第十話「出勤二日目」
ピピピピピピ!
これまた煩い機械が部屋中に鳴り響く。
昭田はいつもより寝起きが悪い様子でアラームを止めて頭を抱えてのっそりと起き上がった。
ふと時計に目をやる。
12時13分を指していた。
12時13分……。
12時13分!?!?
そう、会社の出社時間は10時。
完全に遅刻いや、場所によってはもうクビにされるレベルの大遅刻!!!
オワタ!!
昭田は急いで携帯を取り会社に電話を掛けた。
「す、すみません…昭田です…。ちょっと色々あって寝坊してしまって〜…、。」
そう、色々、今回の色々とは昭田は覚えていないから色々という曖昧な主語で濁していたということなのだ。
酒は飲んでも呑まれるな!これだけは覚えておこう!社会人諸君!!
「あ、昭田さん?いや〜心配しました〜!電話もなかなか無いもんだから!そうそう!寝坊の件は大丈夫!多分部長もしょうがないで済ましてくれるだろうし!無理しないでゆっくり来てね〜!じゃ、切るね〜!」
電話の相手はカフだった。
「なんて適当な人だ…。」そう思いながら昭田は朝飯も忘れてそのまま家を出た。
会社の前に着いた昭田は改めて緊張していた、会社出勤二日目で遅刻なんてクビも同然。
いつものエレベーターに乗り込み5階のボタンを押す。
ぽん!
そわそわしているうちに5階に着いてしまった。エレベーターのドアが開く。
「昭田さん!!お待ちしてましたよ!!あんなに酔っていらしたので今日は来れないかと思ってました!」
受付係のアリアがホッとした顔で話しかけてくる。
昭田はアリアに介抱されていたことは覚えていない。
「と、とにかく昭田さんがあんなに積極的な方だとは思っても無かったので…なんか改めると恥ずかしいですね……//」
!?
昭田は二日酔いの冴えない頭で一気に思考を巡らせた。
巡りに巡って絞り出した答えは。
「僕…なんかしましたか…??もし、変なことしてたらすみません…謝ります…。」
アリアは、あっけらかんとしていた。
「昭田さん……ああ言ってくれたのは嘘だったんですか……??」
昭田はまた思考を巡らせるが心当たりは何も無い。
「昭田さん…私の注いだお酒が美味しいって言ってくれたじゃないですか…忘れたんですか…?」
昭田は言ったような…言ってないような…という顔をしていたが、言ったような気がしていた。
「…言いましたね…。実際美味しかったですし…。」
そう言うとアリアは凄く顔を赤らめた。
「と、とにかく!この話は保留ということで良いですか…?、あ、昭田さんも遅刻してて色々と聞くことあるでしょうし!!」
昭田の頭の上にははてなマークが数百個も浮かび上がっていたがアリアの遅刻という言葉を聞いて我に返った。
「あ!そうだった!ごめんなさい!アリアさん!この話はまた後程!!」
顔を赤らめるアリアを横目に【開発部】へ向かった。




