13 鑑別 準備
お腹がいっぱい(腹八分目)になったわたし達は、次に神殿騎士団の訓練場へ行くことになった。
熱制御スキルを確認するためにね。
でもその前に、わたしとウラさんは一度部屋に戻った。
外してあった鎧と武器を取りによ。
「ウラさん」
「はい、なんでしょうか?」
「鎧の着け方って覚えています?」
「はい、覚えていますよ」
「よろしくお願いします! わたし全然なのでっ!!」
「ご自分の……ではなかったですね。そう言えば」
「そうなのよ」
「でも収納のスキルをお持ちでしたよね?」
「ありましたね。調べた時に」
「いちど収納して、装備欄から装着したらうまく着られませんか?
勇者さまの物語にそんな場面がありましたから、ミユキ様なら出来そうな気がしますが」
「えー…?」
わたしが寝ていたベッド近くの棚にあった鎧は、やはりわたしの、というかミーユンの、でもなく兄さんから借りていた鎧だった。
見当たらなかった弓や短槍は、棚から近い扉のついた物入れに入っていた。
ウラさん曰く、わたしが目を覚ましたときにすぐ見当たらないのは不安かもしれない。とは思ったものの、仮にも刃物なので、立てかけていて何かのはずみで倒れると危ないし、大きな机や長台がないからって、適当に寝かせて置いて誰かがうっかり腰を下ろしてもいけないと思い、なるべく近くの扉が付いた物入れに入れてくれたそうだ。
気を使わせちゃった。ありがとね。
わたしが着ていた変な服、あれは鎧下と言うらしい。
ずっと気になっていたので良い機会だと部屋で脱いでみたら、スポーツ用のブラパンみたいなのの上に鎧下を着けていた。だからその上に鎧を付けるというわけね。
つまり鎧を装着するだけで済んだのだ。
ただ、先ほど話していた収納からの鎧装着は、うまく行かなかった。
置いてあった鎧を収納しても、装備欄には出てこなかったのよ。
ウラさんが見て分かるほどがっかりしていたけど、出来ないものは仕方がない。地道に鎧を着けましょう。
鎧は、もともと騎士の全身鎧のような固くて重くてごついものじゃなくて、軽い材料で作られた小ぶりな部品を組合わせた、とても動きやすいほぼ全身用の鎧だったので、ウラさんは脱がせたときと逆手順でテキパキと組み立てていった。
これってプラモデルよりも簡単なんじゃないかしら。
シッポの穴も開いてるよ。
それでもってこの鎧には、寸法自動調整の機能付与というのが付いているとかで、買うと相当値段が張るものらしい。
おかげでざっと組み立てたあとは、適当に体を動かしているとすぐに体に馴染んで、動きの邪魔にならなくなった。
最終的には鎧を着たまま床運動ができるほどだったのだから、大したものだわ。
鎧も、猫族の体もね。
そして、弓を背負い短槍と矢筒を腰に付ける。
あ、でも屋内で武装してると、なにかに引っ掛けそうで怖いわね。
そう思い直して、三つとも収納にしまった。
そのとき収納の装備欄を開けて主装備、副装備の欄を確認したのだけど、ふと今着ている鎧を仕舞ってみたの。
なんとなく仕舞ってしまい、「もう一度付け直さないといけないかも!」と気付いた時にはヒヤリとしたけれど、その瞬間、今度はちゃんと装備欄に鎧が現れたのよ。
ドキドキしながら装備欄から鎧を装着し直してみると、おめでとう。ちゃんと装着状態に戻ったわ!
先ほどと今の違いは、収納する時に鎧を着ていたか着ていなかったか、かしら?
ともかく装備しているものを収納すれば、装備欄から直接着脱できるのは分かった。
わたしも嬉しかったけど、ウラさんがわたし以上に目を輝かせていたのが印象的だったわ。
さ、だいぶ時間を使ってしまったので、急いで下へ降りましょう。
†
三階へ降りると、人が増えていた。
「お待たせしました」
「いえいえ大丈夫ですよ。
ご紹介します。彼は神殿騎士団のリッケ・セリン・イブセン団長。そして彼女が神殿術士団のハイケ・ボーン・イブセン団長です。
彼らのところの訓練施設を使わせてもらおうと声を掛けましたら、自分たちも見学させろと言うので連れて参りました」
「神殿騎士団長のリッケ・セリン・イブセンです。リッケと呼んでください。
術を使うと聞いていたのですが、身に着けているのは近接職の鎧なのですね。剣なども使うのですか?」
「お初にお目にかかります、神殿術士団長のハイケ・ボーン・イブセンでございます。お見知りおきください。
コレとは姓が同じですが、再従兄妹です。わたくしもハイケとお呼びください。姓が同じなので区別するために普段からそうしておりますので」
「はじめまして。敦守真幸です。
突然お邪魔しまして申し訳ありません。いろいろとお世話をかけますがよろしくお願いします。
あ、敦守が姓です。わたしも真幸と呼んでください。
普段は弓を使っています。
術のようなものが使えたようなので、それを今から確認に行こうと話をしていました」
「なるほどなるほど」
団長さんだ!
またとんでもない人たちが出てきた。
インゲルスさんといい、ここは一体何処なのよ!?
神殿だけどもさ。
ウィアが何も言わないんだから、おかしな場所じゃないんでしょうけど。
名前はフルネームで答えたわよ。身上鑑定器で全部ばれてるしね。
リッケさんは先程階段にいた騎士さんよりは小柄だけど、十分に背が高い。そのうえ鎧のせいもあって前後左右の厚みがもの凄い。
筋肉フェチの人なら間違いなく惚れちゃいそうね。
中年と呼ぶのはちょっと申し訳ない感じなので、壮年、三十台半ばくらいかな?
白銀の髪に灰色の瞳。髪と同色の鎧が眩しいわ。
ハイケさんは白金の髪に翆の瞳、長身白皙の美女さんだ。
髪と同色の刺繍が入った白い法衣を纏い、額の金属環、両耳のピアス、両手中指の指輪のすべてに翆色の宝石が付いていて、瞳の翆と合わせて七つの宝石が輝いているようだ。
兄さんより少し上の感じなので、三十前後かしら?
「ほぅ」と見とれていると、インゲルスさんが先を促す
「さて、それでは訓練場へ参りましょうか」
†
「それでミユキ殿、貴方が使えた術のようなものというのは、属性魔術なのでしょうか? インゲルス様からは“火”系統だとは聞いているのですが」
前を歩いているハイケさんが振り向きながらそう訊ねてきた。
今は先頭に騎士が二人、その後ろにリッケさんとハイケさん、次がわたしとインゲルスさん、その後ろにウラさんと無口さん、さらに後ろに術士が二人、最後尾に騎士が二人の並びで歩いている。
わたしたち四人が歩き出すと、そこここから人が集まってこの隊列になったのよ。
これ何の行列?
「“炎の矢”っていう魔術はありますか?
ふつうの矢で魔獣を狩っていたら、突然それが使えるようになったようなんです」
「なるほど、それでは最初の行き先は射撃場でいいですね」
さいしょ?
ほかにも何かするのかな。と思った次の瞬間、その疑問が頭から吹き飛んだ。
神殿から外へ出たのだ。
広い広い。とても広い広場だ。
とてもとても広い広場の周りを大きな建物、たぶん三つの建物が囲んでいて、高さ四メートルほどの鉄柵がそれぞれの建物の前を三つの広場に分けている。
そして三つに分けられた広場の中央には、高さ三メートルほどのなだらかな土盛りが。
これは知っている。
わたしはココに来た事がある。
“ダンジョン・スニヤド”
ゲーム「SNF」で、ゼーデス王国王都ツェルマートのど真ん中にあった“ダンジョン・スニヤド”の入り口だ。
そして今まで居たのが神殿なら、前方に見えているのは、王国騎士団・王国術師団の建物と、冒険者ギルド、ゼーデス王国王都支部の建物のはずだ。
七夕さまだ




