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ラッキースケベって言うのかこれ!?

 ダンジョン配信用の機材を借りてすぐ、マシロさんとクロさんを連れて家に引き返すことになった。

 理由はと言えば。


「シロはお腹がすいたわ」


 これである。

 あれだけ食べたのにもう燃費切れしたらしい。

 時間的にもう夕方ということもあり、ダンジョン配信を行うのは明日からということになった。


 という訳で今日はお祝いだ。

 帰り道に商店街のお肉屋さんで買ってきたアメリカ産の厚切り牛肉。

 こいつをフォークでザクザク刺しまくった後、取り出したるは大容量ペットボトルのコーラ。

 牛肉を袋に入れた後にコーラをたっぷり注ぎ、空気を抜いて口を縛る。

 そのまま三十分放置。これでお肉が和牛のように柔らかくなるのだ。

 安い肉でも料理方法次第でいくらでも美味しくなるものである。


 待ってる間に付け合せも作ってしまおう。

 皮を剥いたニンジンを一口サイズに切りそろえて行く。

 角を取って丸っこくしていく、オリーブ剥きと呼ばれるやり方だ。

 それを鍋の中に放り込んで、ニンジンがかぶるくらいこ水とバターと砂糖をドサッと投入。

 火にかけて沸騰するのを待ちながら次へ。


 ジャガイモ。これは皮を剥かずにくし切り。

 小麦粉を薄くはたいたら一旦取り分けておいて、違う鍋で油を加熱。

 温度の目安は菜箸を入れて気泡が出るくらい。温め終えたらジャガイモを一つずつゆっくり落としていく。

 揺らしすぎて衣が取れないように静かに優しく。そうする事で出来上がりのほっくりサクサク感が強くなるのだ。

 揚げ終わったらザルにあげて塩コショウ。これも熱いうちにやるのがポイント。ザルをざっと振ってしっかり味をなじませてやる。

 揚げたてのジャガイモのなんとも言えない良い香りが台所に広がって行くのが楽しい。


 ここでニンジンの鍋が沸騰したので丁寧に煮詰めていく。

 あまり転がし過ぎると崩れてしまうから要注意。

 ゆっくりコロコロしてやるとバターの甘い香りが漂って来た。なんとも食欲を刺激する匂いだ。

 そろそろ良い頃合かな、と思いながらふと背後の時計に目を向ける。


 真後ろでヨダレを垂らしてガン見していたマシロさんとガッツリ目があった。


「うわぁ!?」

「ミナト、まだなのかしら。シロはお腹がすいたわ」

「いま作ってますから待っててください!」


 めっちゃビックリした。

 ほんとこの人、黙ってれば美少女なのに……残念な人だ。

 と言うかドレスに匂いが着いたら困るような気もするんだけど……大丈夫なんだろうか。


「あの、着替えたりしなくて良いんですか?」

「愚問ね。シロはこれ以外の服を持っていないわ。それともここで全裸になれと言うのかしら?」


 あ、そうか。そりゃ着替えなんて無いよな。


「……なるほど、一理あるわね。仕方ないわ」


 って、ちょっと!?

 何でマシロさん、スカートをゆっくりめくりあげてるの!?

 僕何も言ってないんだけど!?


「ま、マシロさん!?」

「よく考えたら家賃も払えないのだし、ここは体で支払うべきかしらね。過剰な報酬だと思うけど……まぁ良いわ」

「……ごくり」


 そんなことをいうマシロさんの足につい目が吸い寄せられてしまう。

 うわぁ、マシロさんの足、すっごい綺麗だ。

 黒いヒラヒラしたドレススカートの下、マシロさんの足は健康的にむちっとしてるのに色が白くて、白いハイソックスのゴムが太ももにくい込んでて柔らかそうで……

 ていうかもうちょっとで見えちゃ行けない奥の方まで見え……


「シロ」


 いきなりマシロさんの後ろからクロさんが顔を見せた。


「はひゃぁいっ!? ごめんなさい!!」

「はい? 何でミナトさんが謝っているのか分かりませんが……シロ、邪魔をしてはいけませんよ」

「それもそうね。食事の時間が遅れるのはシロも本意では無いわ」


 少しも動揺してないマシロさんはそう言うと、何事も無かったかのようにリビングに行ってしまった。


 あ、危なかった。何がとは言わないけどあと十秒遅かったら見えてしまうところだった。

 別に嫌なんかじゃないしむしろ見たかったけど、何だかそれはダメな気がする。

 自分から見せてくれたんだから別に良いのかもしれないけど、いやでもそれは……


「ミナトさん、見たかったですか?」


 そんな葛藤(かっとう)をしていると、気が付けばクロさんの顔が目の前にあった。

 それはもうキスでもしそうなくらい近くで、穏やかな微笑みを浮かべて。

 やべぇ、殺されるかも、これ。


「な、何をですか!? 僕は別に残念だなんて思ってないですよ!?」


 慌てて離れようとすると、僕の頭をクロさんがガッシリと捕まえて。


 そのまま、ぽふりと顔が埋まった。


 ……あれ? これ、もしかして、いま。

 僕の顔、クロさんの胸に……!?

 なんかすっごい柔らかいし温かいし良い匂いが!!


「うふふ。もっとすごぉいもの、あとでクロが見せてあげますから。今はガマンしてください。ね?」


 抱きしめたまま、耳元で囁かれる。その甘くドロリとした言葉に、逆に血の気が引いて冷静になってしまった。


 見たい。すごく見たい!

 でも、これ絶対ダメなやつだ!


「そ、そろそろ出来上がりますから!向こうで待っててください!」

「あら。お手伝い出来ることはありませんか?」

「今は無いです!」

「わかりました。よろしくお願いしますね、ミナトくん」


 にっこりと女神のように微笑むクロさん。

 でもよく見ると、その目は水底のように暗く光が灯っていない。

 それに何だかドロドロに濁っているような……


「うふふ……それでは、また後で」


 あとで、僕はどうなってしまうんだろう。

 楽しみなような怖いような……いや、普通に怖いな、うん。


 とりあえず、漬けておいた牛肉をそろそろ焼くことにしよう。

 あーくそ、顔が熱い。胸もドキドキして、なんて言うか。


 女の子って凄いなぁ、うん。

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