表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/7

とんでもないものを拾った

 美少女二人がなんかすげぇ勢いでご飯食べてる。


 自宅のテーブル。所狭しと食事が置かれている中。

 向かって右には白いドレスの女の子。

 一心不乱にパンとウインナーを食べている。

 向かって左には黒いドレスの女の子。たった今五杯目のスープを飲み干したところ。

 既に二人で僕の三日分の食料を食い尽くしてるけど、まだ食べるんだろうか。

 そろそろ備蓄も無くなりそうなんだけど。


「「ご馳走様でした」」


 おお、あの量を完食した。凄いなこの二人。


「とても美味しかったです。ありがとうございます」


 黒い女の子が微笑みかけてくる。

 その姿があまりにも可愛すぎて思わずドキッとした。

 やっぱり人形みたいに顔立ちが整ってるな。


「シロに献上するには粗末すぎる代物だったけど、食べられないほどじゃなかったわ」


 おい白いの。なんでアンタはそんなに偉そうなんだ。

 黒い子と同じくらい可愛いのに態度は残念すぎる。

 あれ、ていうか。


「君達は双子なの?」


 よく見たら二人とも同じ顔をしているな。印象は全く違うけど。


「そうです。申し遅れました、クロはザクロという名前です。隣はマシロといいます。よろしくお願いいたします」


 丁寧に頭を下げてくるザクロさん。それに比べて偉そうに胸の下で腕を組んでいるマシロさん。


「シロよ。跪きなさい」


 嫌だよ。何言ってんだこの子。


「僕はタチバナミナト、よろしくね。それで、なんであんな場所に?」


 今の日本で行き倒れとか普通じゃない。

 きっと何かとんでもない事情があるんだろう。

 気安く聞いていいのか分からないけど……せっかくの縁だし、何か手助けをしてあげたい気持ちはある。


「実は全財産をシロがギャンブルで使い込んでしまいまして」

「倍にして返す予定だったのに、おかしいわ」

「……全財産? なんで?」

「それが……」


 途中で言い淀んでマシロさんに目を向ける。

 その視線を受け、マシロさんは物凄いドヤ顔で両拳を握りしめて見せた。


「地球がシロに囁いたの。シロなら勝てるって」


 わかった。こいつ、ダメな奴だ。

 早く何とかしないと。


「シロがギャンブルに負けたのでクロ達は家を追い出されたのです。それから一ヶ月間、手持ちのお金だけで何とか凌いでいたのですがついにお金が尽きたのです」

「そうだったんだ……ザクロさん、大変だったね」

「シロも大変だったわ。労りなさい」


 うるせぇ。お前は自業自得だろ。


「ところでミナト様は冒険者なのですか?」

「え、なんで?」


 特に何も話してないのになんで分かったんだろう。

 いや、正確には冒険者見習いなんだけど。


「お会いした時に剣を持ってらっしゃいましたので」

「あ。なるほど」


 現代日本で剣を持ってる人なんて冒険者か危ない人に二択だしな。


「まぁ一応冒険者……見習いだよ。まだライセンスを持ってないし」


 自分の言葉に思わず苦笑いしてしまう。

 冒険者として配信を行うにはライセンスが必要だ。ちなみに僕が持っているのは仮免である。

 危険を伴う仕事だし、誰でも配信できるようになったら事故が相次いでしまうから当然の措置だと言えるだろう。

 ちなみにダンジョンに入るだけならライセンスは必要ない。


「ライセンスを持っていない? あの、失礼ですがミナト様はおいくつなのですか?」


 不思議そうな顔で首を傾げるザクロさん。

 僕は思わず目をそらし、呟くように答えた。


「……十八」

「冒険者ライセンスは十五から取得可能だったかと思うのですが」

「あはは……ちょっと実戦がね」

「実戦って……まさかミナト様、ゴブリンが倒せないのですか?」

「うぐっ!」


 図星を突かれた思わず呻いてしまった。

 ザクロさんが驚くのも仕方ない。

 普通の人ならゴブリンなんて負ける方が難しい相手だ。

 何なら十歳の子どもでも倒せるかもしれない。その程度のモンスターである。


「ちょっと剣が苦手で……魔道具は高価で買えないし」


 魔道具は高い。火球を出す使い捨ての魔道具でさえ五万円はする代物だ。

 そんなもの、僕には手の出しようが無い。

 僕だってせめて銃があればゴブリンくらい倒せると思うんだけどなぁ。


「そうでしたか。パーティは組まれていないのですか?」

「……誰も相手してくれなくて」


 通常、冒険者はパーティと呼ばれる複数人のチームでダンジョンに潜る。

 でも僕は最初級のゴブリンも倒せないくらい弱いから誰もパーティに誘ってくれないのだ。

 もちろん自分から話しかけてみたこともあるけど、結果は全滅だった。


「それはまた……絶望的ですわね」

「つまりミナトはゴブリンにすら負ける究極雑魚なのね」

「そうだけど言い方!」


 究極雑魚で悪かったな!

 ちょっと語感が良いのが腹立つ!


「それでしたらミナト様。私達と一緒にダンジョンへ行きませんか?」

「え? 私達って、ザクロさんとマシロさん?」

「はい。三人でゴブリンを三体以上倒せば一人一体換算となります。そうすればミナト様もライセンスが取得できるかと」

「それはそうかもしれないけど……二人は冒険者ライセンスを持ってるの?」

「はい。武器を貸して頂ければゴブリン程度なら大丈夫かと」


 さらっと言われたけど、それって剣を持った僕より素手のザクロさんの方が強いってことだよね?

 それに自信ありげに腕を組んでるマシロさんも同じくらい強いのかもしれない。

 うーん……情けない話だけど、僕でもパーティを組めばそれなりに戦えるかもしれないな。


「それじゃあお願いします」

「はい。それでは早速ダンジョンに向かいましょう」

「シロの有能さにひれ伏しなさい」


 何かそういう事になった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ