63 Eランク冒険者活動 三日目?
「私もあんな感じで活動していました」
“北東外壁門”を出たところで、外壁の外側で作業をしている、なり立てEランク冒険者と覚しき若い(十五歳くらい)集団を見ながら言いました。
「へー、四年前のウラさんか、あんな感じでかわいかったろうね~」
「いえ、そんな……」
ダスさん、ケミーナさんを交えて昼食を済ませた後、向かった先は「王都北東門広場」でした。
数日前、三年ぶりに再開することになった冒険者活動へ出かけた、あの“北東外壁門”の外にいます。
あの日は遅めの午前中からやって来ましたが、今日はさらに遅く、すでにお昼過ぎ。
先日以上に活動時間が限られています。
それで何をするのか?
「薬草採取」です。
冒険者ギルドで、主にEランク冒険者向けの常設依頼として出されているのが、「Eランク魔獣の討伐」と「薬草採取」です。
旅立ちまでの時間が限られる中、ミユキ様はこれまで植物採取をしたことがありません。
ミユキ様が冒険者活動を始めてから今日でようやく四日目という事もありますが、その間の密度が高過ぎたことも理由でしょう。
ミユキ様が神殿でお目覚めになった四月一日は、総祭司長のインゲルス様、神殿騎士団長のリッケ様や神殿術士団長ハイケ様と会談したのち、お持ちの技能や戦闘能力の確認をして、ダンジョンへ潜った後で冒険者登録(当然Eランクですが)までされました。
翌日の朝一番には、インゲルス様と会食。
ミユキ様はその席で、「この世界が、終わりに向かって走り初めている」と告げられました。
同席していて、何を言い出すのか!? と思いましたが、大地母神神殿の総祭司長であられるインゲルス様は元より、同席されていた“方”までその言葉に異を唱えませんでした。
その“方”というのは審神者という役職にあり、自らの名を大地母神様に捧げられたため、名で呼ばれることを禁じらている方です。
役職名も名に準じるため、周囲の者は可能な限り“あの方”とか“その方”と呼び、敬意を持って接しつつ、あたかもそこに居ないかのように振る舞うことが求められます。
そうまでして“あの方”が何をするのかと言えば、何かしらの神意が示された際、それが真に“神に依る意”であるか否かを見定める役を担っておられます。
つまり私が巫のお役目を頂いておりますので、私の身に降りられた大地母神様を称する者の意向の真偽を、“あの方”が判定するという、安全のための仕組みというわけです。
これらの職務は千年を越える歴史を持ち、前回のお役目行使は三百年前ということですから、当日の神殿は当然ながら上を下への大騒ぎとなりました。
ですが、日々の修練の甲斐もあり、ミユキ様が目を醒まされる頃には、各自の役割を果たせる状態になりました。
その結果、大地母神中央神殿は、今回他にもあったらしい神意を含め、全てに“真也”の判断を下し、神殿の総力をあげて“使徒、ミユキ様”の行動をお助けすることと相成りました。
らしい、などと表現が曖昧になることはお許しください。
大地母神様がこの身に降りている間、私の記憶は曖昧になっておりますので。
そのミユキ様が最初に求められたのが、私に「一週間わたしにつきあってもらいたい」と言うものでした。
つきあって欲しいというのは、二人でDランク冒険者目指したいという意味です。
初日の就寝前に、私が神殿に入る前にFランク冒険者を、神殿に入ってからも一年の間Eランク冒険者として活動して、その後活動を休止しているなどと伝えていたためでしょうか。
ミユキ様もご自身の世界で、冒険者活動をして遊んでいたと話してみえましたので、ミユキ様も馴染みがあるのでしょう、冒険者に。
不案内な土地で、現地の協力者を求めるのは、定番の手段です。
それに経緯はともあれ、他所の国へ移動するのに、冒険者である事は、方法として有効です。
そもそも大地母神様から勧められたというのなら、他の選択肢を考える必要すらないでしょう。
Dランク冒険者への昇級は、問題なく出来ると思われます。
これまで私たちは、二人でDランクへの昇級要件を満たすため、率先して魔獣を狩ってきました。
ミユキ様と一緒に“Dランク冒険者”を目指すことになり、昇級審査へ参加を申込み、その後ここでEランク魔獣を討伐したのが二日のこと。
翌日は南へ出かけて、水棲魔獣を討伐。
呆れたことに、その二日間で昇級要件である“一人あたりEランクの魔獣五十匹(相当)討伐”を達成されてしまいました。
これは普通早くて一ヶ月、通常は複数月を跨いで行なうことですから、この一事をとっても、ミユキ様の“Dランク冒険者”への昇級は、確実性が高いと言えます。
さらに昨日は、丸一日神殿にて修行をされ。
本日の午前中はDランク昇級試験。
ほら、植物の「採取」が抜けています。
ミユキ様がこれからさらに昇格して、さらに難度の高いお仕事をされるに当たり、「討伐」と並ぶ冒険者依頼のもう一つの柱、「素材採取」の基礎体験をしておいていただきたいと考え、出来た時間を利用してこちらへやって来た次第です。
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「“北東外壁門”を出てすぐのあたりは、おもにEランクになり立ての子たちが薬草採取をしています。採取に向いているのは街道と外壁に挟まれた部分で、門から遠く離れるほど魔獣に襲われる危険が高まります。先日血抜きをした木の辺りになると、採取目的のEランク冒険者はもう来ません」
「あの辺りだともうEランクの魔獣狩りが主体ってことね。あそこなら問題んじゃない? あんまり王都に近いと採取主体の人の邪魔になるし、採取の人たちが行かないような場所の方が、薬草も多そうだし」
「そうですね」
Dランク昇級試験を終え、昼食の後やって来たのは、“王都北東門”から出た街道沿いの平原だ。
試験が午前中で終わり、午後の時間が空いたため、どうしようかと相談したところ、ウラさんに薬草採取を勧められた。
わたしは“ウィア”からの頼みを実行する前に、まずはクワン神国(外国だよ!)に行って、月那や兄さんと合流しないといけない。
魔獣が跳梁跋扈するこの世界では、移動するだけでも相当な危険を伴う。
なにしろギルドの受付けのリシュヌさんに、「クワン神国へ行きます」と言った途端、「それは無謀なのでは?」と即突っ込みされたほどだ。
速やかに安全に移動するためは、魔獣に負けない戦闘力が必要だ。
そんな事情とDランク昇級の要件が合わさって、優先して魔獣を狩ってきたのだけど、規定の納品を終えて昇級審査が始まった今となっては、後回しにしてきたことにも目を向けた方がいい。
って、ウラさんが言ったんだよ(てへっ)。
そのウラさんが、十五歳でEランク冒険者にランクアップしてから一年間やってきた仕事の主体が、薬草採取だった(んだって)。
それで、採取の実地体験をするために、また血抜きの木までやって来たのよ。




