19 対話
夕食は、昼食の時の四人にリッケさんハイケさんを加えて六人で摂った。
ダンジョンの中での話とか、冒険者登録をした事とか、インゲルスさんが若いころ、修行のために冒険者になって神官として活躍した時のことだとか、びっくりさせられる話も飛び出してきたわよ。
今夜はどこで眠ればいいのかな~と考えていたら、最初に目覚めた五階のあの部屋でどうぞと言われた。
ウラさんに治療室だと説明された部屋だけど、ここで誰を治療するのだろう? とちょっと疑問に思ってしまう。
続きの応接間を見てしまうととくにね。
そのウラさんも一緒にいる。
巫女の資質が役に立つかもしれないので、近くに置いて欲しいとインゲルスさんから頼まれた。
もちろん歓迎よ。
夕食を終えて、地下一階でお風呂をいただき(大きな共同浴場だったよ)、二人で五階の部屋に上がって、窓から夕暮れの街を眺めながら、眠る仕度をした。
前に月那とお泊まりをしたときは、「緑の切り妻屋根みたいね」って言ってたけど、それ何? って訊いても笑って答えてくれなかったので、逆に記憶に残っている。
あの娘のことだから、また何かのお話しのことだったんだろうな。などと思い出しながら今夜のお泊まり会を楽しみにしていると、ウラさんったら例の準備室みたいなところに引っ込もうとしたので、「きっと後で今夜のことを訊かれるでしょうから、近くにいてお話もした方が、話のネタが増えるわよ」などと言いくる…いえ説得して、隣のベッドに来てもらったのよ。
そこで話したことで、ここゼーデス王国のことも少し分かってきた。
この国では成人する十五歳の三年前、つまり十二歳になる年に、地区の教会で「祝福」という行事をして、子供たちに身上鑑定器を使うそうだ。
そこで「スキル」を持っている子供がいて、その子がそれを生かせる職業に就けば、たいていの場合才能を開花させて、その道で一流と言われるようになるという。
それでも特別なスキルを持たない子供の方が多いし、すべてのスキル持ちが大成すると言うわけでもない。逆にスキルを持たない子が一流と呼ばれるようになることもあるので、百パーセントの成功条件ということではないのだけれど、仕事の覚えが早かったり、限界が非常に高かったりして、その道で名を成すことが多いのだという。
ウラさんはその「祝福」の時に“巫女”のスキルを見いだされて修道院に入り、三年前から神殿で巫を務めているということだ。
ウラさんに求人を持ちかけた教会というのは、「大地の女神ウィア」を信仰する人々の受け皿であり、才能ある人材を見出す感覚器であり、慈善活動の母体でもある。
具体的には、貴族でない人たちにとっての、教育機関としての意味合いが大きいのだとか。
わたしの国では、七歳から十五歳までの教育は公共で面倒見ている。と言うと、とっても羨ましがられた。
そりゃまあ、有ると無しとじゃ天地の差があるよね。
そして昼間お世話になったリッケさん、ハイケさん。
神殿騎士団と神殿術師団の団長さんだけど、大きな枠組みで言うと修道会に所属する修道士なんだって。
最後にインゲルスさん。
あの人わたしには、「ウィア様の神殿の祭司です」って名乗ってたけど、正式には「大地母神神殿の総祭司長」なんだって!
もう何と言ったらいいのやら。
そりゃあ誰もが気にかけるわけよね。
一人忘れてるって?
無口さんは、名前や役職は不明なんだそうだ。
詳細は不明だけど、神殿や修道会、教会の上層部には顔が知られていて、どこに居ても誰も疑いをもたない謎の女性だそうで、噂では人の心を読むとかいう話まであるらしい。
うん、ミステリーだね。
陽が落ちると、テレビも公共ネットもないこの世界ではお話するくらいしかすることがない。
部屋の灯火には魔石灯が用意されているけど、夜いつまでも明かりを点けているのは贅沢の範疇だそうだ。
普通はしない事だそうなので、部屋が暗くなるにまかせてベッドでお話ししてたんだけど、暗い中でお話ししていればやがて睡魔が襲ってくる。
そしていつしか二人とも、夢の世界へと旅立っていた。───
†
「ん──」
気がつくと、妙に白っぽい場所にいた。
『あー、きた来た。待ってたよー』
ハイテンションな声がするのでそちらを見ると、綺麗な女の人がこっちに向かって手を振っていた。
起き上がって自分を見ると、あれ? なんかふわふわする?
ああ、これわたしの体だ。
ミーユンのじゃなく、敦守真幸の体なんだ。
「お待たせ」
ボソッと言う。
寝起きのわたしはテンションが低い。
少しでも体を動かせば目も覚めるんだけど、起きたばかりはね。
というか、体あるのかしら? ちょっぴり疑問?。
『どういたしまして。巫女ちゃんとお話してくれたおかげで、同調が取りやすくて助かりました。まあともかくかけて掛けて。
お茶あるよ。なんなら朝食セットどう?』
あれ、うちのリビングのソファとローテーブルだ。
「ん、お茶だけ」
『はい、お茶。
べつになにもない空間でも問題ないんだけど、あまりのっぺりした場所じゃ風情がないからね。そこにあったモノを使わせてもらいました。
そんな訳で真幸の体も形だけね』
やっぱりうちのソファなのね。道理で見覚えがあるわけよ。
あら美味しい。このお茶。
現金なことに、美味しいお茶をいただいただけで目が覚めた。
われながら調子のいいことだ。
『お気に召したようで良かったわ。改めまして、私がウィアと呼ばれている者です』
ん? 心を読まれた!?
『心を読むもなにも、ここはミユキの夢の中ですもの、外に漏らしたくないならちゃんと隠さないと。スピーカーで実況放送しているようなものですよ』
ん、面倒だな。
(こんな感じかな。もしもしー、ウィアさーん。反応がないからこれで隠せてるのかな?)
まあいいか。いちいち口に出す必要もないし、面倒がないのでこのまま行きます。
『わかりました。なかなかスパッと割り切りますね。男前ね。
あ、褒めてるのですよ』
そりゃあどうも。
それで昼間言ってた、兄さんと月那に合流してほしいって言うのは?
そもそもの話、ここは何処で、わたしはなんでここに居るの?
『ここは私の管理世界“大地”。あなた達にはこの世界を救ってほしいのです』




