、私の花冠をもらいに来る4、5歳くらいの女の子が続出した。


当時の私は自分の作った花冠を褒めて貰えるのが嬉しくて、ノリノリで作ってあげていたのだけれど、今になって思うと、若干、大人の差金によって私のもとへ来た子もいたように思うの。


だって、私が作った花冠よ。

それだけで価値が付く。

売れば良い値がつくのは間違いない。


大人からすれば、金のなる木だもの。


そんなことは知らぬまま、私はたくさんの花冠を作ってたわ。


トワレナは自慢の料理で人々の心を鷲掴みにした。

『料理の女神』なんて言われてたわ。

本人はそう言われると、謙遜しながら恥ずかしがってたけれどね。


マタローは、この転移者居住エリアのマスコットキャラクターになっていた。

男の子たちと仲良く遊んでたわ。

マタローは遊んであげてるつもりみたいだったけれど、実際は遊んでもらってる感じだったわね。


私たちはこんな風に、転移して来てしまった人々が悲しくならないように努めてたわ。


私たちが呑気な日常を歩んでいる一方で、リタとリナさんはというと、リナさんがリサさんのことを乗り越えたあの日からずっと、ジークのもとで特訓を受けていたわ。


リタはもう家族を失わないため、リナさんは遺跡での出来事のようなことが起こった時に、次こそは大事な人を守れるようになるため、それぞれ強くなりたかったみたいね。


強くなりたいなら、強い者から学べばいいということで、世界最強の存在に頼んで、特訓してもらっていた。


グザックさんは、まだ引きこもってたわ。


そんな感じでそれぞれの日常を送っていたわ。


あまりにも楽しかったものだから、ついうっかりしてたのよね。


私、一時的に忘れてたのよ。


ここがエレーラ大陸じゃないってことを。


あなたも知ってるでしょう?

レリーヤ大陸には雨季と乾季があること。


この頃は兎の月中旬。

例年通りなら、既に雨が降り続いてる時期のはず。

この年は、降り始めが遅かったのよ。


序盤の出来事があった夜から、ハクシスは激しい豪雨に見舞われた。


「ト、トワレナ!

 空から水が降ってるよ!」


私は大興奮だった。


否、転移者居住エリアにいる人々は皆、大興奮だった。


エレーラ大陸は世界で二番目に雨が降らない大陸。

ゆえに、雨は滅多に見ることはできず、私はこの時、生まれて初めて雨を見たのよ。


私より小さい子たちはもちろん、私と同じように人生初の雨だし、大人たちも十数年ぶりの雨だったもの。

興奮せずにはいられなかったわ。


私たちが歓声を上げていると、転移者居住エリアの安全を守るために在中している警備兵が言った。


「皆さんはエレーラ大陸の人々ですので、ご存知ないかもしれませんが、雨季のレリーヤ大陸の雨は人を殺せる雨です。

 外出は大変危険ですので、今日の夜からしばらくの間、外へは出れないと思って下さい。」


『人を殺せる雨』という聞いたこともないパワーワードに私たちの歓声はピタリと止んだ。

外の雨の音がよく聞こえたわ。


それから数週間、雨が降り続けた。

朝から晩まで止むことなく降り続けた。


久々にソルラの光で目が覚めた。

目を擦りながら窓の外を見ると、


「は……?!

 水の中……?!」


そう。

家が水の中に沈んでいた。


ハクシスはレリーヤ大陸の中でも、特に標高の低い場所に位置しているため、雨季になると周囲から雨水が流れて来て、水の中に沈んでしまうのよ。


屋上から外を眺めるとずっと遠くまで水に沈んでいた。

リタたちの家がある国の中心地もきっと沈んでいるはず。

私はそう思った。


「ト、トワレナ。

 雨って凄いね。」

「凄いですよね。

 わたくしは巨大樹時代からずっと経験してますが、未だに慣れませんからね。

 しかし、国が一つ沈むほどとは。

 この雨、こんなに強かったのですね。」


トワレナも唖然としていた。


「これは、どうやって移動すれば良いのでしょうか…。」


トワレナがそう言うと、遠くから人1人乗れる程度の小さな手漕ぎ舟に乗った警備兵が現れた。


「おはようございます。

 早起きですね。」


警備兵は私たちの前で止まった。


手漕ぎ舟の後ろに手漕ぎ舟が繋がれ、その手漕ぎ舟にまた手漕ぎ舟が繋がれ、というのがずっと続いていた。


「手漕ぎ舟を30隻ほど用意致しました。

 水が無くなるまではこれを使って移動してください。

 数が少ないかもしれませんが、これからもっと増やしますので安心してください。」


警備兵はそう言い残すと、この舟に対しての説明なしに、さっさと漕いで行ってしまった。


私たち全員分用意するとなると、その数500隻。

つまり、残り17往復。

急ぎたくなるのも分かる。


「これ、どうやって乗ればいいの?」

「わたくしも、分かりません。」

「乗るの失敗して、落ちたら濡れるよね?」

「それはそうですね。」

「・・・乗りたくない。」

「でも、乗らなきゃ移動出来ませんよ?」

「分かってる。」


遠くを見ると、黒い影が水上を行き来している。

その全てがこの手漕ぎ舟を使って移動している人々なのだと察した。


「ハクシスの人って、意外と運動神経高めだよね。」

「文武両道ですね。」


私は諦めて手漕ぎ舟に乗ってみることにした。


舟を手で押さえて、右足を乗せる。

凄くぐらついた。


「ト、トワレナ〜…。」

「ちょ、ちょっと待ってください…。

 お、おお。

 バランスを取るのが…、難しいですね…。

 ど、どうやって座れば…。」


トワレナも乗るのに苦戦していた。

舟の上で、まるで産まれたての子鹿のように、足がプルプルしていた。


結局、乗ることができず、一旦陸地へ戻った。


「これは乗ってから座るよりも、座ってから乗った方がいいかもしれませんね。」


私はトワレナが言った通りに、一旦座った後、体をずらすようにして舟に乗った。


結果、乗れた。


「トワレナ!

 乗れた!」

「さすがですね…。

 あ!

 わたくしも乗れました!」

「おお!」


私は舟に付属されていた櫂を用いて、水を掻いた。

ゆっくりと前に進み始めた。


「わあ!

 凄い!

 進んだ!」

「こ…、これは…。

 中々に…、体幹が…。」


しばらく練習すると、だいぶ乗りこなせるようになった。


ふと下を見ると、花畑が水の中に沈んでいるのが見えた。

私はいつもの日課、花冠作りが出来ないと悟ったわ。


「今日は何か別のことやるしかないか…。」


私はハクシスに来てハクシスの書の解読のお手伝いを始めてからというもの、長らく出来ていなかった散歩をすることにした。


とは言っても、国が水に沈んでしまっていたから、手漕ぎ舟で水の上を進むことになるの。

だから、正式には「散歩」ではないけれどね。


朝食後、私はマタローを膝の上に乗せて、散歩を開始した。


マタローは水が苦手みたいで、膝の上でずっとブルブル震えてたわ。

でも、私と一緒に散歩に行きたいという思いも強かったから、怖がりながらもついて来てくれた。


また、ハクシスの人たちが混乱することを防ぐために、帽子を被って、その中に髪を入れ、サングラスをかけて、私だと見抜けないように変装した。

水の上で大混乱なんか起こったら、大惨事になるのは目に見えたもの。

帽子やサングラスはトワレナが用意してくれた。

ありがたかったわ。


でも、サングラスはちゃんとしたのにしてほしかったわ。

何故って?

パーティー用の星の形を模したサングラスだったからよ。

はたから見たら、パリピよ。


まあ、これしかなかったみたいだから、妥協するしかなかったけれどね。


もちろんマタローにもかけたわよ。

私とお揃いになれて喜んでたわ。


私たちはまず、商店街に行くことにした。


商店街には、あの祭りに日に出会ったチョコバナナのおじさんやかき氷のおじさんたちのお店があるの。


トワレナはよくその商店街に買い出しに行っていたのだけれど、私は行ったことがなかった。

あの人たちが普段は何を売っているのか、何屋さんの人間だったのか、私はそれが無性に気になった気になっていたのよ。


私は商店街に向かって舟を漕ぎ出した。


しばらく進んだところであることに気づいた。


それはこの国の建物や道が、ほとんど赤茶色のレンガで作られていた理由よ。


あのレンガはリタたちの家のお風呂で気づいたとおり、水に強いレンガだった。

つまり、水に沈んでしまうハクシスにとって、あのレンガは最も適した素材と言えるのよ。


あとから知ったことだけど、レリーヤ大陸の家屋は木製であることが多いらしいの。

でも、ハクシスだと木製の家は腐ってしまう。


この赤茶色のレンガは、そうならないためにルシゼラが開発した特殊なレンガらしいわよ。


詳しいことはよく分からないけど、およそ築2000年のハクシスの大図書館を形作ってるあの大量のレンガが、約2000年もの間水に晒され続けて尚、一つも欠けたり溶けたりしていないところを見るに、普通は使われない何かしらの素材が含まれてるのは確かだと思うわ。



ハクシスの大図書館を囲むようにして存在する国の中心地。

そこは数週間前に見た景色とは様変わりしていた。


「レンガの街」が「水の都」と化していた。


「こんなに変わるものなんだ…。」


あまりの変わりように、私は言葉を失った。


商店街に着くと、私はチョコバナナのおじさんとかき氷のおじさんのお店を探した。


トワレナが言うには結構分かりやすい位置にあるらしいのだけれど、そう簡単には見つからなかったわ。


ちなみに商店街も例に漏れず水に沈んでいたの。

だから、どのお店も建物の2階を使って店を開いていたわ。


しばらく商店街をぐるぐる巡っていると、アクセサリーショップ野前で、見覚えのある顔を見つけた。


「リナさん!」


私の声を聞いたリナさんが私の方を向く。

そして、やや困惑した声で言った。


「だ、誰?

 まさかソフィ様?」

「うん。

 パリピソフィだよ。」


変装が完璧過ぎて、私が誰だか一瞬迷ったらしい。


「凄いサングラスですね。」

「トワレナが言ってた。

 『これしかなかった。』って。

 ちなみに、頭を思いっきり振ると…、」


私とマタローは頭を振る。

すると、


「このように光ります。

 パリピカソフィだよ。」

「ふふ…、あはははは!!」


私とマタローがかけているサングラスが金色に光るのを見て、リナさんがツボった。

よほど滑稽に見えたらしいわよ。


リナさんが落ち着いてきたところで、私は訊いた。


「リナさん、何か買うの?」

「はい。

 実は、あと少しで私の『ご友人』の誕生日なんです。

 だから、誕生日プレゼントを買おうと思いまして。」


リナさんは私に、綺麗な赤いリボンがついた箱を見せた。

綺麗に包装されており、プレゼント用だとすぐに分かった。


「へえ。

 喜ぶといいね。」

「そうですね。」


リナさんは、何やら意味ありげにニヤニヤしていた。


「そういえば、ソフィ様。

 来週の1の位が0の日、空いてますか?」

「うん。

 私はいつでも暇だよ。」

「でしたら、1ヶ月半ぶりに大森林のツリーハウスに来てくれませんか?」

「いいよ。

 あ…。

 でも、安全?

 魔物いない?」

「修行がてら、私とリタで狩り尽くしました。

 ジーク様曰く、元の生態系に限りなく近いそうですよ。」

「なら、安全だね。」


空間の歪み発生後のジークフリード大森林では、エレーラ大陸から転移して来た魔物たちが我が物顔で闊歩していた。

そんな大森林だったなら、きっとトワレナが許してくれなかったでしょうけど、元の生態系に限りなく近いなら、きっと大森林に行くことを許してくれる。

私はそう思ったわ。


それにしても、凄いわよね。

転移して来た魔物、とんでもない数だったのよ。

ジークが疲れるくらいにはね。

それを約1ヶ月半で狩り尽くした。


2人の努力が垣間見えるわね。


「買いたいものは買えたし、そろそろお暇しますね。

 さようなら。

 あっ!

 トワレナさんとマタローも連れて来て下さいね。

 ジーク様がお会いしたがってたので。」


リナさんはそう言うと、舟を漕いで、去って行った。


「さて、私たちも行こうか、マタロー。」

「キャン!」


私たちもアクセサリーショップをあとにし、チョコバナナのおじさんのお店とかき氷のおじさんのお店を探すため、再び舟を漕ぎ出した。


しばらく回ると、2人のお店をそれぞれみつけた。


チョコバナナのおじさんの方は八百屋、かき氷のおじさんの方は肉屋だったわ。


チョコバナナのおじさん改め八百屋のおじさんと、かき氷のおじさん改め肉屋のおじさんからはそれぞれお土産をもらえた。


私は帰宅後、それらをトワレナに渡した。


散歩をするはずだったのに、結局、おつかいをした気分だったわ。



リナさんに呼ばれた日、私とトワレナとマタローはツリーハウスの玄関の前にいた。


「リナさん、何で私を呼んだんだろうね。」

「はい。

 何故でしょうね。」


トワレナは道中ずっとニヤニヤしていた。


きっと最初から分かっていたのでしょうね。

リナさんが何故私をツリーハウスに呼んだのかを。


私は扉を開け、中へ足を入れる。


その瞬間ーー


ーーパンパパン


と言う何かが弾けるような音が鳴り響いた。


私は驚いて目を瞑る。

ゆっくり目を開いていくと、床に細長い紙や小さい紙が散らばっているのが見えた。


音の正体はクラッカーだった。


「「「「ソフィ (様) !お誕生日おめでとう!」」」」

「キャン!キャン!」


ジーク、トワレナ、リナさん、リタ、そしてマタローの祝ってくれてるかのような鳴き声で気づいた。


この日は竜の月30日目。

私の誕生日だったのよ。


「私の誕生日、今日だったんだ…!」

「そうですよ。

 忘れてたんですか?」

「いや、私は忘れないよ。

 ただ今日が何日だったか知らなかっただけ。」


リナさんからの問いに答えると、たくさんの料理が並べられたテーブルの特等席に座らせられた。


「凄い料理!」


料理は私の好きなものばかりで埋め尽くされていた。

私の好物をここまで把握しているのは、このメンバーではトワレナのみ。


そのことと、トワレナがずっとニヤニヤしていたことが繋がった。


「この料理、トワレナが作ったんだね。」

「気づきましたか。

 さすがですね。

 ソフィ様に気づかれないように、こっそりと作って、リタさんとリナさんに持って来てもらいました。

 わたくしにできるのはこれくらいですから、その…、わたくしからの誕生日プレゼントだと思ってください。」

「うん。

 ありがと、トワレナ。」


私がトワレナにお礼を言うと、リタが私の元へとやって来た。


「俺もプレゼントあるんだけど、その…、俺、女の子が何貰ったら嬉しいとか分かんなくて…。

 気に入らなかったら、捨てても良いから。」


リタはそう言うと私にプレゼントを手渡した。


小さな木の杖と大きなシルクハットだった。


「これ、何?」

「手品セット。」

「手品セット?」

「ほら、お前魔法使えないだろ?

 だから、手品が出来れば魔法を使う気分を少しは味わえるんじゃないかって思って。」


私はシルクハットを杖でつついてみた。


すると、中から青い鳥が一羽出て来た。


「おお!

 凄い!」

「ほんとうは白い鳥が出て来る帽子だったんだけど、青い鳥が出て来るように作り変えてもらった。」

「幸せの青い鳥だね。

 ありがとう!」

「喜んでくれたなら良かった。」


リタが自分の席に戻ると今度はリナさんが「今度は私の番だね!」と言って、ニヤニヤしながら私のもとへ来た。


「私からのプレゼントはこれです!」


リナさんはそう言うと、赤いリボンがついた箱を私に手渡した。

それはあの日、アクセサリーショップの前で、私に見せてくれた箱だった。


「これ、私のためのやつだったんだ。」

「はい!

 開けてみてください!」


リナさんに言われ、私は箱を開ける。


中にはリナさんがしているものと同じ耳飾りが入っていた。

ただ、色は水色ではなく薄い桃色だった。


「これ、リナさんのやつの色違いだ。」

「はい。

 私のこの耳飾り、本当はリサに渡すつもりで用意した誕生日プレゼントだったんです。

 それで、渡したあと半分こして、それぞれ一個ずつつけようと思ってたんです。

 でも、それは叶いませんでした。

 なぜなら、渡そうと思っていたその誕生日の日が私とリサの2人で遺跡探索に行った日だったからです。

 私はリサの死を受け入れられなかった。

 だから、リサの面影があるものを探した。

 リサを近くに感じたかった。

 でも、リサの私物を見てしまうとフラッシュバックが起こってしまう。

 結果、行き着いたのが、この耳飾りでした。

 この耳飾りをしていれば、私はリサのことをあまり思い出さないまま、リサを感じることができたんです。

 長くなりましたけど、言いたいことは、その耳飾りは私にとって、とても思い入れのあるものなんです。

 姉妹の証…みたいな?」

「それって、私と姉妹になりたいってこと?」

「ち、違います!

 私じゃメローネフィリム様のようにはなれませんよ。

 それに、私の兄弟の席はリサとリタしか座れませんから。

 ただ私はソフィ様と友達以上姉妹未満の関係になりたいと思ったので、親友の証としてそれを受け取ってもらえませんか?」


私は耳飾りを手に取り、言った。


「分かった。

 リナさんとの関係を『ご友人』から『親友』へレベルアップさせる。」

「本当ですか?

 ありがとうございます!」


リナさんが喜んでいると、リタが呟いた。


「重すぎるって…。

 久々にドン引きした…。」

「リタ、なんか言った?」

「いや、なんも、言ってないっす。」

「あっそ。」


リナさんはそう言うと、ポケットから何かを取り出した。

それは四角い形をしていて、一部に鋭く尖った針が付いていた。


「それ何?」

「ピアッサーです。」

「ピアッサー?」

「はい。

 体にピアス用の穴を開ける道具です。」

「穴?!」


私は驚いて大きな声が出た。


そう。

この耳飾りはピアスの一種。

つまり、耳に穴を開けなければ付けることが出来ないのよ。


若干、恐怖心に煽られ始めていた私にリナさんは言った。


「あー、痛いのが嫌でしたら、もう少し大きくなってからでもいいですよ。

 別に今すぐにつけてほしいというわけではないので。」


リナさんのこの言葉が、私には子供扱いしているように聞こえた。

誕生日を迎え、一つ歳を取ったというのに、それは如何なものかとね。

だから子供らしく、


「する!穴開ける!」


と、言ってしまった。


リナさんはニッコニコの笑みを浮かべて言った。


「分かりました。

 私も確か8歳の誕生日の日に、リサと一緒に開けたんですよ。

 私たちとお揃いですね。」


強がったところで、穴を開けるのに対する恐怖心が消えるわけではない。

今開けるのが正解だともはっきり言って思ってなかったわ。

でも、お母様もメロ姉もピアスの穴を開けていたことから、結局、今開けようが開けまいが最終的に開けることになるのは確実だったのよね。

だから、覚悟を決めることにした。


「ひと思いにやっちゃってください!」

「はい!

 ひと思いにやっちゃいますね!」


リナさんがピアッサーを私の耳たぶに近づける。

そして、本当に色んな意味で恐ろしいことを言い放った。


「アハハ、なんか私の手でソフィ様の体に穴を開けるんだと思うと、緊張と興奮で手が震えてきますね。

 グヘへ。」

「へ?!

 あの、痛くしないでよ?」

「はい。

 大丈夫ですよ。」


ピアッサーの針が耳たぶに触れた。

その瞬間ーー


リナさんがピアッサーを落とした。


私は驚いて、「ギヤアアアアアァァァァァ!!!!!」と叫んだ。


「ごめんなさい。

 よくよく考えると、私、王族の耳たぶに穴を開けるんだなって気付いてしまいまして、少し手が滑りました。」


リナさんはピアッサーを拾うと、震える手で再びピアッサーを私の耳に近づけた。


「さあ、もう一度やりますよ!」


冗談じゃない!

そう思った私は全力で首を横に振った。


「じゃあ、自分で開けます?」


私は首を横に振る。


「じゃあ、開けるのやめます?」


私は首を横に振る。


「じゃあ、どうするんですか?」


私はトワレナを見て、「ト、トワレナ~。」と助け船を求めた。


「わ、わたくしですか?!」

「うん。」

「む、無理ですよ。

 ソフィ様の体に穴を開けるだなんて。」


トワレナが拒否すると、リナさんが言った。


「大丈夫ですよ、トワレナさん。

 穴は塞がりませんけど、傷は直ぐに塞がりますから。

 ソフィ様の標準の意匠が変わるだけです。

 私の代わりに、ひと思いにやっちゃってください。」


リナさんはしょんぼりしていた。

私に拒否されたのがよっぽど悔しかったらしいわ。


トワレナはリナさんが差し出したピアッサーを受け取ると、私に近づいて言った。

 

「ソフィ様がわたくしに穴を開けられる覚悟を決めているなら、わたくしもソフィ様に穴を開ける覚悟を決めなければいけませんよね。」


トワレナは私の耳たぶにピアッサーの針を近づけて言った。


「では、いきます!」

「うん!」


ーーパチン


という音が鳴り響いた。


耳たぶに一瞬大きな痛みが走ったが、直ぐにじんじんという小さな痛みに変わった。


私は何故かは分からないけれど、自分が少し大人になったように感じた。

『教えて!レミアちゃ〜ん!!』


はいは〜い!

どうも皆さ〜ん、お疲れさま〜!

レミアで〜す!


第11回目の今回は、雨季のハクシスについて解説しま〜す!


レリーヤ大陸には雨季と乾季が存在し、大体虎の月下旬辺りから蛇の月上旬辺りまでの間に雨が大量に降ります。

もちろん、ずっと降り続けているわけではなく、たまに止むことがありますが、その日に外へ出ると、作中でソフィちゃんが目にしたような景色を見ることができます。


ハクシスは八方位全てを山や森林、丘などの標高が高めの地形に囲まれているため、地面で吸収できなかった雨水が流れてきて、少しずつ溜まっていくのです。

そして、最終的に水溜まりの中に国が沈みます。


また、レリーヤ大陸の建造物は基本的に木製が主流ですが、ハクシスで木製の家屋にすると、雨水で腐ってしまうため、ハクシスではルシゼラが開発した赤茶色の特殊なレンガを用いて建築します。

そのため、ハクシスは建物も道も全部が赤茶色という特徴的な街並みとなっているのです。


ちなみに、雨季の移動手段は主に手漕ぎ舟(地球でいうカヌーみたいなもの)ですが、中にはそれを使わず自力で泳ぐ「海パン野郎」や「ビキニのお姉さん」もいるみたいですよ〜。

とんだドMですね〜。


え〜、次回は「帰路への一歩」だそうで〜す。


もしかして、帰還編始まっちゃう?!


おたの…、え…、まだ始まらない…?

あー、そ、そうですか〜。

ごめんなさい。


あ……、お、お楽しみに〜。


・・・ちょ、どうするんですか、この空気。

地獄じゃないですか。

タイトルが「帰路への一歩」なのに、なんで帰還編始まらないんですか?

おかしいじゃないですか。

大体ですねぇ、作者がやるべきことを私にやらせている身なんですから、もう少し情報をですねぇ………グチグチ………グチグチ………。


ーーーーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

ーー


※追伸


投稿ペースが遅くて申し訳ございません。

こんな自己満小説を読んでくださっている皆様にはとても感謝しております。


現在、少しずつ書き進めてはいるのですが、どうにも納得のいくものが出来上がらず、試行錯誤している状態です。

原因と致しましては、物語の大まかな道筋は決まっているのですが、細かな部分は未だ決め兼ねているというところにあります。

なので、一度物語全体を整理しつつ、伏線の張り方やストーリーの順序、キャラクターの能力(特にソフィ)などについて一度調整したいと思います。

そのため、次回はいつになるか分かりません。

始まったばかりなのにダメダメですね、僕は。


今年中には投稿したいと思いますが、どうなるかは分かりません。

大変申し訳ありませんが気長にお待ち下さい。


最後に、ここまで読んでくださりありがとうございます。

これからも『転生女神ノ救世譚』をよろしくお願いします。


by 作者

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