基礎を学ぶ・スキルとは
次回更新は2日後になります。
ここはココノエ宿屋の一室、団体客が来た時の為に使われる大宴会場だ。
そこにいるのはいつものメンバーである俺とシャルルとリュリーティアさん、そしてココノエ宿屋の若女将であるハナさんである。
一体どんな理由でここに集まったのか、その答えは俺達の前に立つ眼鏡をかけたこの方が教えてくれるだろう。
「闘司さんのためのお勉強会の開催ですわ、はい皆さん拍手。」
言葉に従い軽い拍手をする、一名だけ開幕から寝てしまっている可愛いエルフの男の子がいるけど起こさないように気をつけよう。
とにかくそうなのだ、今朝俺が何気なくリュリーティアさんに質問をしたことによって急遽この勉強会が開かれることになった。
質問したことはスキルについて、聞いたのは本当にただの興味本位だったのでここまでのことをされて少し驚いている。
でも前にシュルト城下町の騎士宿舎で魔法のアレコレを学んだ時に着用していた、異世界という雰囲気を壊してくる黒のスーツと眼鏡を身につけた女教師姿を見れるとあって俺は喜んでいた。
「今日はゲスト生徒でありこの場所を貸してくれたココノエ宿屋の若女将、ハナさんも共に加わって学んでもらいます。」
「あ、あのよろしくお願いします!」
女教師リュリーティアさんに紹介をされて緊張しながら挨拶をする、ハナさんは意外にもこういうことに興味があって強い参加希望を示していたので了承して一緒にいる次第だ。
「早速本題へといきましょう。本日の内容はスキルについてですわ。それでは闘司さん、スキルについてどういう理解をされておりますか?」
「はい、便利な物だなと思ってます。」
「なるほど、雑ですが合っています。スキルとは便利な物であり、補助機能とも呼ばれております。」
「補助機能……ですか?」
なんか随分と華のない呼び方だな。
「はい、例えば闘司さんの……そういえばハナさんに闘司さんのスキルを話してしまっても宜しいのですか?」
何でそんなことを……あっそうか、神様から貰った特別なスキルとかあるしもしかしたら俺が異世界人とか分かっちゃうかもしれないのか。
うーんでもハナさんなら別に大丈夫そうだけどな。
「へっ!? あ、あの秘密な事でしたら私は絶対に他の人に話したりしませんので!!」
「らしいので、大丈夫です。」
「あんまり簡単に信用するのもよくありませんが、私もハナさんなら言い広めたりしなさそうなのでお話するとしましょう。」
ペコりと頭を下げるハナさんに頷いてリュリーティアさんは話を続けた。
「闘司さんのスキルは全部で四つありますわね?」
「そうですね。ステータス変動と自動治癒、言語理解と自動図鑑記入の四つです。」
「四つもあるのですか。ヤツシロ様は凄いのですね。」
凄いのはそのスキルを渡した神様なので、俺を褒められても複雑な気持ちになってしまう。
「その自動治癒というスキル、これは身体が自然に傷を治すという普通の仕組みを手助けするという補助機能になります。」
ふんふんなーるほど。
「言語理解。これはどんなに聞き慣じみのない言葉であっても、自分にとって最も分かりやすく最も近い言葉へと換えてくれるスキルでしたわね。これは書いたり聞いたりして言葉を学べば身につく事を、手っ取り早く補助して身につけさせたという形の物でしょう。」
なんと素晴らしい、あんまり意識してないけど実はこのスキルが一番役に立っているのではなかろうか。
言葉が通じないという恐ろしさは日本で外国の方に道を訊ねられた時によーく身に染みている。
ましてや異世界で放り出されて異世界特有の言語があったりしたら俺はどうなっていたことやら、考えたくもない。
「そして自動図鑑記入。これは記憶の補助と言えばいいですわね。何かを見て誰かに会って未知を既知へと変えた時に記憶される。別にこのスキルが無くてもそれらを覚えることは誰にでも出来ます、しかしたまには忘れてしまうこともありますでしょう? それを無くしたりするための補助機能といったところですわ。」
たしかに今まであった人の名前とかはなんとなくだけど全部思い出せる。
「リュリーティア先生、ちなみにその記憶したことを思い出すと一緒にプチ情報とかが思い浮かぶんですけど、それは一体どういうことでしょうか?」
「なるほどそうなんですの……よく分からないので神様に聞いてくださいませ。」
はやい、思考時間が数秒しか無かったですよ。
考えるのが面倒だったとかそういうことじゃないですよね?
「別に説明が面倒とかではありませんのよ? 第一闘司さんのお持ちのスキルは私だって初めて聞いたものばかりなんです、全部説明しろと言われたら無理とお答えしますわ。それこそスキルを与えた方にお願いしますわ、神様さん御本人に。」
「か、神様ですか?」
「えっ? ああそうなんです、俺ちょっと神様とお知り合いでして。」
「へ、へぇ……そうなのですか凄いですね……。」
ハナさんが苦笑いを浮かべている。
それになんでだろう、さっきのハナさんの褒め言葉と違う感じがするのは気のせいなんだろうか。
頭がおかしい奴とか思われてたら今日の俺の枕はしっとりと濡れることになりそうだぞ。
「ということで、スキルが補助機能と呼ばれるのはそういう理由があります。」
「あれ、ステータス変動はどういう補助機能になるんですか?」
「そのスキルについてはもはや意味がわからないので無視します。」
「あっはい。」
ステータス変動については俺が異世界人とバレない、ひいては勇者と間違われないための補助という無茶苦茶な見解を置いておくことにしよう。
「そういえばリュリーティアさんもスキルって持ってるんですか?」
「ありますわよ。武器習熟というものでして、これは武器の上達が早くなるといった具合のスキルですの。」
「ほうほう。」
確かにリュリーティアさんは剣や槍だけでなく他の武器に関しても上手だ。多分この人の事だから一通り武器を試したんだろう、だから俺に色々な武器の使い方を教える事ができると。
ふと横から小さく手が挙げられてるのに気づいた。
「あの、私も一つスキルを持ってるんです。健脚というスキルなんですけど。」
「健脚ですか。早く走れるようになるスキルでしたわね。」
「はいそうです。でもこの宿屋の仕事には必要ないんですが……。」
「だ、大丈夫ですよハナさん! 廊下の雑巾がけとかが早くできるじゃないですか!」
慌ててフォローしたけど何言ってるんだ俺は。
「いいんですヤツシロ様……スキルがあるだけ幸せだと思っておりますので。」
「そうですわね、スキルというのは万人が持っているものではございませんもの。あるだけで感謝するべきだと思いますわ。」
そういうものなのか、だったらスキルを四つも持ってるってのは知られたら色々と面倒そうだな、より一層信頼出来る人以外にはひた隠していくとしよう。
「そういえばスキルが自分にあるっていうのはどうやったら分かるんですか?」
「それは八神のうちのどなたかが夢に現れて告げてくれることで分かります。基本は生まれた土地の近くにいる神がそれを担います、ここサラマッドですとサラマンダーがそうですわね。」
予想以上に敷居が低い神託だった。
「スキルについては大体こんなものですわね。他に質問はございます?」
「ないですね。とりあえずスキルは人に喋らない方が身のためだと分かりました。」
「それは闘司さんだけです、まず四つあるなんて知られただけで悪い人に連れていかれちゃいますわよ。」
「ヤツシロ様、私は決して口外致しませんのでご安心ください。」
「ははは、そんな大袈裟に構えなくても」「お願いしますわ、そうしてくれないと闘司さんの余生は実験動物として過ごすことになりますので。」
「私、絶対に他の人に話したりしません……!」
「何卒宜しくお願いします……!!」




