表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/127

48 神殿で修行 魔術剣5    


 できたばかりの【火術剣ファイアソード】を、ゆっくりと(●●●●●)()ぎにする。


 切れた。

 おとうふを切るように。

 だけど最後の一皮が切れた瞬間、切れたくいの上側が、床に崩れ落ちた。



 むぅ、ちょっとくやしい────。



 これは【火術剣ファイアソード】の厚みのせいかな。

 今わたしの“火術剣ファイアソード”の断面は、えん形だ。

 “断熱”で領域を作るときに、剣のさや想像イメージしたせいだろうね。

 楕円だえん形作かたちづくった“断熱”領域に“火壁ファイアウォール”を押し込んだ感じで、中には火が閉じ込められて、見た目は昔の蛍光灯が光っているみたいだ。

 映画に出てきた“ライトサーベル”を直剣にしたら、こんな感じになるかもしれない。


 ナタリアさんの水術剣アクアソードは、剣身のごく表面にだけ水をまとっていた。

 ハイケさんの風術剣ウィンドソードは、目に見えないので分からない。

 なら楕円直径の短い側を薄くして刃物に似た形にするために、かぶせている“火壁ファイアウォール”を押し潰してみようか。

 魔術の効果を上下から押し潰すと、斬撃ざんげき性能がつくと言っていたから、やってみて損はないでしょう。


 剣の横腹しのぎ(イメージ)部分ギリギリまで、火壁ファイアウォールを押し潰す。


 より剣に近い形になった火術剣ファイアソードを、再度杭に振ってみる。

 ゆっくりと横()ぎにすると、剣が先ほどと同じようにおとうふの中を進んでいく。

 火壁ファイアウォールの“刃”は前よりずっと薄くなっているので、剣が通った後にほとんどすきはない。

 そして剣を振り切ったとき、杭の上側は杭の下側に乗っていた。


 よしっ!



 それにしてもこの剣は、目立つね。

 とっても派手。

 もの静かな“水”や“風”の魔術剣と違って、自己主張が全開だ。


 柄を軸にしてくるくる回して見ると、刃が手前に来るときは比較的目立たず、横腹しのぎがこちらを向いたときには、面積が広くなって目立つ。

 あまり目立つと、素人の剣筋が丸分かりで恥ずかしいので、ためしに刃の方向にも押し潰してみようか。

 今は剣身がないのでちょうどいい。


 剣身を保護していた(つもりの)“断熱領域(内側)”を解除する。

 そして、楕円の長径側を押しつぶす───。


 うん、いい感じに細くなって目立たなくなった。

 フェンシングの“エペ”みたいにも見える。

 この子はしならないから、余計に似てるかな。

 見た目は“エペ”だけど、曲がりなりにも“火の魔術剣”なので、いでもれる──はずだ。

 そうなると、使い勝手は“サーベル”みたいな感じなのか。


 これでまた、杭を横薙ぎにしてみる。

 切れた。

 こんかいは勢いよく振ったので、杭の上が飛んでいったけど。


 ふふふ、中々いいんじゃないの? これ。


「ハイケさ──、うわっ」


 ハイケさんに成果を見てもらおうと後ろを振り向いたら、話をしていたハイケさんウラさんだけじゃなく、いつのまにか戻っていたナタリアさんと、いつのまにか来ていたリッケさん──“神殿騎士団長”のリッケ・セリン・イブセンさん──と、知らないおじいちゃんまでが一緒になってこっちを見てた。

 ビックリしたよー。


 しっぽ感覚センサーが仕事をしていなかった?

 いや、わたしが周りを気にせず、魔術剣作りにのめり込んでいたせいかな、これは。

 ウィアが、猫族キャットピープルの(体の)種族特性みたいなことを言ってたけど、こういうことか。


「え~と、みなさんお揃いで、どうされました?」

「いえ、ずいぶんと熱心に考えながら作業しておいでのようなので、声をかける頃合い(タイミング)はからっておりました」


 ハイケさんが答えてくれた。

 うわぁ、気をつかわせちゃったよ。

 申し訳ない。


「それは気づかずに失礼しました。ハイケさんとナタリアさんのおかげで、なんとかしっくりくるモノが出来たようです」


 ほら。という感じで、剣のからえた“火の魔術剣”を掲げた。


「それが“火の魔術剣”なのですか? “火術剣(ファイアソード)”にしては先程のようにメラメラと燃え上がっていませんし、ここに居ても暑くありません」

「ミユキ殿、それは少なくともわれらの知っている“火術剣(ファイアソード)”とは違うようですよ」


 ハイケさんいわく、普通の火術剣ファイアソードはメラメラと炎が立っているのが普通らしい。

 騎士団長のリッケさんでも、こういうのは見たことがないそうだ。


「リッケさん、先日はお世話になりました。わたしは他の“火術剣(ファイアソード)”を知りませんので、どこがどう違うのか分かりませんから、剣身をおおっている“断熱”を、一瞬だけ外してみますね」


 そう言ったとたん、ウラさんとハイケさん、そしてナタリアさんが、数歩下がって両腕で顔を防御する姿勢になった。

 やだなあ、大袈裟おおげさなんだから。


 剣身をおおう【断熱】を解除。

 一拍いっぱくおいてふたたび【断熱】

 続いて、【恒温領域こうおんりょういき】を、天井までの頭上空間へ半径十メートル(目測)で展開。対象は空気で、温度は摂氏せっし十五度。人のいない方向へは上と同じく床までの高さもね。

 そして【恒温領域こうおんりょういき】を解除。


 よしよし、なかなかスムーズにできたよ。

 リッケさんとお爺さんは、一瞬“暑い”と感じたものの、すぐに暑さが引いたためか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。


「やられましたな、ろう

「そうじゃな。あの“火術剣ファイアソード”も驚異きょういじゃが、その後の一瞬で温度を下げた技、あれは避けられんぞ」


 ん? 何だか不穏な話をしている男がふたり。

 “火術剣ファイアソード”はともかく、“恒温領域こうおんりょういき”は快適環境をもたらしてくれる、ステキな術なのに。


「その熱量、確かに強力な火術剣ファイアソードのようです。それにしてはその剣、見たことのない細さなのですが、たいの剣には何を使っておられるのでしょう?」


 ん? ああ、リッケさんは途中から来たから、初めに剣身けんしん蒸発じょうはつさせてしまった件は知らないのか。


「剣身なしでやってます。最初に蒸発させちゃったので……」


 そう言って、火の柱(ファイアピラー)を消すと、剣のだけが残った。


「なんと、剣身なしですか。

 ふつう剣身なしで魔術剣を使うと魔術剣がしなり、むちのようになってしまって使いにくいのですよ。しかもむちと異なり、わざとしならせても勢いがつくことがありません」


 そうなんだ……。


火術剣ファイアソードって光ってものすごく目立つので、あまり目立たないようにと細くしてみたらこうなったんです。普通の火術剣ファイアソードをちょっと試してみますね。“断熱”はかけますからご心配なく」


 と言って、その場の全員の手前に“断熱”をかける。

 問題なくできるようだ。“断熱”をこれくらいの人数なら負担にならない。

 そして柄の上に“断熱”の外皮スキンなしで“火の柱(ファイアピラー)”を立てる。

 今回はまきの炎くらいの温度 (イメージ) にしたので、まわりにそう影響は出ない───だろう。


 の上に立っている、火の柱(ファイアピラー)を左右に振ってみる。

 ゆら~、ゆら~。炎が曲がって、さきっぽがあとからついてくる。

 剣身なしだとこうなるのか。さっきはやらなかったな、これ。

 そこへにかかっている“断熱”を円筒状に伸ばすと、先程できあがった火術剣ファイアソードと同じ、ふつうの剣のように振れた。



 わたしの火術剣ファイアソードって、【断熱だんねつ】のおかげで出来てたんだね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ