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18 冒険者登録         


「ミユキ殿」


 ダンジョンの帰り道でリッケさんが声を掛けてきた。


「はい」

った魔石はどうされるのですか?」


 そう言えば、ゲームでも倒した魔獣からは魔石がれてたけど、あれって集めた後どうするんだっけ?


「とくに考えてませんが、何かの役に立つんですか?」

「通常は冒険者組合(ギルド)か国の買取り窓口へ売ります。

 神殿でも受け取っていますが、喜捨きしゃという扱いになりますので、収入にはなりません。

 冒険者登録をするおつもりなら、多分その魔石を手放すことになりますが、冒険者のDランクに登録できる可能性があります。

 ああ、Eランクの登録ならいつでも出来るのですが、Eランクでは常設依頼しか受けられませんからね。ダンジョンに入ったり、依頼主が示す条件を達成するような依頼を受けるためにはDランク以上が必要なのですよ」


 おおっ、冒険者だよ。

 いろいろあって、弓やら剣やらで魔獣と戦うことになったけど、冒険者って本当にいるんだ。

 いや、決してインゲルスさんが言ったことを疑っていたわけじゃないよ。

 でも実際に自分が登録できるとなると、感慨もひとしおなのよ!


「冒険者ですか! 登録したいです!」

「それでは上でインゲルス様に相談してからになりますが、冒険者登録してみましょうか」

「はい!」



    †



 地上へ出てみると、インゲルスさんは神殿に引き上げたようで広場にはいなかった。

 当たり前か。

 インゲルスさんが神殿の偉い人なら、することはいくらでもあるだろう。


 どうしましょう? とリッケさんの方を見ると、


「まずは冒険者登録をしてしまいましょうか。

 少なくともEランクへの登録はできますし、時間が勿体ない」


 わーい、「もったいない」同盟だ!


「わかりました!」


 わたし達一行は、開けっぱなしになっていた冒険者ギルド側の門をくぐった。

 輜重しちょう役の騎士さん一人だけは、リッケさんからお使いを頼まれたようで、わたし達から離れて神殿の方へ駆けていった。

 ああ、神殿に帰還報告ね。

 報連相ほうれんそう、報連相。

 兄さんがいつも言ってたわ。


 冒険者ギルドの建物に入ると、そこはちょっと昔の市役所の一階という感じだった。

 長いカウンターにたくさんの受付がある。

 とつ型に突き出した五辺のカウンターのうち四辺が買い取り用になっていて、人がたくさんたむろしている。

 わたしは残りのいた一辺にある受付へと向かって、中の受付嬢に声を掛けた。


「冒険者登録をお願いします」


 言った。

 ついに言ったこの台詞。

 ちょっと感動だわ。

 SNFゲームでは、はじめから問答無用で新人冒険者として立ってたからね。


「ようこそ冒険者組合(ギルド)へ。冒険者登録ですね。組合(ギルド)についての詳しい説明は必要でしょうか」

「お願いします」

「かしこまりました。

 それで…あの、後ろのお二方は?」


 受付嬢のお姉さんは、わたしの後ろの立派すぎる鎧と法衣ローブの二人組に目をやって言った。


「われわれは証人としてここに居る。必要がなければ口は挟まないので気にしないで進めて欲しい。

 我々の身元については、そちらの組合長(ギルドマスター)いてもらうのが早いだろう」


 そう言ったのはリッケさんだ。ハイケさんもいる。

 残りの二人は建物の入口で待機してもらっている。


「はい、存じ上げております。リッケ・セリン・イブセン神殿騎士団長とハイケ・ボーン・イブセン神殿術士団長ですね。

 よろしければお部屋を用意いたしますので、そちらで手続きを進めていただき、組合長ギルドマスターともご相談いただいて構いませんが」


 おお、これが顔パスというものか。

 凄いなあ。ふたりとも面識のない人に顔とフルネームを覚えられているうえに、ギルドマスターとの面会を向こうから言い出すなんて。


「いや、いま言った通り、我々は証人としてここにいる。特に必要がなければ居ないものとして扱ってもらえるとありがたい」

「証人ですか。承知いたしました。

 組合長ギルドマスターへお二人のご来訪を伝えさせていただくのは構いませんか?」

「構いませんよ」


 とこれはハイケさんだ。


「ありがとうございます」


 そう言った受付嬢さんは、別の受付嬢さんへ何ごとか囁くと、その受付嬢さんはカウンターの奥へと消えていった。

 ギルドマスターへ二人の来訪を伝えに行ったのだろう。

 いや、来たことはもう伝わっていて、経過を報告に行ったのかな?


「改めまして、ようこそお越しくださいました。わたしは冒険者組合(ギルド)、ゼーデス王国王都支部の受付をしておりますリシュヌと申します。よろしくお願いします。

 まず登録についてご説明します。

 入都審査でご使用になったでしょうが、ここにあるのは身上鑑定器ステータスチェッカーです……」


 すみません、わたしは入都審査を受けていません。

 っていうか、これが身上鑑定器ステータスチェッカー

 ちっちゃい。

 世代が下ると、箱もこんなに小さくなるんだ。


 説明が終わって、さくっと鑑定。


名前ネーム】  ミユキ アツモリ

年齢エージ】  18

性別セックス】  女

階梯レベル】  10

技能スキル】  収納 (ストレージ)

      地図作成マッピング

      熱制御  (サーマルコントロール)

      魅惑の尻尾(グラマーテール)

状態】(ステータス )  流され人 ルナの友 タツヤの妹



 これが街中にある身上鑑定器ステータスチェッカーの鑑定結果なのか。

 本当に鑑定結果が減るんだね。

 種族とかミーユンの名前が消えてるわ。


「あれ? レベルが10になってる。

 なんでだろ?」

「何かおかしいですか?」


 と、受付嬢のリシュヌさんが訊いてきた。


「午前中に神殿で身上鑑定器ステータスチェッカーを使ったときには、レベル1だったんですよ」

「鑑定の後で魔獣を倒したりしていませんか?」

「あー、ありますそれ。ダンジョンで、えーと」


 これくらい倒しました。と言って、ダンジョンの中で倒した魔獣の魔石を、カウンターにあった受け皿(トレイ)の上に出した。


「これは、第五層くらいまでもぐられたのですか?」

「いえ、二層と三層です。一層ではまったく襲われなくて」

「でも大玉がこんなに。それに一層で襲われないって、レベル20台じゃあるまいし」

「それは間違いのない事実ですよ。わたし達が保証します」


 リッケさんが口を挟んだ。


「お二人もご一緒にもぐられたのですか?」

「十メートル離れて見守っていたのを一緒と言えるならそうですね。あ、休憩時は一緒に休みましたし、助言アドバイスもしましたよ。

 それ以外は放置です。

 魔獣を探すことから討伐まで独力でやっていました」

「実質ソロでこれだけの成果を上げたと言うことですか。凄いですね。

 魔石はこれで全部でしょうか?

 なかなかの数ですが、レベル1から10まで上がるのには魔石の数量が不足な気がしますので」


 そんなことまで目算が付くんだ!?

 受付嬢ってすごいね。


「そうなんですか。そうは言っても、ダンジョンで狩った魔獣はそれだけなんですよ」

「そうですか。

 いずれにしましても、【状態】(ステータス )欄に犯罪歴はなく、年齢制限も満たしていますから、Eランク冒険者への登録は問題なくできます。

 ミユキさん、冒険者組合(ギルド)へようこそ」


 よかった。無事に登録できるようだ。

 そうだ。


「それでDランクに昇級するには、どういった手順が必要になるんでしょうか?」

「おや、向上心旺盛ですね。もう昇級ランクアップを視野に入れているとは。

 Dランクに昇級するには、王都の外のグラニエ平原で常設依頼の魔獣を狩っていただき、納品買取りの累計が五十匹を超えること。その後実技審査と昇級講習を受けていただき、問題がなければDランクに昇格できます。

 さらにその上となると、強さと依頼達成による組合(ギルド)への貢献を見て随時ということになりますね」

収納ストレージなかに外の平原で狩った魔獣が入っていますけど、それも使えますか?」

「それではこちらの作業台へ出していただけますか? 拝見します」


 言われて作業台の上にストレージの中からグラニエ平原で狩った魔獣を積み上げる。

 お前「復活の間」で目覚めてから王都の外へ出てないだろうって?

 ゲームの中で狩った魔獣が、消えたはずの肉体ごと収納ストレージの中にあるなんて、わたしだってビックリしたわよ。

 でも、使えるものなら有効に使わないとね。


「この数は……、でも焦げたものが結構多い…けど。

 六十四匹、毛皮が焦げているものが多かったですが、ぎりぎり合格です。

 これを買取納品に出していただければ、Dランク昇級試験を受けるための条件を満たしますが、どうされますか?」


 角ウサギで言えば、肉と毛皮と骨が素材になる。大蜂ならはねと針と蜜蝋みつろうだそうだ。

 数こそ六十四匹と十分揃えられたものの、炎の矢は素材の価値を下げていた。


 そうかー、火系の術って威力が高めに出る代わりに、素材にまでダメージが行っちゃうんだね。

 何か少し考えてみよう。



 今夜のことがあるので、リシュヌさんには「明日お返事します」と言って、魔獣の納品買取りの話は棚上げしてきた。


 今わたしの首には、銅製カッパーの冒険者(プレート)が掛かっている。

 Eランクの冒険者だ!




 ───わたし、冒険者始めました。───




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