2 一昨昨日《三日前》
兄の敦守達弥は九つ年上だ。
私が小学校に入ったときに高校生だった。中学に上がったときは大学三年になっていた。
いまは勤め人で、会社ではしっかり中堅なんだという。
わたしが物心ついたときからず──っと大人で、でも父さん母さんや親類の叔父さんたちよりはだいぶ近くて、年が離れている分ふつうの兄妹のように張り合うこともなく、関わり合いは薄い方だったけど、たまに頼る事があるとその達成率は百パーセントを誇っているのよ。
まったくそうは見えないのだけど(失礼)、頼りになるのだ。あの兄は。
今回は兄さんの趣味に関する案件なので、ここは頼らせてもらおう。
お礼にうちで月那とお茶するとき混ぜてあげてもいい。
ケーキの差し入れ歓迎よ。
幸いわたしと月那のノートコンピューターは、兄に助言してもらったお揃いだ。
なので準備のし方、ゲームの始め方は同じになる……んじゃないかな?
旅行から帰って、わたしはさっそく兄に相談した。
兄の遊んでいるゲームは、「セブン・ネイション・ファンタジー・オンライン」といい、兄もコンピュータでやっているそうだ。
普通は「SNF」「七国」「セブン」「ナナ」などと略して呼ばれることが多いMMORPG……だって。
MMORPGは、 Massively Multiplayer Online Role-Playing Game の略で、多人数がネットワーク越しに同じ仮想世界に集い、好きなキャラクター──人物や怪物──になって好きなことをするゲーム。いわゆるネトゲというもの……らしい。
相談をしてすぐに「あのゲームなら今使っているノートコンピューターで大丈夫」と言われたのでほっとした。
ノートコンピューター、こいつにしといて正解だったろと、ちょっとドヤ顔なのがムッとくるわね。
けどまあともかく、第一関門突破よ。
ゲームは、公開サーバーからインストーラーをダウンロードしてスタートさせれば、プログラムのダウンロードを含めてすべてやってくれるらしいのだけど、月那の家であまり時間を掛けたくない(はやく結果が見たいじゃない)と言うと、まずは家でプログラムをすべてダウンロードしてメモリーカードに納め、次にメモリーカードからコンピューターへインストールして、最後に個人情報を登録して更新をしてからゲーム開始するという手順を踏むことになった。
これなら最初のダウンロードが無くなる分、二回目以降のインストールは早く済むのだそうだ。
なるほど?(解ってない)。