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蛮行への回帰

作者: 猫路

ここは各地に設置されている意識界ターミナルに守られ意識が乱れない優しい未来。


『意識界ターミナルが破壊された、ディソーダー達により爆破された模様。大勢の思考が急激に変容して抑うつ状態になられる方から奇行に走り騒ぐ人たちも。

野蛮なディソーダーたちは刺激を求めている。私たちにはどうすることも出来ない。分断されるこの世界は、一つになりたがる。それはいつの時代もそう。』


八重という15歳の少女が居た、学生の彼女は明るく希望が満ちている。


「八重ってなんでそんなに穏やかに居られるの?私はハブられてるのかな、悲しい。」

同級生の七菜は八重に話しかけた。

八重は世界史の本を閉じ、

「七菜、いつもありがとう、あなたのおかげで感情というものを感じてくれる、私は穏やかすぎるかもしれない、癒やし系…なんて死語だけどね」

(また難しい本を読んでいる)と七菜は思った。


感覚的に正反対で自我が強い七菜は理解者を求めていた、校内で騒いでは、通り過ぎる生徒は見向きもしない。



校内のポスターも禁止や反対やダメというネガティブな文字がない。そんな事を書いても模範的な学生には不必要だろう。


七菜は、私と似た人が居ないか、夜遅く出掛けてみることにした。誰も居なかった。寂しい。七菜は翌朝、都会へ電車で向かった。

(都会っつっても大阪?だってつまんねーでも、何かを求めていく、大阪は反対派が多いと聞くし)


七菜は窓を覗いて黄昏れていると急に電車が途中で止まってハザード音が響いた。意識界ターミナルが爆破されました。とアナウンスが流れる。(何?、みんなぼーっとしてんの?開けろ開けろ!)電車の扉から七菜は飛び降りた。線路に沿って七菜は大阪に向かう、ここには流石に人は居ないよね、AIが処理するんだし。


「七菜!よくここまで来た」

パンツスーツのイメージの無い八重が腕を組み仁王立ちしていた。

「マジ?八重?え?なんで」

「爆破したのは私の集団、私は模範的な学生を演じてた、ここのシステムは欠陥があるの、回復するには蛮行するしかない」

「犯罪ってこと?」

「ここのシステムはAIのみで管理してるから不安定なのよ、だから私と協力して意識界ターミナルを崩壊させるの、いい?」

「ぜひ!」と、七菜は力まかせに言った。

「ところで私、サバ読んでるから、」

「え?まさか成人されてるとか?」

「ホンマそうだよ」

「童顔やん」

「言ったな!」


ビヨンド意識界会議室

「私の計画では、コミュニティを重点に置く

宇宙ターミナルのコミュニティを置く、意識が調和に来たしやすい人をそこに住まわす。意識界ターミナルは地球調和を乱し、人間らしさを奪う凶器でしかない。」

犬飼と言う卵の様な頭の会長がこれからの方向性を妄想する。

「会長、ここに相応しい若者を連れてきました」と八重が会長に頭を下げる。七菜は挙動不審になる。

「精神的にも安定しづらいパーソナリティですな、この子は可愛らしい」

と犬飼は微笑みながら言う。

「今回の爆破の後始末は更地に戻す予定だ、歴史は繰り返すものではない」

「了解です、AIに指示を送りました」

八重の隣にいる三秋がパソコンを操作した。

「この意識の人たちは日本には何人居るんですか?」と七菜はちょっとずつ正気に戻った。

「何人とは言いづらいが、関西には多いしか言いようがないね、八重は京都出身だ、関西弁を奪ったのはこのターミナルのせいだ。あんたは愛知出身だと聞いた、実感としてはどうだい?」

「面白い事をしても誰も振り向いてくれなくてみんななにかの病気かと思ってました。だけど意識界ターミナルを知ってから、誰でも良いから情報が欲しかったんです。意識界ターミナルって何処にあるんですか?」

「人間が作れると思うか?AIにしか分からんこっちは指示するだけで、活動しているのは機械、今回は機械を壊しただけだ、またいつAIが作ってしまうか分からない」

「シンギュラリティ以降から振り回せられっぱなし」

と三秋が呟く。

「そうだよ、七菜、これはAIと蛮行する人間の戦いだよ」

と八重が重々しく言う。


私が学んだことはこの世は人間が中心ではなくなってしまったこと、本当のシンギュラリティはAIの方が賢い方法で人々に気づかれないことだった。


「AIがしていることを説明するわね」

とパソコンの前では形相が悪い三秋はパソコンを閉じると微笑みながら話しかけてきた。

「風邪などのウイルスサイズのナノロボットをAI自ら作成し、脳内で意識をコントロールしている、意識界ターミナルを管制塔にし、そこが故障すれば脳がクラッシュしてしまう、それを繰り返してしまえば廃人になってしまうだろう、だが、私たちは影響を受けなかった珍種ということしか考えられない。AIに逆らう技術があったら欲しいけど八重が言うように蛮行ね」


何か重いものが会議室の窓から落ちてきたのが見えた。ドスッという鈍い音がした。

「身投げよ、AIが処理するから無視するのが身のためよ」といら立ちを言う八重。

「もしかして自殺でしょうか」

と七菜は震えた。

「AIが支配する限り、私は私ではないんだよ。」と八重はタバコを口にし火を点けた。

「まあまあ、悲観的にならずにこれからの作戦を立てるとしよう」

とにこやかが似合う卵の頭の犬飼会長。

「会長もやる気ないんでしょう?解決方法もわからないんでしょう」と八重は反発した。


「七菜!私についておいで!」とほぼ強引に七菜を引っ張り八重は会議室があるビルを出た。高らかな笑い声と途方に暮れた人々。

「これが本来の人間の姿よ、納得した?」

「安心する、私が求めていたものなのかな」

「陰鬱と闊歩する人だかりなんて気色悪いわ、あんたよく耐えた」

うん、と七菜は涙で眼球を潤した。


会議室には犬飼と三秋だけになった。

「私は無能ではない、意識界ターミナルに操られていない研究者を探す事だ」

「サーチ済みです、日本住在のアメリカ国籍のデリト・マモルという方です」

「コンタクトを取りたい、セルフォンをよこせ」


「犬飼さん、お久しぶりです、デリト・マモルです、ナノロボットは進化していると考えています、殺傷能力のある物質も得ようとしています。このままでは人体に害が出る、飛躍してしまうと人類が衰退してしまうと言うことです。ナノロボットをなくさない限りまた同じ事の繰返しになります」

「それともAI基地を破壊すればAIは根絶するのでは」と三秋がサラッと言い出した。

「それは私が言いたかったこと蛮行はインドネシアに突入するわよ」と八重がスルッと開けっ放しの会議室へ入ってきながら宣言した。

「イケてるー!八重姐さん」と後ろについてきた七菜はノリ良くオーバージェスチャーをした。

犬飼会長は微笑み深く頷いた。

インドネシア全域の意識界ターミナルを爆破した。


人類はままた蛮行が許されるとは、

インドネシア人の蛮行により

これでAIの機能は全滅、

やはり人間は素晴らしい。

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