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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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闘技大会本戦Bブロック・2

次回更新は三日後になります。

今日は本戦二日目、一日目よりは緊張していない。

理由は簡単。



「トージ頑張ってねー!」



後ろの観客席から、他の人の歓声に負けない声量で応援をしてくれるシャルルの存在があるからだ。

一日目はリュリーティアさんの方を応援しに行ってしまったので、二日目の今日は俺の番ということなのだ。

シャルルに良いところ見せるぞー。


「両者所定の位置についてください。」


おっとと、あんまりシャルルを見すぎて試合に集中出来なくなってしまうのはダメだな。

指示に従って位置につく、そして俺の後に入場した前に立つ相手を確認する。


「ん……? なんだアレ?」


そこに立っていたのは全身真っ黒の鎧に身を包んだ、黒胡麻団子みたいな奴だった。

決してふざけた例えじゃなくて、フォルムが丸形で鎧の至る所に細かい棘みたいなものが付けられているからそう見えてしまう。


「事前の情報より更にえげつないことになってるじゃないか。」


酒場で仕入れた時のよりも相手の防具の密度が高まってしまっている。

予選などでは銀色のフルプレートに身を包み歩く騒音機とも言われていたんだけど、それが今や歩く黒胡麻団子と進化してしまってる。

注意深く見てみると、ご丁寧に関節部分まで防具で覆われているのが確認出来た。


「いくら防具に規制が無いからってアレはズルいだろ?!」


武器は指定の物だったり魔法付与禁止とかのルールが設けられているけど、防具には一切その様な事が記載されていない。

賢いやり方だなとは思うけどアレは少々やりすぎだ、どうやって攻略しろというのだろう。


「それでは試合を開始致します。」


ぐぬぬ、時間は待ってはくれない。

事前の情報は捨てて闘いながら攻略法を探していかなきゃな。


「いざ尋常に、始めっ!!」


まずは動かないで様子見だ、そもそも関節まで覆ってしまってどう動いてくるのか謎なのだからそれを見てみたい。


「お? おお?」


動いた、というかスムーズに歩いて近づいてくる。

足をみると中はどうなっているのかと不思議で仕方ない、それと膝が曲がっていないのにスタスタと向かってくるのでちょっと気持ち悪い。


[敵意を確認、能力値上昇]


スキルの発動と段々とこちらに近づいてくるので危険と判断して逃げることにする、しかし今度は相手が走って近づいてきた。


「こ、怖いよ!? なんでそのまん丸鎧で普通に走れるんだよ!!」


悪態をついてみても返ってくるのは丸い鎧が擦れる音だけ、それが尚更恐怖を与えてくる。

思いの外相手の足が早くて距離が縮まってしまった。すると相手が肩を俺に向けてそのままタックルをしてきた、両手を前に出して受け止める。


「いったい! このザラザラすごい痛い!」


なるほど、棘はこういうためなのかと手に刺さる棘を感じながら考える。

とりあえず痛みを堪えて未だにタックルをし続ける相手の身体を横に受け流す。

すかさず後ろを向くが、相手はすでに俺に向かってもう一度タックルをしようとしていた。


「なっ……俊敏だなコノヤロー!! シャッオラー!」


痛みを我慢して、タックルをしてきた相手を跳び箱を飛ぶように手をついて避ける。

すぐに首だけ後ろに回して相手を見ると、慣性とか色々無視した動きで反転をしていた。

よく見ると地面に引っ掻き傷が作られている。


「そういうことか……。」


鎧全体につけられた棘はどうやら足にもつけられており、それは攻撃だけでなくてスパイクみたいな役割も兼ねているのだと気づいた、急に動きを止めて次の動作に移れたのもそれのお陰だろう。


「まぁ気づけたところで……なっ!」


相手の俊敏さの秘密に気づけてもそれで終わりとはならない、今持っている剣や槍それに篭手を着けた格闘術などもあまり効かなそうなあの鎧をどうするかなのだ。

とりあえず受け止めるのは痛いので、いつも通り飛んで跳ねて転がって一生懸命に避けるのを繰り返す。


「ハァハァ……これじゃジリ貧だぞ。だったら一応、やってみるか。」


なんとなく答えは分かるけどやらないよりはマシなので剣を構える、変わらずタックルをしてくる相手とすれ違いざまに胴に一撃を入れる。

ガンという音はしたけど手応えはない、それに驚いたことに剣が少し欠けている。

普通の鎧なら結果は違ったかもしれないのだけど、あの鎧の棘が思った以上に剣にダメージを与えるらしい。


「厄介すぎる。」


関節まで鎧で覆われているのでそこを狙えもしない、そもそも穴が極端に少ないんだ。

目の部分は小さな穴、口の部分は物凄く細い縦の隙間がいくつか、着脱や酸素の問題について色々聞いてみたくなる。

攻撃は最大の防御じゃなくて、防御は最大の攻撃か。



「トージ! 武器がダメなら魔法だよー!」



ナイスセコンド。俺には頼りになるシャルル様がついているのだ、こんな程度でへこたれはしないぞ。

アドバイス通り水の魔法で対処するとして、どういう魔法を使っていけばいいかな。

凍らせるか……? でも凍るか謎だな、ルカ王女レベルなら楽勝なんだろうけど生憎俺だとそうはいかない。

スキルで魔力量が上がっているのか分からないし、それを抜きにして俺の少ない魔力量ベースでの無駄遣いは敗北へと一直線だ、自然と思考する時間が増えてしまう。


「うん? 今度はなんだ……?」


動きに慣れて避けることが容易になったのでひょいひょいと躱していたら、相手が別の行動を始めだした。

ただでさえあの鎧で処理が大変なのに相手がとった動きは予想を超えてきた。


「は、はぁ? 丸まった!?」


元々丸いフォルムではあったけれど、更に顔と両手足を内側に入れ込んでその姿は完全な球体となっていた。

そしてこちらに向かって勢いよく転がってくる、転がるごとに棘がガリガリと地面を削りながら迫ってくるので身の危険を受ける。

なので相手に背を向けて全力の逃走を開始する。



「ヤバイヤバイやばい! アレはちょっと洒落にならないってー!!」



右へ左へステージ内を縦横無尽に駆け抜ける俺、しかし棘を上手く利用してのハンドリングの高さが凄くてピッタリと俺の背後を追尾してくる。


「トージ逃げるな闘えー!」

「うわーん! そんなご無体なシャルルさーん!」


容赦のないシャルルの応援、カッコイイ所を見せると言っていたあの頃の俺はもういない……。

違うそうじゃない……今から、シャルルにそれを見せてやるんだ!

壁際まで近づいて逃げるのをやめて振り返る。



「そうさ、俺ならできる!かかってこ ……やっぱ無理ー!!」



すぐ目の前に迫る黒胡麻団子に恐れをなして俺はしゃがみこんだ、その時咄嗟に地面から斜め上に伸びていく氷の橋を作り上げておいた。

それに乗っかってポーンと勢いよく飛んだ相手は壁に思い切り強く激突をした、結構大きな音を立ててぶつかったのでもし俺に当たっていたらと思うと鳥肌が立ってくる。

相手はそのまま地面へと受身などもしないで落ちてきた、そして球体の姿そのままでピクリとも動かない。


「もしや……ラッキー展開?」


恐る恐る近づいて確認をする、鎧のせいで気絶しているのかどうか判断ができない。

もしかして罠か? そう簡単に俺は引っかからな……なんだアレ。

近づいて気づいたが鎧に小さな銀色の装飾と縦線が付いている、無性に気になったので気をつけて装飾を手に取ってみた。


「これ下に引っ張れるな。えい。」


ジィーという聞き覚えのある音を立てて下に引っ張ると驚きの事実が明らかとなった。


「こ、この鎧って着ぐるみ方式だったのか……!? それにこの銀色の装飾はファスナーかよ。」


色々謎は残っているけど、着脱の謎だけはいま解けた。

そして鎧の中から出てきた人は、大きな黒く丸い鎧とは対称的な色白でやせ細った男性であった。

多分激突の衝撃で鎧の中で頭を打ったのだろう、白目をむいて気絶をしていた。

それにちょっと鎧の中が臭う、あんな回転をしたからなのか鎧の中に吐瀉物(としゃぶつ)が……これ以上はやめておこう。


「な、なんにせよ俺は勝った! 勝ったんだ、いぇーい!」


いくら微妙な勝ち方だろうと終わりよければすべてよしって言葉があるんだ、勝てばよかろうなのだ!

自分を騙して喜んでいると、騒がしい会場のはずなのに一際耳に届く呟きが聞こえた。








「トージ……。」


心が張り裂けそうだった。

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