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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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約束の再戦

眠くて寝落ちして投稿時間を過ぎてしまうかもしれないので早く投稿させていただきました。

次回更新は三日後になります。

ついにこの時が来てしまったか、あっちにとっては待ちに待ったと言ってもいいのだろうけど。


「ふふ、ワクワクしますわね闘司さん。」

「そーですねー。」

「気持ちが込められていませんがまあいいでしょう。さっ、そろそろ始まりますわよ。」

「うぇーい……。」


今日は闘技大会の頂点を決める試合のはずなのに、全然緊張をしていない。

それもそのはず、今日のこの試合はたまにやるリュリーティアさんとの手合わせの延長線上みたいなものなんだから、ただリュリーティアさんがちょっと本気で襲ってくるだけなんだから。

あれおかしいな急に足が震えてきたぞ、ははは武者震いかな?


「開始前から怯えないでもらえます?」

「だってだって! リュリーティアさんの本気とか想像しただけで超怖いですよ!? 今まで闘ってきた人達なんかクソ喰らえと思える程の恐怖と今は戦っているんですから……!」

「褒め言葉と受け取って宜しいのかしら。」


本気ではない試合は何度かやってはきた、もちろん全て俺が負けているがな。

なので正直な気持ち、本気で闘うことになるリュリーティアさんに勝てる気がしない、情けない話ではあるけれど許してほしい。


「それと闘司さん、負ける気持ちを持って中途半端にやらないでくださいね。その時は冗談抜きで怒りますので覚えておいてください。」


うぐぐ……退路を塞ぎに掛かられた。

それにリュリーティアさんが冗談抜きで怒るだと? 冗談が含まれてても恐ろしいのに一体どんな地獄を見ることになるのやら。


「具体的にどう怒るかと言いますと、シャルルさんに対しての接触を二週間禁止させます。」

「よっしゃオラ始めっぞー!! 剣でも槍でもかかってこんかいバーロー!!」

「はぁ……まあやる気が出たならいいですわ。」


二週間もシャルルと触れ合えないなんて死刑宣告されたも同然だ、誠心誠意挑ませてもらいます。

本当にそろそろ始まる時間だ、審判に従って向かい合っての位置へとお互いに立つ。

さてと、緊張しないと思ってはいたけど知らぬ間に力が入っていた肩の緊張がほぐれていた、普段通りの会話が出来たからだろう。

そういう所によく気が回るリュリーティアさんには本当に敵わない。


「只今より、サラマッド闘技大会優勝決定戦を開始致します。両者構えて、いざ尋常に……始めっ!!」


[敵意を確認、能力値上昇]


すぐに鳴り渡る警告、何も武器を構えてないリュリーティアさんがそのまま駆けてきた。

魔法、いや格闘術か……?


「くそ、とにかく迎え撃たなきゃ!?」


俺が鞘から剣を抜くと同時にリュリーティアさんも走りながら剣を抜いてきた、驚きながらも袈裟斬りをすると真似するように袈裟斬りを返してくる。

ギンという金属音を立てて二つの剣が重なりあう形になった。

一度剣を引いて振るうとまた同じ動きをして返される、何回かそれが続いた時に動きが完全に読まれていることに気付かされる。


「闘司さん前に教えたことを忘れておりますわよ。」

「戦闘中なのに優しいご指導どうも……です!」


剣をしまい素早く槍へと持ち替えて突きの動作をする、しかしそれさえも真似をされていて同じように槍が俺の肩を掠めていた。


「自分はちゃっかり避けててズルいですね。」

「あら、ごめんあそばせ。」

「それに、試合前に俺に何の武器を使うか聞いたのはわざわざコレをするためだったんですか? 底意地が悪いですよリュリーティアさん。」


会場に入る前になんでそんな事を聞いてきたのか謎だったけど、まさかこんなエンターティナーみたいな事をするとは思わなかった。


「多少の遊び心は必要かと思いまして、ですが闘司さんにとっては良いことだと思いますわよ。一見同じ動きに見える中、こうやって攻撃を受ける者と受けない者の動きの違いが分かるのですから。」


ありがたいけど試合中にそんないつもの訓練みたいな事をされてもって感じなんですよリュリーティアさん。


「今度は(ワタクシ)から攻めさせてもらいますわよ。」

「お手柔らかにお願いします。」


剣に変えることはしないでそのまま槍で攻め立ててくる、突きや薙ぎといった攻撃を多彩に混ぜ合わせた攻撃に俺はただついていくだけで精一杯だ。

だけど防ぎながらよく見るんだ、相手の足の位置や腕の高さそれに目線だって攻撃箇所を絞れる材料になると教わったはずだ。


「思い出してきましたわね。では準備運動はここまでです、今から(ワタクシ)も全てを使っていきますわよ。」


全てだって……?

わざわざそれを口に出すということは何か意味を含めてるはずだ、全てっていうと……。


「うわっ!?」


槍を捌きながら地面を踏み直そうとした途端、急に地面が崩れて穴が空いた。

お陰で態勢が崩れてしまう、しかも槍が上手く扱えずに身体に何度も傷を負わされていく。

とりあえず闇雲に槍を大きく振って距離を取らせて、その隙に窪んだ地面から足を引き抜く。


「痛い痛い……アクアヒール。」


刺された箇所を魔法で塞ぐ、しかしなんで俺は魔法の事を頭に入れなかったんだ、まったく大バカ野郎の八代闘司め。

魔法が加わったことでリュリーティアさんのとる行動の幅が広がった、たしか火と土の魔法の二種類を使うんだよな。

今みたいな近接戦で土魔法で足場を崩されちゃたまったものじゃないので気をつけるとしよう。

崩れた足場に視線を移す、足場は上から俺の水の魔法で凍らせれば問題ないか。


「でもいちいち魔法を使っていたら魔力が心配だな……。」

「あまり喋らない方がよろしいと思いますわよ、隙だらけですもの。」

「はっ?」


後ろ……!? 今目の前にいたと思っていたリュリーティアさんはいつの間にか背後に立っていた。

なんとか振り返ろうとして身体を動かすよりも早く背中を殴られて俺は少し宙に飛んだ、そこをリーチのある槍で叩き落とされる。


「うぐ……どんな動きしてるんですか……。」

「ほらまた、ですわ。」


眼前には火の波が迫りくる、対抗して水の波で打ち消す事が出来たがリュリーティアさんの姿を見失うことになった。


「どこだ……?」

「上です。」

「がっ!?」


頭部に凄まじい衝撃を受ける、なんとリュリーティアさんは高いジャンプで飛んでからの回転カカト落としを喰らわしてきた。

あまりの威力に視界がグラグラと揺れている、まずいなこのままだと追撃をされる。


「派手に揺れるでしょう。さあ次も頑張って避けてくださ……立ち直りが早いですわね?」

「ゾンビのような男ですので。」


リュリーティアさんの二日酔い治しに使用した水の魔法、リフレッシュを使ったら目眩が無くなって気分が良くなった、この魔法汎用性高いな。

さすがにやられっぱなしはいけないし何より悔しいので今度はこっちの攻撃だ。


「ふっ!」


溶けにくい氷の槍を幾つも作り出して、手当たり次第に投げつける。


「何を、なさるのですかっ?」

「面白いことですよ。」


当然のように氷の槍は当たることはなく、軽く弾かれて床に転がったり地面に刺さったりしている。

それを確認した後に俺は本物の槍を構えてリュリーティアさんに突っ込んでいく。

紙一重で攻撃をかわされて槍を払い落とされてしまう、だかそれには目もくれず俺はすぐに地面に落ちたままの氷の槍を拾い上げて振るう。


「わざわざこんな事をするために魔力を使ったのですか?」

「俺なりの考えがあるんですよっ!!」


攻撃を繰り返す中地面に刺さる氷の槍をもう一つ手に取って二刀流ならぬ、二槍流として手数の多さを増やした。

氷の槍を砕かれてもまた地面の槍を拾い上げて攻撃を止めずに連撃の猛襲。


「いい考えですわね。 ですがそれは相手にとっても武器として使われ……なっ!?」


俺の攻撃を防ぎながらも同じように槍を手に取るリュリーティアさん、貴方なら取ってくれると思ってましたよ。

俺の意思によって魔法を操りリュリーティアさんが手に取る氷の槍を砕けさせる。

一瞬だけの驚き、だけどそれで攻撃は届く。

腕を叩きつけて槍を落とさせる、すかさずもう一撃と強く振るうがリュリーティアさんの足が赤く光り後方遠くへ飛び退ったことにより空を切ることになった。


「逃がさないですよ!」


だがこういう時のために沢山作っておいたのだ、最初と同じように槍を投げて、拾ってはまた投げる。


「鬱陶しいですわ!」


魔法で炎の壁を作り出される、氷の槍はそこにぶつかると同時に溶けて無くなってしまった。

なんということでしょう、あっという間に作戦を打破されてしまいました。

態勢を整えたリュリーティアさんは炎の壁を盾にしながら口角を上げた怖い笑顔で笑っている。


「うひゃー、こえー……。」

「お見事ですわ闘司さん、(ワタクシ)にこんなに上手く一撃を入れたのはコレが初めてではありませんかぁ!?」


何かスイッチが入ってしまったのかテンションがヤバげのリュリーティアさんは拳を握りしめて走ってくる。

アレは多分普通に肉弾戦を仕掛けてくる気だろうな、なら俺も応じるとしよう。


「い、き、ま、す、わ、よ!!」


うっかり殺されてしまうのではと思う気迫でラッシュを浴びせてくる、どの一撃をとっても風切り音が聞こえてくるので当たった時のダメージが想像しやすい。

ただ俺も格闘術なら武器を使うより自信はあるのだ、殴り蹴りを繰り出されていくなか俺は落ち着いて対処していく。

顔面へと拳が打ち出されるが最小限の動きで避けて手を掴み取る、そのまま攻撃の勢いを借りて地面へと押さえ込んでいく。


「ふっ。」


しかしリュリーティアさんは身体をねじって俺の掴む手を払う、さらにはそこから回転蹴りを狙ってくるではないか。

なんとか片足を上げてそれを防ぎ今度はリュリーティアさんの胴を踏みつけるように足を落とすが、突如地面が盛り上がって壁を作りそれを阻止してきた。


「ズルいですね。」

「ズルくないですわ。」


一旦お互いに距離をとってからまたすぐに乱打の応酬、時折挟まれる魔法での牽制を含めて息付く間も与えないように攻撃の手を緩めない二人。

だけどそんな体力や魔力を無視した闘い方は双方に疲労として現れてくる。



「ハッハッ……。」

「ゴホッ……。」



肩で息をするように空気を体内に取り込もうとする、魔力量も残り少ないのか身体が気怠い。

こうなった以上この試合、あと僅かでどちらかの勝利が決まることになるだろう。

リュリーティアさんもそれに気づいているのか疲れながらも楽しそうに笑いかけて、指をクイクイと動かして早く決めましょうと言わんばかりの挑発してくる。

それでこそリュリーティアさんだ、望み通り俺の最後の力をぶつけていきます。


「体力的にこれで俺は最後になると思います。なので俺の全力、しっかりと味わってください。」

(ワタクシ)も闘司さんと同様に限界が近いですわ。ですので、しっかりと堪能させていただきます。」


今までの魔力量を気にしてのペース配分を全て捨てて、強力なイメージを持って強大な魔法を放っていく。

地響きに似た音を立てながらステージ全部を飲み込まんとする勢いの濁流がリュリーティアさんへとさし迫る。

だが地面から分厚い土の壁が出現して濁流をリュリーティアさんの左右へと流して防がれてしまう、更には赤く燃え上がるように光る拳でその壁を殴って砕き破片を飛ばしてきた。

それを横に飛んで避けつつ氷の雨を頭上から降らせていく、完全に逃げきれなかったのかリュリーティアさんの身体には幾つか傷跡が残された。


「フレア!」


小さい太陽に似た火球がゆっくりと追尾して飛んでくる、仕方ないので攻撃の対象を火球に切り替えて魔法を放って消滅させる。

その間にリュリーティアさんは距離を詰めてきて槍をしならせて振り下ろしてきている、強力な魔法を打たせないように接近戦に切り替えてきたようだ。

ギリギリで俺も槍を取り出して重い一撃を受け止めることが出来たけど、リュリーティアさんは槍を手放して俺の側に踏み込んできていた。


「フッ!」


俺もすぐに槍を放してボディへと打ち込まれるパンチを受け止めるが、火の付与魔法で強化された拳は力強く火傷をするほどの熱を帯びていて思わず手をどけてしまった。

その隙を見逃してくれるわけもなく全身に攻撃を受けてしまう。

だけど俺は倒れない。水の付与魔法と回復の魔法を湯水のように使い、殴られる度に負っていく傷をすぐに治していく。

威力に特化して重い攻撃で沈めようとするリュリーティアさんと、それを無視して殴られながらガムシャラに反撃し返していく俺のゾンビアタック。

優雅な試合なんてものはそこに存在せず、あるのはただ泥臭い殴り合いだけだ。

そして二人の限界が近づいたのか、ダメージの蓄積によってバランスが乱れるリュリーティアさん、俺は魔力量が枯渇することによって起きる脱力感が襲い身体がふらつく。

共にそこをチャンスと見て、渾身の一撃を同時に打ち込む。

どちらもクリーンヒットとなってステージへと一緒に倒れそうになる時、大きな声が聞こえてきた。




「二人ともー! 頑張れーー!!!」




「っ!? ぐ……うぉらああああ!!」「くっ……! ハァアアアアッ!!」



シャルルの声援で俺とリュリーティアさんは同時に踏みとどまる。

そこから全力のさらに限界を超えて魔力を絞り出し、魔法でなんとか立っていられる程度の回復をして、正真正銘最後の一撃を繰り出した。











「強く、なりましたわね……。」


小さい声が耳に届いた。


「本当ですか? はは、だったら頑張ったかいがありますよ。」

「本当ですわ……。最初に会った時とは大違いです。」


リュリーティアさんは軽く微笑みながらそう言ってくれる、なんだかそれだけでとても満足した気持ちになるな。




「でも俺、リュリーティアさんに負けちゃいましたよ?」

「それでもです。」




俺は全身が倦怠感と痛みに包まれて動けなくなっており、仕方なくステージへと横たわっている。

それに結構気張らないと意識を失ってしまいそうだ。

そんな時に頭がひょいと持ち上げれられて、なにやら柔らかい所へと置かれる。


「えっ、なんですか急に。」

「健闘した闘司さんへのご褒美ですわ、喜びを噛み締めなさい。」


リュリーティアさんの顔が真上に現れる、なんとも素敵なことに俺は今リュリーティアさんに膝枕をしてもらえているようだ。

しかし普通自分で喜びを噛み締めなさいとか言いますかね、いや最高に噛み締めているけどもさ。

ああやばい、感触が気持ちよすぎてもう寝ちゃいそうだ。


「後は(ワタクシ)に任せてお眠りなさい。」

「いやでも……。」


リュリーティアさんだって俺との闘いで疲れて……あるぇー?


「闘司さん一人くらい担いで運ぶのはわけないですわ。」


気持ちよかった膝枕をすぐにやめて、俺はリュリーティアさんの肩へと担がれた。

あれれおかしいなー? さっき死力を尽くして闘っていた気がするのになんでリュリーティアさんはこんな元気に動けるんだろう、ちょっと泣けてきたぞ。


「大丈夫ですわ闘司さん。さっきはちゃんと全力で闘って(ワタクシ)も負けそうになりましたから、ただ……全力を出したからといってその後にまったく動けなくなるような事が(ワタクシ)には無いだけですので。」

「うわぁーーん! 言外に鍛え方が違うって言われてる気がするよぉー!」

「いずれ闘司さんもこうなりますわ。いえ、そうさせますわ。」


ウワーヤメローハナセー! あの特訓はもう嫌なんだー!


「ほら医務室に運ぶのですから暴れるのではありません。とうっ。」

「うっ!」











保たれていた意識はリュリーティアさんの手刀によって断ち切られた。

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