第六話「キャラクター」
それから数時間、昭田はそこそこに広い【開発部】を歩き回り、全員の仕事を見て回った。
「ここは?今は何をしてるんですか??」
「あ、始めまして!私は『ナヤ』!ここではフィギュアとかのモデリングをしているのよ!えっと…今作ってるのは…。これね、アルラルと別会社のコラボ企画で生まれたキャラクター『ミヤ=イルス』特にここの…。これ!服の装飾品のモデリング、一番大変だったの…。」
「へ〜、フィギュアのモデリングって一人でやっていくものなんですか?」
「ん〜、私は結構こう見えてベテランだし…一概には言えないけど基本一人かな、装飾品とか、部分部分で分担する事もあるわね。」
こう見えてと言われてもよくわからなかったがそこは受け流した。
「そうだ!せっかくだから聞きたいんだけど…」
と言って『ナヤ』は自分の目の前にあるパソコンを触り始めてなにか探し始めた。
「これこれ!ちょっと宇宙では受けが微妙な感じでね、人間ウケは良いのってどっちなのかなぁって思って、意見がほしいんだ。」
画面にはまた知らないキャラクターではあったが、二分割された画面にはどちらもタコのような触手が生えた異形の頭のキャラクターが映っていた。
違いとしては『少し肌けた服装で異様なポーズをとっているフィギュア』と、『ボンテージのような服を着てチェンソーと大剣を合わせたような武器を振りかざしているフィギュア』が映っていた。
「……。」
「人間って、異形とか嫌うって聞いたからあんまりどっちがって難しいかも知れないけど…無理にじゃなくて良いから意見が聞きたいの…どっちも嫌ならどっちもって………」
昭田はナヤの話を遮るように言った。
「…いや、どっちもウケはいいと思うよ。」
ナヤはぽか~んとしていた。そりゃそうだ、ナヤは「どっちもなぁ〜……」みたいななぁなぁな返事が返ってくると思っていたから。
だが、昭田は言い切った。「ウケが良い」と。
「そ、そうなの…??じ、じゃあ、昭田さん的にはどっちがいいとかある…?」
昭田は、ナヤが自分の名前を覚えていることにびっくりしていたが、そんなことは些細な事だった。
「う〜ん。僕はこっちかなぁ…」と昭田は、有無を言わずにボンテージの方を指差した。
「そ、そうなんだ~、ありがとう!!参考になったよ!!」
違うぞ、ナヤ、人間皆同じだと考える無かれ、ナヤ、昭田が…この小説の作者がそう言う奴なだけなんだ。ナヤ、一般的に人間は人間が一番好きだと思うぞ。ナヤ。そのキャラクターが効くのはヲタクだけだ、ナヤ。
そんなナレーションの声も届かずナヤは勘違いしたまま…。
そして、昭田はその場所を後にした。