なんちゃって剣姫様
「あっ、そう言えば。」
もうすぐ街に着くであろうという時に、ユーリが何かを思い出したかのように俺に話しかけてきた。
「ん、どうしたんだ?」
「一の今回の能力なんだけど、少し分かった事があるかもしれないの。」
俺の能力について分かった事?
俺の能力は…
「手が光る、光って熱くなる、気合い入れたら更に光って更に熱くなる。それ以外に何があるんだよ。」
自分で言葉にすると悲しい能力だなと、改めて実感する。まあ、この能力のおかげであのスライムも倒せた訳だから、全然使えない能力って訳じゃ無かったが。
「その光るって所、それはただ光ってるだけじゃ無いって事。とりあえず、ギルドに着いたらアイツに見てもらいましょう。話はそれからよ。」
「アイツ?」
「フィアよ、あの娘能力の属性とか解析するの得意だから。」
属性?俺の今日のこの能力には何か属性があるって言うのか?
あってクソ弱い火属性とかそんなんじゃないのか?
しかしユーリの顔は初めの頃の哀れむ感じでは無く、何かある一つの確信を持った、そんな顔をしていた。
そして、丁度その話がひと段落着いた時、俺たちは街に着いた。
「あっお帰りなさい!どうでしたか成果は?」
ギルドの中に入ったら、丁度荷物を運んでいるフィアさんと出会った。
「はい、何とかゲットできました。」
「それは良かったです。では冒険者登録を致しますので、受付までどうぞ。」
そう言われて俺たちは受付まで移動し、冒険者登録を始めた。
「こほん、ではまず、ドロップアイテムを確認させていただきます。」
「ああ、苦労して手に入れたぜ、はい。」
そう言って俺はフィアさんの前にスライムのコアを出した。いや、本当に苦労した。スライムからの攻撃は受けていないのに満身創痍だった。
するとフィアさんは最初にくすりと笑って話し始めた。
「スライムなんかで苦労してたらこの先冒険者として大変ですよー……あらっ?」
笑顔だったフィアさんの顔が不思議な物を見るような顔に変わった。
「…このコア、覚醒していません?それにこの質、レベルも中々高いスライムを倒したんじゃ無いですか?」
「いや、それは…」
「ユーリさんが一緒に居て不正は有り得ないですけど…これ本当に一さんが倒したんですか?」
「えぇ、まあ。」
「…別に普通のスライムでよかったんですよ?」
知ってるよ!俺だってあんな苦労はしたく無かったよ!
「いえ、あの怒り状態はとても逃げれなくて、戦うしか無い状況だったもので…」
「何でそんなスライムの怒りを…」
「それはね!」
ここでいきなりユーリが話に割り込んできた。
何故か誇らしげな顔をしながら。
「それは私が恋人…恋スラの彼女の方を倒したからよ!それに怒ったスライムはターゲットを一に向けたって訳!それを無事倒し私のおかげで一は他の冒険者より良い経験が出来たって訳!」
分かった、こいつ黙ってても自分のせいってバレるから先に自供して少しでも良い印象で語ろうとしてる訳か。
「つまりユーリさんが余計な事をしたせいで一さんが無駄に危険に晒されたという事ですね。」
しかしフィアさんにはユーリの作戦は通じなかった。
「いやっ、だから、それは私が一を成長させようと…」
「成長させるのは冒険者になってからでいいですよね?どうせいつもの様に良いところ見せようと後先考えずに先走っただけですよね?」
「んぐっ!」
「はぁー…そんな無駄な見栄張って今まで良い事あった事なんて一度も無いじゃ無いですか。」
「ううっ!」
「そういう所があるから一部の人からなんちゃって剣姫様とか剣士の皮を被った狂戦士とか言われちゃうんですよ。」
「うぅぐ!…って!誰よそんな事言ってる奴は!」
「とにかく!一歩間違えれば本当に命を落としてた可能性もあるんですよ!これからは本当に気をつけて下さい!」
「はぁい…」
一通りユーリへの説教が終わり、フィアさんはしょんぼりしたユーリから俺の方を向き、頭を下げた。
「一さんが危険な目にあったのもユーリさんを推薦した私の責任でもあります。本当にすみませんでした。」
「いやいや、頭を上げて下さい、もう済んだ事ですし。能力についても少し理解できたし、結果オーライってやつです。」
「能力?って…あの例の?」
「そうだった!フィア、お願いがあるんだけど!」
「何ですか?なんちゃって剣姫様?」
「言ってんのアンタか!ええい、今はいいわそんな事。フィア、コイツの能力調べてくれない?」
「一さんの…能力を?」