恋愛アドバイスが全部自分に返ってくるお話
「絶対別れた方がいいって!」
「そうかなぁ……」
「だってお前のことを恋愛対象として見れないって言われたんだろ?それなのに別れたくないなんてのは明らかにおかしい。お前のことをキープしてんだよ!」
「でもキープしてるってことは新しい恋愛対象がいなければ、また仲良くできる可能性があるんじゃ。」
「何言ってんだよ……キープされてるってことはもう心はとっくに離れてるってことだ。心はテープと同じなんだよ、最初の粘着力は強くても離れる回数や時間が多くなればなるほど、粘着力は弱くなっていくんだ。そして最後は……」
「でもまだくっつく可能性だって!」
「あのな、親友だから言うけどよ。キープ状態の人間関係なんてのはもう粘着力ゼロの関係だと言ってもいいくらいのものだ。お前がどれだけ引っ付く努力をしても、あっちの埃まみれのテープはお前の粘着を拒否し続けるだけだ。」
「そう…だね。」
「ただ、こんな状況なのにあっちは別れを切り出してこない。」
「うん。」
「その理由として考えられるのは。」
「うん。」
「ずばり精神的に優位な場にいたいからだろうな。いつまでも付いてくるお前を犬か何かにでも思ってるんだろう。」
「そんな……」
「それに彼氏がいるっていう事実は便利だ。狙った獲物以外にはその事実で虫除けができるし、獲物には彼氏とうまくいっていないという相談から入れる。そして次の依代、いや、寄生先を見つけたらお前は捨てられる。さながらハリガネムシに寄生されたカマキリみたいにな。」
「寄生虫だなんて……」
「ああ、すまん。それは流石に言いすぎた。物の例えとしてだったが、よくなかったな。ごめん。」
「ううん。僕のために言ってくれてるのはわかってるから。」
「そうか。で、これからどうする?」
「ずっと悩んできたけど、やっぱりこの状況は僕もおかしいと思う。君に言われて確信を待てた。だから自分から変えてみせるよ、この状況を。」
「それがいいな。」
「ありがとうね、相談に乗ってくれて。」
「当たり前だろ?親友なんだからさ。」
「ほんと君だけはバシッと言ってくれるからいつも助かるよ。他の人は"まだ望みはある"とか"もう少し時間をおいて見てもいいんじゃない?"とか別れない方向を勧めてくることばかりだから。」
「まあそれが無難なアドバイスだからな。でも俺はお前にとって一番のアドバイスをする。だからいつでも相談してくれ。」
「ありがとう。そういえば、君の方はどうなの?初めての彼女とは上手く行ってるの?」
「べらぼうによ。もうすぐ一年半だからな。」
「そっか。僕の二年までもうすぐ追いつくね。」
「そうだな。」
〜〜〜〜〜〜〜
「久しぶり、ってほどでもないか。」
「うん、一週間ぶりだね。LINEでも話した通り、あのあとすぐに彼女と話し合って別れたよ。」
「そうかそうか、それはよかった。絶対にその方がお前のためになると思うぞ。」
「本当にね。あんな状態でいくらいても意味ないってことがよくわかったよ。まあそれでも辛いことに変わりはないけどね……」
「元気出せって。これから新しい旅が始まるんだ。気合い入れて歌ってけ!」
「……そうだね!よっしゃ、今日は歌うぞ〜!」
"僕は今でも好きなんだ、彼女のこと♪"
"でもお互いのことを思って別々の道を選んだの♪"
"あなたのことを知るたびにあなたじゃなきゃダメ♪"
"星の数ほど男がいれば星の数ほど女もいる〜♪"
「はぁ、歌った歌った。よし、新しく前向くぞぉ!」
「その意気だ!」
〜〜〜〜〜〜〜
「久しぶりだな。」
「う、うん。二週間ぶりだけど、大丈夫なの?」
「別れたことか?まあ、ほんと突然だったから悲しいというより驚いてるよ。」
「そっか。」
「でも実は嬉しさもあるんだ。失恋ソングとかよく歌ったじゃん?今までああいうの聞いても何にも思わなかったけど、やっとそういうの聞く人の気持ちがわかったって感じで、遂に俺もか〜みたいな?笑」
「確かにそれはありそうだね。でもこんなに急なのって、どんな感じで別れたの?」
「あー、まあ数時間話し合ってそれで別れたみたいな?」
「え?そんな即決みたいな感じだったんだ……すごいね。理由とかって聞いてもいい?」
「俺はもうすぐ就活とかで忙しくなるし、あっちは試験やら何やらがあって忙しくなるから、そういうのが終わるまではお別れみたいな感じだな。」
「え、じゃあ別れてはないのかな?」
「いや、別れたよ。ただ、もしそういうのが終わってまだお互いに好きだったらもう一回付き合おうみたいな。」
「なるほどね〜。」
「うん。」
「ずばり言うけど、早く縁を切った方がいいよ!」
「え、縁を切る?」
(こいつ何言ってるんだ!?)
「うん。別れてるって言ってるけど、それって実質キープ状態みたいな感じじゃん?」
「いや、別れてる間に好きな人とか出来たらそっちを優先するとかって話してるから……」
(キープ状態とは全然違うし!)
「いやいや、それこそ思いっきりキープでしょ。好きな人が出来たらそっちへ、出来なかったら元へ戻るって安全策を取りに行ってるだけじゃん!」
「でもお互いがその状態だから公平な立場だろ。」
(お前の時とは違うんだよ!)
「全然公平じゃないよ。だって君はまだ彼女のこと好きなんでしょ?」
「そんなこと……」
(好きに決まってるだろ!)
「あるよ。だってそこではっきり言えないんだから。そんな未練たらたらの君と彼女じゃ立場は全く違うね。なんなら君は、もし誰かに告白されたとしても未練ある彼女と復縁するために断るんじゃないかな?」
「……」
(たしかに断るな。)
「でも彼女は違う。新しい恋愛対象と君とを天秤にかけてよかった方をとる。君の選択肢は彼女との復縁の一通りしかないのに、彼女の方は無数の選択肢に手を伸ばし続けられる。だって失敗しても最後には君がいるんだからね。」
(……)
「君にとって彼女は第一志望かも知らないけど、彼女にとって君は滑り止めなんだよ。」
「滑り止めか……」
「ご、ごめん!そんな君のことを貶すつもりじゃなかったんだ。ただ君のためを思って出た言葉で……」
「わかってるよ。」
「とにかく親友の僕から見て、縁を切ることが君のためになる一番の答えだよ。」
「そうか。話、ありがとな。」
「うん、いつでも相談乗るからね。」
〜〜〜〜〜〜〜
「滑り止め……俺の彼女のことを俺以外が語るな、俺の彼女はそんなやつじゃねえし。」
俺は深夜に一人ベッドで横たわって呟いた。
(でもあいつの言ってたことって俺が言ってたことなんだよな。まじでクソだな。)
「はぁ。どうしよ、これから。」
"ティロリン♪"
「誰だ、こんな時間にLINEしてくるのは。」
"今日は言いすぎてごめんね。"
「あいつか。」
(謝ってくるところを見ると、やっぱり俺に言われてた時に同じ気持ちだったんだろうな。)
"俺も前はごめん。お前の気持ちも考えずに変な例えばっか出して不快にさせたと思う。"
"ティロリン♪ティロリン♪"
"ううん、大丈夫だよ。傷心者同士これからもよろしくしていこ!"
「ほんといいやつだな。」
"おう!傷心してても心は大きく行こうな!"
「よし。ってあれ?いま二回通知音来たよな?こんな夜中に他に誰が……」
"わがまま言ってもいい?もう一回付き合お?"
「まじか。超嬉しい。」
"うん、俺もそう思ってた。"
迷わずに返信した。
でも小説を読む行為は作者の心の傾向を知ることができるので、他人の当事者という存在に近づくための数少ない行為かもしれませんね。
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