表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/44

33 初陣と妹

テイロスは、非常に妹想いだ。

シンディの為ならば、調査、準備、労力、出費、犠牲を惜しまない。




まず彼は、教会から与えられた二人の巫女との連携を訓練した。

貴族から、冒険者に成りたい者の訓練を頼まれたと言う建て前だ。



剣の巫女と呼ばれ、聖剣を使えるルティアは、実践はカラッキシだった。

聖剣を使わず、普通の剣で戦わせると、デスラビットにすら敵わなかった。


五色の巫女と呼ばれ、五種類の元素魔法を使うカルディナは、破壊力は凄い。

しかし、基礎体力が低く、動きながらの攻撃と、動いている者への攻撃が当たらない上に、攻撃準備に時間が掛かりすぎる。


「攻撃力としては、普通の冒険者とかを上回るけど、実践には非力だな。基礎からやるしかないか?」

「しかし、テイロスさんが女とチームを組むとは、思いませんでした」


冒険者に女性は居るが、大方は女性同士でチームを組み、男女混合は稀だ。

テイロスには、いつもの荷物持ち達が付いている。

既に、虎敷物の件は終わったので、ギルド依頼の仕事ではないが、テイロスの後援者として自主的に同行している。


「チームじゃない。教育だよ。御貴族様の関係者だ。手を出すんじゃないぞ」


両者共に、持久力を含めた基礎体力から始めた。


平行してルティアは、剣の使いかた。

回避などの身のこなし方。


カルディナには、致命傷にならない程度の小魔法を、早く連弾する訓練と、動きながら動く敵を狙う訓練だ。


秋口から、春先にかけて、主に練習場で訓練を続ける。

テイロスとは違うので、取り巻き連中のアドバイスが、かなりの功を奏していた。


春からは魔の森へ入り、弱い魔獣から、順にレベルアップしていき、テイロスとの連携をとれる様になった。


ルティアもカルディナも、小さな攻撃で相手の動きを止めて、大技で仕留めると言う基礎を身に付けていく。


「じゃあ、いよいよ、魔族狩りに行こうか?」


魔族には、人族を襲って食べる者が居る。


魔族領に面した一部の地域では、毎年の様に被害が出ている。

地区によって異なる様だが、この地方の角狼、獣人、小鬼、大鬼などは、人族を襲っている。


勿論、人族領の兵も常駐しているが、多くの兵を長期間駐屯させる事は、費用面で無理である。


また、魔の森に面した幾つもの村を少数でカバーするのは限界があり、襲われた村はノロシを上げて救援要請をするのが、精一杯であった。


テイロス達は、人族領と魔族領のグレーゾーンの魔族領側で、狩りをしながらノロシを待った。

襲撃が終わり、帰途についた魔族を狙うのだ。

国境の幅が広くても、ノロシを見付けて、そちらへ向かえば、帰途に出くわせる算段だった。


「人質がいても、死なない程度の攻撃を打ち込め。もし死んでも無視しろ!人質を手放した段階で魔族に致命傷を浴びせるんだ」


一見、非道に見えるが、この方法が人質を助ける最善の方法だ。

魔族側が手強ければ、無理せずに撤退できる。

獲物を手にしている魔族は、追ってはこない。


「兎に角、経験を積まなくては話にならない」


巫女達は、信仰の為、教会の為に、涙を流しながら、必死に戦った。


取り巻き冒険者達は、尊敬するテイロスの為に、惜しみ無い協力をした。



そして、テイロスは・・・


「多少でも、おとりとして役立ってもらわないとな」


テイロスは、非常に妹想いだ。それ以外には腹黒かった。



◆◆◆◆◆



そして、あの日から二年目の秋。

人族領と魔族領の境にある小高い丘に、彼等は到達した。

遥か遠くに、白い城が僅かに見える。


テイロスは、丘の一番高い所に立って、その城を睨んだ。


「ここが、アルフヘイゼ領か?待ってろシンディ!」


ここで『偽勇者の章』は終わりです。

前章『メイドの章』の最後と繋がります。


次回からは最終章

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ