プロローグ
初めて投稿いたします。アルサーニです。
稚拙な文章でお恥ずかしい限りですが、
読んで下さった皆さんが、楽しんでいただけるよう
精一杯頑張りたいと思います。
これから、どうぞよろしくお願い致します。
(誤字脱字は極力修正しておりますが見逃していた場合はご容赦下さい。)
扶桑歴2021年3月下旬
扶桑国 首都東都 東都線 東都メガフロート行 電車内
今日もまた満員電車に揺られる日々だ。ともに電車に乗る人は一様に疲れた表情で、座席に座り船をこいでいる人もいる。朝から重苦しい空気が漂い、人々のやることと言えばスマートフォンに目を落とし、せわしなく指を動かすくらいだ。
この人たちの大半は、虚無な毎日を送りながら命と精神を削りわずかばかりの対価として、給与をもらうのだろう。それは2000年になって、約20年が過ぎても変わることはなかった。
しかし、私の心は今日もやる気に満ちている。この快晴の青空と同じように心は澄み渡り
また、今日も仕事に邁進しよう!と、そう固く決意する。
私の名前は、桐嶋 亜莉朱 26歳。
職業は国家公務員だ。これでも一種試験をパスしたキャリア入省組である。
職場は国土運輸省 道路局 国道管理課 第3係 という長い名前の部署。
そして去年の春から第3係の係長を任されている。
私は今でこそエリートではあるがこれでも、幼少期や少年期は苦労も多かった。
2歳年上の姉がいたが、私が5歳の時に行方不明となった。
それがきっかけで、父は気が狂ったように仕事にのめり込むも、経営していた会社は倒産。
その後父は自殺し、母親に女手一つで育てられた。
貧乏のどん底でノートが買えず、チラシの裏をノート代わりにしたこともある。
しかし、人一倍努力もした。
様々な勉学活動に励み、テストで好成績を収め、単位修得も怠らず、バイトにも励んだ。
学生時代は青春と言われるものは全て勉強と、それに伴う自己研鑽に費やした。
そして最終的に、国家公務員第一種試験に合格したのだ。
国土運輸省入省選抜の面接では大学生時代の語学研修合宿のことを聞かれ興味を持ってもらえたらしくめでたく国土運輸省へ入省を果たした。
そして、入省後も脇目も振らず仕事に邁進した結果、同期で最年少の係長昇進となったのだ。
私は今、勝ち組だ。誰がなんと言おうと勝ち組だ。これもたゆまぬ努力の結果なのだ。
AM8:02
「今日も時間通りだ。」
そうつぶやき私は、去年からあてがわれている係長の机に鞄を置く。
やはりこうして、デスクの島の一番奥に座るのは気分がいい。
そう思い椅子に座ったとき、声をかけられた。
「お~、桐嶋君、桐嶋君!よかったもう出てたか。始業前で悪いんだが局長が君に会いたいそうだから、今すぐに局長室に行ってくれるか?」
声をかけてきたのは、直属の上司である課長だった。
「局長が私に?どういった御用なのでしょうか?」
椅子から立ち上がり私がそう尋ねると、課長がニヤッと笑いながら言った。
「そりゃあ君さ、この時期っていやあ異動の時期だし、局長直々に内示のお達しがあるんじゃないの?ひょっとすると課長補佐か??いや~、桐嶋君とは今後も仲良くしたいね!」
そんなおどける課長に、私もまんざらではなくなってくる。
「そんなまさか・・・とにかく行ってきます。」
そわそわしながら駆け出す私に「おう、しっかり椅子とって来いよ!」と課長は手を上げて私を見送った。
国土運輸省 道路局 局長室前
扶桑国の国道を管理する道路局。その長の部屋の前にやってきた。少し深呼吸をして、意を決して扉をノックする。
コンコン・・・「国道管理課 第3係 桐嶋亜莉朱です。」
「入りなさい」
そう告げると中から男性の声が聞こえてきた。声の促すままに局長室のドアを開ける。
「失礼いたします。」
私は一歩入室し頭を下げる。そして少し部屋を見渡した。
内装は至ってシンプルだ、ナチュラルウッドの色彩にまとめられた部屋は柔らかい雰囲気の中に温かみを感じさせる。
しかし、部屋の一番奥に国土運輸省旗と国旗が掲げられていることや、重厚な机の上には「国土運輸省 道路局長」のプレートが鎮座していることから、ここが今の私には異世界なのだと嫌でも認識させられ、緊張が走る。
「わざわざ来てもらってすまないね。他の人には聞かせられない内容だから・・・。」
そう言って局長は、私に声をかけた。
「いえ、局長からのお呼び出しでしたら、何処へなりともお伺い致します。」
そう言いながら、私は局長のデスクの前まで歩いて行き、デスクの前で直立の姿勢をとる。
「今日来てもらったのは、来年度の人事の件だ。まどろっこしいのはやめにして、単刀直入に行こう。君には課長補佐の職についてもらいたい。承諾してくれるかな?」
きた、きたきたきたきた!!!課長補佐だ!!完全に出世コースに乗った!
内心ガッツポーズをするが、それでも、顔には出さず涼やかに答えた。
「その任、謹んで拝命いたします。」
30度の敬礼をしながら答える私に、局長は満足そうに答えた。
「結構。では辞令を伝える。国土運輸省 道路局 道路管理課第3係長 桐嶋亜莉朱。
3月31日付けでその任を解き、4月1日を以て 同省 先端諸島開発局 先端島土木事務所 調査課 課長補佐に任ずる!」
「・・・・・そ、それは・・・・・・・・・・・」
その言葉を聞いた瞬間、目の前がゆがんで見えた。これは左遷だ。文字通りの島流しだ。
そう、今この時、私は出世コースから外れたことが確定したのだった。
最後までお読みいただいて、ありがとうございました。
現状、物語の構想自体は大方終わっています。
ある程度書き貯めもしてありますので、
読んでいただけた方が、楽しみにしていただけるようでしたら
出来るだけコンスタントに投稿していきたいと思います。
また、段組や文章構成もいろいろ勉強して適宜修正して行きます。
皆様、どうぞよろしくお願い致します。