お早い旅立ち
俺とシャルルは大きな橋の手前で神様と対話をしている、いや共にキャンプをしている。
普通に聞くと気が触れたのかと思うが、言葉通りの意味で捉えてほしい。
「なるほどのぉ……確かにチミの本来の能力以下になるのはワシも想定外じゃったな、ワシうっかり」
「本当ですよ。なんで二度目の人生が始まってすぐに生死の境を彷徨うハメになるのか……。まぁこのスキルのお陰でマウントグリフォンは倒せたのはいいんですけど、ちゃんと改良してくれると嬉しいですね」
「分かっておるわい。うむむむ〜ほい、出来たぞ」
「早い、そして雑さを感じる」
「ほれほれ、まずは確認してみるといい。頭の中で念じるのじゃ」
そうしてみるとしよう。
[スキル-ステータス変動-の調整を確認致しました。]
-ステータス変動-
敵対した相手の能力値より少し上昇した状態になる。
相手がスキル等で能力上昇を図った場合、それに応じてこちらの能力も上方修正される。
使用者本人の能力値より下回る敵の場合は、能力は変動せずそのままとなる。
ふむふむ、これでまぁスライム事件はもう起こらなくなった良かった良かった。
[スキル-自動治癒-の調整を確認致しました。]
-自動治癒-
使用者の身体の傷を徐々に治癒する。
戦闘中の敵を撃破した場合、瞬時に傷は治癒される。
敵を変更、もしくは撤退した場合は上記の通り徐々に治癒される。
1日を目安に傷は完治する。
「神様これは」
「ふぉふぉふぉ、これはサービスじゃよ。これでワシのミスを帳消しにしておくれ。ああそうじゃ、チミの今の傷や汚れも綺麗にしておいてやろう」
「うわっ一瞬で元通りに……ありがとうございます!」
このスキルで死にかけた時はクソジジイと思ったけど素晴らしい神様じゃないか。
「地の文読めるんじゃがのう……、まあええわい。ところでシャルルと言ったかの? なんで闘司とシャルルはこんな所でキャンプしておるんじゃ?生憎ワシちょっと席を外していて見ていなかったんじゃ、天国から」
「えっ、いや、ぼくはえーっと」
「神様神様、シャルルは多分状況が掴めていないというかあなたの事が掴めていなくて混乱してるんです。俺が説明しますよ」
「そうかの? では頼むぞい」
別段仰々しく振り返ってもドラマ性はないけれど説明させていただこう。
俺たちはあの時マウントグリフォンを倒した。村の窮地を救ったのだ。
しかし俺の扱いは疫病神そのものだった。
「なんでトージが責められなきゃいけないのさ! トージは村のみんなを助けてくれたんだよ!?」
「ソイツが村に来なければマウントグリフォンはこの村を襲っては来なかったのじゃぞ。マウントグリフォンは確かにソイツを狙っておった。山から降りてきたソイツをな!」
「でも五年前にマウントグリフォンは一度村を襲ってきたじゃないか! だからボクの父さんと母さんは殺されて!!」
「その時は偶然襲ってきただけじゃろ。たまたま巻き込まれてお前を守るために、お前の父と母は死んだ。じゃが今回は明らかにこの者を狙っていたのじゃ。これをどう説明する? 分かれシャルルよ。マウントグリフォンを倒してくれたのは感謝する、しかし村は半壊して復旧するのに時間がかかる、この者が村にいたらまたモンスターが来るのではないかと村人は不安を抱く。この者をいま殺さず村から即刻出ていってもらうだけで済むのじゃ。責任はすぐ取ってもらわねばどうなるか、保証できぬぞ」
長老は捲し立てるようにシャルルに言いつけた。また反論などは許さないという態度で。
シャルルは下を向き唇を小さく噛むと言い放った。
「なら、ボクもこの村を出ていってトージに付いていきます」
「と、いうことで村を出てシュルト城下町を目指して今ここに至るんです」
「なるほどなるほど、よく分かったわい。ふむ……シャルルよ」
「は、はい!?」
「ああそう緊張しなくても大丈夫じゃよ。この闘司のように気楽に接してくれたまえ。それより、ありがとうの」
「えっ?」
「お主は見ず知らずのこの闘司の命を救うだけでなく、守り庇ってくれたのじゃ。その優しさを称賛してお主に一つ贈り物を授けよう」
なんか俺の対応とは違うキャラで神様はシャルルに手をかざした。
シャルルの身体が少しではあるがほのかに緑色に輝いてそして元に戻っていった。
「神様? シャルルに一体何を?」
「うむ、一つ素敵なモノを与えただけじゃよ。ワシ、グッドじゃろ?」
うん、色々イラッとしたけど無視しよう。
「シャルル、身体は何ともないか? 痛かったりしないか?」
「うん、平気だよトージ。むしろ何だか周りの風の音が良く聴こえるというか」
「何も変なことはしておらんよ。シャルルは風を操る魔法が得意じゃったろ。だから加護を与えたのじゃ。ジンの加護をの」
「ジン様の!?」
シャルルは目を見開いて驚いていた。
「それって凄いのか?」
「凄いなんてものじゃないよトージ! ジン様の加護は普通の魔法適性が高いとかそういうレベルじゃないんだよ!! 直接そのジン様の力を借りれる様なものなんだ!」
「お、おぉう……」
目をキラキラさせながらズズいと近づいて興奮して俺に話してくるシャルル。うわー睫毛長ーい。
「ちなみに風の魔法というよりも天候を操作する魔法といった方が早いかの、ジンの魔法は。風の刃も出せるが、雷も出せるし雲も操れるぞ」
「うわーい! 神様ありがとーあはは!」
「ほっほっほ、孫が出来たみたいじゃ」
シャルルが神様にハグして喜びを伝えている。
良いなチクショウ。
「んで、もう用は済んだでしょ神様。なら戻ったほうがいいんじゃないですか?」
「チミ最高に素っ気なく言うのね……まぁええわい。じゃワシは帰るとするわい。闘司よ、気をつけて二度目の人生をな。シャルルよ闘司を頼むぞ」
「うん! 任せてよ神様!」
「あーはいはい神様ありがとうございました。ではいつかまた」
神様はひらひらと手を振るとそのままパッと一瞬で消えてしまった。
シャルルはまだ興奮しているようだ。
「トージはすごいなぁ、神様とお友達だなんて! マウントグリフォンを倒したあの力も神様がくれたんでしょ? それに、ジン様の加護をあんなに簡単にボクにくれるなんて! 本当にすごいや!」
「そんなに嬉しかったのか? その加護ってやつは。」
「うん! もちろん強くなったのは嬉しいんだけど、これでしっかりとトージのことを守ることが出来るんだもん、嬉しいに決まってるよ!」
俺はシャルルに攻略されているのか? だとしたらもうルート突入してもいいくらい好感度が貯まってしまってる。
好感度がメーターから溢れ出てるくらいだ。
「ふふっ、嬉しいなぁ」
こんなに心優しい少年を村から追い出す形にさせてしまったのは本当に心が傷む。
この眩しい笑顔を守れるように、俺も二度目の人生を頑張って楽しんでいくとしようかな。
さて明日はあのシュルト城下町を目指して行くことだし、しっかりと休息を取らないといけないな。
「シャルル、そろそろ寝るとしようか」
「うん!」
予め村から奪う、もとい拝借してきた毛布を敷いていた所に寝転がる。
「……シャルル、なんで一緒に?」
「? だってこれしか敷くもの無かったし。ちょっと狭いけど我慢してね?」
疲れが溜まっていたのかシャルルはすぐに寝息をたてはじめた。
俺は空が明るくなりかけた頃ようやく意識を失った。




