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28 勇者誕生

王都に来てから二ヶ月後。

テイロスは座学と筆記試験を終えて、異例かつ特例として特級冒険者となった。

階級証メダルを受け取ったテイロスは、取り巻き達と一緒に、酒場で祝いの酒を飲んでいた。


「テイロスさん、俺達が色々と教えておいたから、一ヶ月くらいで合格すると思ってたんだけどなぁ」


疑問に思っているのは、取り巻き冒険者達だった。

彼に付いていった数ヶ月間、取り巻き連中は、冒険者になるのを見越して、法令やら都の常識やらを、雑談として教えていたのだ。


「いや、皆さんの御指導の賜物で、かなり楽でしたが、マナーとか、地理とかの他に、アレが大変でしたから」

「アレ?」

「筆記試験ですよ。俺って単語が、ほとんど分からなかったですから」

「そう言えば、直営行商人の持ってきた手配書の詳細は、ほとんど俺達が音読してましたからね」

「俺は、本当に農民なんで・・・」


一同から乾いた笑いが溢れる。


王都の冒険者トップスリーを倒してから、王都では超特級冒険者誕生として、既に噂が広がっている。


この二ヶ月で、前からの取り巻き冒険者の半数は帰った。

多忙な上級冒険者が、今もテイロスに二名も付き合っているのは、『某貴族』への配慮だ。

更にはギルド本部から案内役が二名付いており、合計四人が同行して不備がない様になっている。


「さてさて早急に、デビルタイガーの件を片付けておかなくちゃあね」


テイロスの言葉に、本部から手配された上級冒険者が慌てていた。


「大将、俺達も同行するんですよね?足が速い者限定って選ばれたんですけど、俺達、デビルタイガーは初めてで」

「何を言ってるんだ?俺達取り巻きは、荷物持ちだよ。テイロスさんの邪魔にならないように、逃げ回るんだよ」


村から同行していた冒険者が、先輩面で口を挟む。


「俺達上級が、荷物持ちって、流石は超特級ですよねぇ。まだ見ぬお手並みを拝見できるんですね?」

「速すぎて、見えないかも知れないがな!」

「で、チョウトッキュウって何だ?速いのか?有名なのか?」


ギルド本部での手合わせを見た彼等には、冗談でも何でもなかった。


「急ぎの案件なのは確かですが、王都見物とかしないんですか?」

「まあ、したくない訳じゃあないけど、急がないと虎は寒いのが苦手だから、この秋のうちに食い溜めした後に、引き籠もるんだよ。だから、前回は春先に飢えた奴が出回っていたんだが」


取り巻き連中は、納得した。


「じゃあ早速、市場に行って、干し肉とか、消耗品とかを買いにいきましょうか」

「頼むよ。道とか店とかが、全然わからなくて」


彼等は、それから街へと繰り出した。






虎狩りの買い出しを終えたテイロス達は、宿舎にしていたギルド本部の寮で、地図を広げていた。


「こんな地図を、いったい何処から?」


その地図には、主に魔族領の地形や領土が書き込まれ、更には有名魔獣の生息分布まで書き込まれていた。


「こんな情報は、魔族側じゃあないと無理だろう?」

「話によると、非合法に魔族と取り引きしている商人が居るらしくてな、そいつから手に入れたらしい」

「確かに、他の領地の魔族との取り引きや、危険回避には役立つ地図だが、それをお前が、どうやって?」


王都ギルドの上級冒険者は、胸を張った。


「俺も有名になったもんさ。噂の人物テイロス様の仲間って知れちゃってな、狩りに役立てて下さいって、譲られたんだよ。ファンだとか言っていたが、あの動きは、貴族に仕える隠密兵って奴だな」

「「「ハ、ハハハハハ・・・・」」」


王都上級冒険者の話に、誰が裏で情報を回しているのか、予想がついたテイロスと古株冒険者は、乾いた笑いを出すしか無かった。


「兎に角、これで闇雲に探し回らなくとも、目星がついたな」

「準備は、おおかた済んだし、明日にでも馬車の手配をしよう」

「ああ、それなら、長距離用の馬車を紹介してくれた貴族が居たぜ。こう見えても、上級冒険者の俺は王都では『顔』だからな。他にも・・・・・」


「「「ハ、ハハハハハ・・・・」」」


テイロス達は、延々と笑うしか無かった。



季節は既に秋中盤を回っている。

この時点で、シンディが売られてから一年と数ヶ月が経過していた。



◆◆◆◆◆



「それほどの者なのか?」

「はい。手合わせしたナイゼルから直接に聞きました」


王都の教会では、法皇が枢機卿からの報告に驚嘆していた。

ナイゼルとは、ギルド本部で、テイロスに三番目に挑んだ魔法使いだ。


「では、其奴そやつを祭り上げれは、再び軍勢を立ち上げる旗印にできるやもしれん。早速、詳しい調査を始めろ!」


人族が魔族に対抗するには、圧倒的な戦力比が問題になる。

多大な被害をだす物量戦で、なんとか均衡が保てるが、一点突破で魔王が倒せれば、打開できると盲信されていた。


「法皇様。我々は、この時を数百年待ちましたからなぁ」

「ああ、その通りだ。ようやく念願の『勇者誕生』だ!」


いつの間にか1,000PV越えてました\(^o^)/

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