第一話
「FASD。アキハバラとサッポロにて外来能力種が暴れている模様。本部に急行せよ。直ちに命令する。本部に急行せよ。」
昼下がり。食堂で遅い昼飯を食べている最中館内に俺等への命令が響き渡る。その命令を聞き、俺は残っていた天丼を慌てて食し、片付ける。
「‥‥なんで、ゆっくり御飯も食べれないかなぁ。ま、何時もの事か。」
そう。何時もの事だ。
何時も通り、俺等は仕事をする。
異能力から人々を守る為に。
2550年。人類はある発展を遂げる。『異能力薬』を作ったのだ。異能力‥それは人間では無い力。異端の能力。それまではSF小説の話だとされていたその力を世界政府の科学者達は作り出したのだ。世は世界大戦真っ只中。政府はこの力を使い、世界を治めることに成功した。然し、とある事件により何者かによって製造方法が流出。異能力薬は瞬く間に世界中に広まり、異能力薬を使用した者達が徐々に増え初め次々に事件を起こし始めたのだった。世界政府は異能力薬を無許可で使用する者を『外来能力種』と呼ぶ事を決定。外来能力種を捕らえる事にする。そして、それは日本でも同じく。世界政府に最も近かった日本では外来能力種を捕獲及び研究する特別組織を発足。人々は彼等を
Grass beast
と呼ぶ。彼等は政府の許可を受け異能力を所持する。そして、そんな彼等の中には直接的に外来能力種を捕獲及び抹殺する許可を持つ特別班があった。その班の名を
FASD正式名称『外来能力種消滅班』
といった。
FASDの隊員高石勇が向うと既に出張で無い隊員が揃っていた。あれ、自分が最後か‥等とぼんやり思っていると隊員の中心にいた目に傷をつけた男が高石の前に立つ。その顔は‥鬼である。
「高石!遅い!直ちに急行しろと言っただろう!」
「うへぇ。土岐さん‥そんなにカリカリしなくても良いじゃ無いですか‥。なんです?真逆、また外来の奴が日本を変えるぅとか何とか言ってるんです?」
「その真逆だ。サッポロのクソ外来種が日本を俺が変える、今の日本は駄目だ、俺が日本の新天皇になると叫んでる。ふざけやがって!今の日本に何の不満がある!貴様が天皇になったら俺が革命を起こして俺の刀で斬首にしてやる!!」
そう言って自身の日本刀を高く突き上げる男。土岐一。齢は32歳でFASDのリーダーである彼は日本への愛国心が強い。当然、FASDでは一番の実力者だがその実力以上に愛国心の塊。要するに日本の犬である。
「まあまあ、一ちゃん。落ち着きなさいな。あなたが怒る気持ちがわからなく無いわ。でも、まずはアキハバラとサッポロに行くメンバーを決めましょう。」
そう言って土岐の口に飴を放り込む女性。五月雨弥生。齢は65歳でFASDだけでなくGrass beast内の最高年齢隊員。そう、おばあちゃんである。
「あ~、そういや‥雨さんも洋さんも出張中でしたねぇ。」
「そうだ。だから、お前と梶田の2人でアキハバラに行け。俺と弥生さんはサッポロにいるクソ外来種を殺る。」
「ラジャー。ところで梶田さんは?」
入室した当初から姿が見えて居ない梶田について聞くと土岐は苛ついた様子で何時ものだと答えた。
「‥また、何時ものですか。分かりました。そんじゃ、俺は先に行ってますね。絶対に時間がかかるんで。」
「あぁ。怪我をしないように。あと、相手は大型化の能力らしい。科学特定班の奴等がサンプルを欲してる。」
捜査班による資料を高石に渡しながら土岐が言うと高石はわかってます〜とのんびり返答しながら本部の転送装置に乗った。