んでちょっとくつろいでたな
そしてスライムはユーリではなく俺の方を見ている気がする。
見た目では何処を見ているか分からないが、スライムから殺気のようなものを感じた。
「なあ…あのスライム俺の事を狙ってないか?」
「そうね、私達が恋人に見えたのねきっと。私に同じ苦しみを与える為に一を狙ってるって所かしら。一に狙いがいったのは幸いね。さあ一!初めての戦闘よ!頑張りなさい!」
てめぇの血は何色だああああ!
なにこの敵にも味方にも優しくない剣士!
いやコイツもう剣士じゃない、とにかく戦闘をしたい、させたいだけのただの戦闘狂だよ。
「くそっやるしかないか!」
そう言って覚悟を決めた瞬間、スライムの方から俺に飛びかかって来た。
さっきまでの恋人…恋スラと一緒に居た時とはうってかわり、半液体状の体を伸ばしながら素早い動きで向かって来た。
反射的に体を仰け反らせ、運良くスライムの攻撃を躱す事ができた。まぁあのぷよぷよしている体が当たった所でそこまでダメージは無さそうだが。
スライムが着地するところに丁度小さな鳥が居た、その虫はスライムの中に取り込まれた瞬間、一瞬でその姿を消した。
前言撤回、あれに触ったら即アウトだ。
「あの消化速度…どうやら怒りでレベルアップして更に覚醒してるようね、気をつけて!少しでも攻撃されたら骨も残らないわ!」
レベルアップとか覚醒とか、普通するのって俺の方じゃない?敵が覚醒する初バトルとか聞いたこと無いんだが!?
そもそも覚醒する原因作ったのあの女のせいなのに何故他人事なの!?
しかしあの速さ、少しでも油断してたらやられてしまう。俺の攻撃が効かなかった時、それは大きな隙になってしまう。この短剣で確実にやれるだろうか。
「おいユーリ!この短剣で本当に倒せるのか!?溶けたりしないのか!?」
「溶かされるより速く剣を振れば大丈夫よ!」
「アドバイス雑っ!くそ!シャラ!こいつの弱点とか何か…シャラ?」
「…んぅ、んー?何か言った一?」
あいつ…遠ーくにいるなぁー、確実にスライムの射程距離外にいやがんなぁ、んでちょっとくつろいでたな、俺が必死に戦ってる上空であいつくつろいでたな。
「せめて近くに居てくれよ相棒!」
「そんな…相棒だなんて…アタシ、一の力になんてまだ全然なれて無いのに…それでも…それでも私を相棒って呼んでくれるの?」
「皮肉だよ!んな感動の場面じゃねぇよ今!生と死の狭間だよ今お前の相棒は!」
「あっははー、ツッコミ入れる余裕あるなら大丈夫!で、何?」
「スライムの弱点ってなんなんだ!?」
「スライムの弱点かぁー、基本的にスライムは属性攻撃ならなんでも効くよ?炎で燃やしても氷で固めても雷で痺れさせても。」
「属性っつったって今の俺には炎も氷も雷も…いや…」
一つだけ俺には属性があった。
しかしあれは…
だが悩んでる暇は無い、今もスライムは俺に狙いを定めて飛びかかってくる、そして徐々にその精度は上がってきているのだから。
最初は身構えていれば躱すのに余裕もあったが、今はスライムが休む隙も無く飛びかかってくる。
あの消化速度を見る限り溶けるより速く剣を振るのは難しい…。
「やるしか…ないか…!」
俺は初めての戦闘と同等かそれ以上の覚悟を決めて意味もなく叫んだ。
「能力解放!!」