コンビニとかで可愛い店員がお釣りを渡す時の様なあの感じ
冒険者登録が終わった俺たちは、別の間へと移動していた。
向かいにはフィアさんが居て周りにはユーリとシャラが居る、この空間自体は何か特別なものがあるわけでも無い、普通の空間だった。
「こほん、えーでは、今から一さんの能力を解析しようと思います。」
そう言ってフィアさんは眼鏡をかけて話し始めた。形から入ろうとする所可愛いな。
こんな可愛い人からお願いされたら何でもオッケーしてしまうに決まってるじゃないか!
「ではまず一さん、能力を見せてください。」
「断る。」
ごめん、何でもオッケーじゃなかった。もうあの能力解放したくない!熱くて痛くて嫌だ!
「その能力の事なんだけど、一って叫んで能力解放してたじゃない?さっきの戦闘見る限り気合いを入れると能力も強くなってるっぽいし、叫ばずに普通に言えばそこまで熱くならないんじゃない?」
と、ユーリが一つの仮説を立ててきた。
確かに俺の能力解放した時は二回とも叫んでいたが…だが…
「能力解放。」
と、俺は静かに言った。すると今までの光と比べ、弱く右手が光り、手の方もほんのり温かいだけだった。
「意味あんじゃん!叫ぶ意味めっちゃあんじゃん!!」
「あ、あれー?ホントだー?あはは、まーアタシも能力の事理解してる訳じゃ無いし。それに多分何も言わなくても一は能力解放の時叫んでたでしょ?」
それを言われたら叫んでいたとしか言えないが、とりあえずシャラもその場のノリだけで発言する事が多いので全てを簡単に信じないようにしようと、俺は心の中で思った。
話が少し逸れてしまったので、お馴染みのフィアさんのこほんで話を戻してもらおう。
「こほん、えー、それでは少し失礼しますね。」
そう言ってフィアさんは俺の右手に両手を挟んできた、コンビニとかで可愛い店員がお釣りを渡す時の様なあの感じで。
男はみんな単純だから「あれ?この娘、俺の事好きなんじゃね?」と勘違いしてしまうあの感じで俺の手に触れてきた。
いや、しかし今までこんな事で勘違いするなんて有り得ない事と思っていたが、実際やられてみるとこれはあながち勘違いでもないのかもしれない。
好意の無い相手にこの様な手の触れ方ができるだろうか?いやできない!これはきっと俺の事が好きだというサインに違いない。あぁ、早速俺はこの異世界で俺に好意を寄せる女性を作ってしまったのか、しかし惚れられるようなフラグを建てた覚えも無いが…つまり一目惚れか!俺の魅力は現実世界では輝かなかったが異世界では俺は無条件に多くの女性から好意を抱かられる様になってしまったのか、うんうん、そういう事なら仕方ない。能力も大した能力じゃなかった今、多数の女性が好意を向けるという事のみが俺の異世界で残された唯一のチート能力だ。この能力で俺はのし上がってみせるぜ!ハーレム王に俺はなる!
「一応、勘違いする馬鹿が多いから、一応、言っておくけど、フィアのその行為は能力を調べるのに必要な作業であり、決して全く全然好意とか無いから、その辺勘違いしない様にね。」
「そそそそそんな勘違い!すすする訳ないじゃないでしゅかぁっ!」
ふう、危なかった。あまりにも慣れない事すぎて思考が暴走してしまった。
「ユーリさん、そんな言い方酷いですよ?」
「これだけ言っても勘違いする馬鹿が居るんだからしょうがないでしょ。それとも今まで好意でその動作をした事あんの?」
「いえ全く全然無いですけど。」
僅かな望みすらばっさり切ってくれてありがとうございます。
確かにそう言いながらも俺には実は特別なんじゃ…と思っている俺がまだいたので男とは本当に馬鹿な生き物だなと改めて思った。
また話が逸れてしまった。またこほんを聞けると思ったがフィアさんは何も言わず俺の右手に注目し始めた。
「ふむふん、なるほどなるほど、確かにこれは…。」
いちいち動作と発言が可愛いなこの娘、これは勘違いする男が悪いと言うより勘違いさせるフィアさんも少なからず悪いんじゃないか?もちろんフィアさんは無自覚なんだろうけど、多分。
するとフィアさんは俺の手から両手を離し、俺の前に向かい直した。
あぁ…もう少しあの手の感触を味わっていたかった…
「分かりました。一さんの能力の属性が。」
一呼吸置いてフィアさんは続けて言った。
「一さん、貴方の能力は光属性です。それも神の加護が付いた強力な。」