第八話「定時」
するとカフは自分の時計を見るや否や、室内全体に聞こえるように声を張り上げた
「よし、もうそろそろ定時になるから皆おひらきにするよ〜」
すると、その掛け声がするや否や、【開発部】の全員がほぼ同時に伸びをしたり帰り支度をし出したのだ。
昭田は、思っていたよりも時間が経っていた事にも驚いたが、それよりも、なによりも驚いたことがあった。
そう、この場にいる全員が帰り支度をしているのだ!!
普通こんなのありえない、数人チラホラ帰る人がいても大概が定時になってもパソコンと向き合い消灯ギリギリまで粘り残業をしているというのに、大事なことなのでもう一度言おう!この会社ときたら全員が帰り支度をしているのだ!
「昭田くん?おーい!急にそんな鳩が豆鉄砲喰らったような顔してなんかあった??」
昭田の時間だけ止まってしまったかのような光景にカフがツッコんだ。
「い、いや…だって…皆、全員が定時で皆帰るんですか…?作業の期間が長いとか…??それとも皆さんすごく優秀なんですか…??」
カフはこれまた不思議そうな顔をして返答し始めた。
「多分皆ギリギリだと思うけど…それがどうしたの?」
それを聞いた昭田は恐る恐る聞いた。
「え?いや…残業……とか…しないんですか……?」
…
「残業って何??」
想像していたよりも遥か上を行く答えに昭田は、失神しそうだった。
「会社に残って仕事するってことですよ!そうしないと期間内に終わらないと色々とやばいんじゃ…?」
「そりゃ、期間内に終らせる努力はするよ?早く作業終わった人達で終わってない人の分を作業分担するからね、作業はそれぞれのパソコンに記録されてるから作業した分だけ給料になるし、時給での給料も保証されてるから誰も慌てないんだよ。だから残ったってしょうが無いじゃん?」
パンフレットにも書いてあったが昭田はそんなに読み込んではいなかった。
「まぁ、残ってもいいし、残業代も一応出るけど、早く帰って好きな事することをおすすめするよ。とりあえず、昭田君も特にやること無いだろうし早いうちに帰りなよ〜ってことで、そろそろ僕も帰り支度するかなぁ〜」
と、カフは自分のデスクに向かって歩いていった。
「よし!僕も帰るダニね!また明日続き教えてあげるダニ!」
昭田がカフと話している間にそそくさと帰り支度をしていたケルロはそう言ってエレベーターの方へと歩いていった。
昭田は思った。「ここってもしかして超大企業でホワイトな場所じゃね??」と。
すると突然後ろから声がした。
「昭田さん!ボーッと突っ立って何やってるんですか??」
受付係のアリアさんだ。
「そう言えば今から昭田さんの歓迎会しようって話があるんですけどどうです??来ます??」
唐突すぎたが、昭田は慣れてきた様子だった。
というより、このぐらいなら人間でも良くあることだ。
「あ、アリアさん。歓迎会ですか…。良いんですかね、僕なんか」
「良いんですよ!っていうか、というより断った方が悪印象ですよ!ということで歓迎会に行きましょ〜!」
と腕を引っ張られエレベーターとは別の方向に連れて行かれた。
「ちょ、行くならあっちじゃ?」
「何を言ってるんですか!今から宇宙空間に出て月のバーでパーティですよ!」
昭田はこれまた予想外なところからジャブを浴びせられた。
そのまま変なテレポーターのような所の前まで連れてこられて謎の小型の機械を手渡された。
「はい、これ付けてください!人間は酸素がないと息生きていけないと聞きました!なので自社で開発しているこれをつければあなたの周りだけ空気の膜が出来ます!機械は特殊な技術で勝手に光合成をして勝手に酸素を出してくれますよ!因みに光合成は光がなくても緊急用の小さな太陽が機械の中で数時間起動するのである程度は大丈夫なすぐれものです!!」
と、アリアはちゃっかり宣伝をした。
「こんなのも作ってるんですね……。」
昭田は改めて関心が深まった、だが、「こんなの」と言う言い方はいささかどうかと思う。
「うちの会社はホントに凄いんですよ~!ということで、それをつけたらここを通り抜けてきて下さいね!着いた先で待ってますよ〜!」
と言ってアリアはテレポーターらしきものをくぐってしまった。
お久しぶりです。『魔物。』です
制作していたノベルゲームが完成したので連載再開です。
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