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  作者: ゆずりは
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-弐-

 



 夏になった。

 月日を追うごとに幸音の事を知れていくのが嬉しかった。中でも一番の驚きは幸音の才能である。何をやらせても平均以上をやってのける。お琴も薙刀も読み書きも。

 そして何より博識だった。


「お父様がね、本を集めるのが趣味なんだ。だから家にはたくさん本があるの。でもね、私に言わせればお父様は買うのが趣味なんだよ。だって開きもしないんだから」


 だいぶ慣れてきて、幸音は本来の口調へと変わっていた。入学式のあの日に聞いた口調は、本人に言わせれば余所行きらしい。


「え?でも気になったから買ったんじゃないの?」

「そう思うでしょ?でも読んでるところなんて見たことないんだよ。それじゃあ本がかわいそうでしょ?だから気になった本を書斎から抜いて読んでいるの。」


 なるほど。だからその知識量というわけだ。


「幸音はお洒落で博識で運動神経もいいわ。羨ましい」


 最近は通学路の途中にある川の土手に腰を下ろし話をするのが日課になっている。だからいつものように芝の上に寝転んだ幸音へ視線を向けた。

 何故だろう。幸音は少し寂しそうだ。



「羨ましいのは私だよ」


 覗き込むように俯いた私の頬へ触れ、幸音は呟くように言った。


「麻耶はおしとやかで落ち着いてて、誰とでも仲良くなれる。私にはそんなものはない」


 だから、と言葉を続けながら指を滑らせ髪へ触れる。



「麻耶を食べたらそうなれるのかなって、思うときがあるの」



 普通なら気が触れたとでも言うのだろう。

 でもわたしは、あぁそうなれたらいいのにな、と思ってしまったのだ。もうこの時には自分の気持ちに気づいていた。

 幸音が大好きなんだと。



 幸音が私をどう思っていたのかは分からない。でも、その時の彼女は意を決した表情で赤面していた。それがどう言う意味なのか、分からない訳がなかった。




 夏は一瞬で過ぎていく。

 お祭りも星空鑑賞も川遊びも。全て幸音と一緒だった。いつだって幸音が居てくれた。幸音がいてくれればそれだけでよかった。

 重ねた手の温もり。それ以外何も知らない。

 それだけが唯一の繋がりであった。




 迎えた秋は気持ちをざわつかせた。幸音が体調を崩したのである。原因はただの風邪。でも、心が落ち着かないのだ。その原因はすぐにわかった。





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