第五話「開発部」
だが、昭田は相変わらず目を輝かせていた。
「え、ここで…働くんですか??」
「え、あ、いや〜、嫌ならまたアルさんに掛け合ってみるけど……。」
「いえ!夢だったんです…ただただ作業するだけじゃなくて、皆と話し合って皆で良いものを作ろう!ってするの!昔は一人でゲーム作ったこともあったんで!なんか…夢が叶ったような気がして…!」
昭田はそういう男だった、長年ブラック企業に努め、自分のやりたいことを見失っていたが昭田の子供の頃の夢はクリエイティブな仕事をして人を喜ばせたいという夢だった。
それが今、偶然にも叶おうとしていた。
まだ、30だと言う人も居るだろうが、考えても見てくれ、大学を出て5年間ずっとブラック企業に勤めたのだ、精神と時の部屋に入っていたレベルで時間の進みが遅く感じてもしょうがない。
すると、プロデューサーのような異星人は【開発部】の全員に注目するように言い、視線を集めた。
「今日から皆との開発に加わる種族『人間』の昭田くんだ、皆色々と教えてやってくれ」
部屋中ざわめき出した。「人間??」「マジ?本物?」「人間だって…」
少し危機感を覚えた瞬間、部屋中どかん!と盛り上がりの声を見せた。
「うぉぉ!!人間だぁぁ!!アルさんやっとかよ!!」「まじで助かるわぁ〜!!これで開発が捗る!!」「まじで…ナイス昭田ぁぁ!!」
なんか、正義のヒーローになった気分だったが、昭田に不安が押し寄せた。
だが、その不安を押し返すようにプロデューサーのような……いや、めんどくさいしプロデューサーでいいや。プロデューサーが話し始めた。
「あぁ、そんなに心配しないでよ、この会社ってさ全員地球人じゃないんだよね、でも、地球での事業が一番盛り上がるからってアルさんも地球に会社を建てたんだ、他の星でも地球の文化は凄く注目されてるしね、あぁ、話が少し脱線したね、とりあえずそんなこんなで宇宙では1位2位を争うぐらいここの会社は人気なんだ、だから人手が足りすぎててね、この星の人間を雇う余裕も無かったんだ。でも、ここの社員の要望で一人ぐらいはって話になって、そこに君が来たって話。だから君はここの会社では凄く重要な人物なんだ。アルさんにも気に入られてるみたいだしね。」
「そ、そうなんですか……。でも、そんなでかい会社なら人間の種族も応募がいっぱいあったんじゃ…??」
「ん〜、僕たち…えっと…君たちの言う宇宙人は地球に身バレしないように隠れて生きてるからね。この会社も地球人のお偉いさん方を通して大事にしない事を条件に建ててるんだ。それと、求人も君も見たと思うけど、ここだけの話あんなのだからね…そりゃみんな来ないよ、。」
そう、地球人があの求人を見て来る確率はほぼ0に近い。昭田のような変わり者しか来ようとも思わない。昭田は奇跡的な確率を引いた。運が良いのか、悪いのか。
「まぁ、というわけだから、後はここにいる皆に色々聞いてよ!あ、因みに自己紹介忘れたけど名前は『ゼイル』、【配信部】のプロデューサーしてるんだ。何かあったらいつでも聞いてね、じゃ!」
ゼイルと名乗ったプロデューサーはそのまま去っていった。
それと同時にその部屋にいた異星人達が昭田に詰め寄る。
「よろしく!」「人間って何食べるの?」「人間の好きな趣向を教えてよ!」「人間ってどんな女の子が好きなの?」「人間って…」
昭田は聖徳太子の気持ちがわかったような気がした。
「ちょ、ちょっと待って、1つずつ答えるからゆっくり…ってか、僕の仕事って…何すれば…??」
すると、後ろの方から声が聞こえてきた
「はいはいはい!みんな落ち着いて!ちょっと通してね〜。」
すると昭田を囲う異星人達をすり抜けて、何か他とは違う雰囲気を醸し出す異星人が昭田の前に姿を現した。
「やぁやぁ、始めまして!僕はここ、【開発部】を束ねるリーダーをやってる『カフ』ってんだ!よろしくね!」
と言いながら右手を差し出されたので、昭田も右手を差し出して握手を交わす。
「急にごめんね!まぁ、皆、資料というか、そう言うのに困ってたからさ、許してやってよ。とりあえず君がやってもらう仕事は今からは見習いとして皆の仕事ぶりを見てもらったり、人間視点の意見がみんな欲しいだろうから積極的にそういうことには答えて行ってもらいたい。それを数日続けたあと…はその時になったらでいいか、まぁ、今の所はゆっくりしていってよ。見学しに来た感覚でさ。」
流石、人手が足りているだけある、数日間は業務という業務をしなくてもしなくても良いというのである、流石、流石すぎるぞ『アルラル㈱』!