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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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闘技大会本戦Bブロック

次回更新は三日後になります。

二人と別れて試合へと挑むことになったのだがえらいことになってしまった。

身体に細かい傷を付けながらそう思う、そしてまた一つ小さな穴を空けられてしまった。


「いたっ……くっそ……。」

「ほらほらどうしたんだい? 私に大層な事を言った割には全然攻撃をしてこないじゃないか。まあ小物がやりそうな振る舞いではあるな。」


腹立つサラサラの茶髪をかきあげて、腹立つ笑顔で腹立つ言葉を投げかけてくる。

俺もなんとかこれ以上身体を痛めつけたくないんだけど、残念なことに迫るレイピアを避けることができない。

リュリーティアさんのアドバイス通りに、ナルシストな性格のクイットゥナーを煽ってミスを誘おうとはした。

しかし結果は違った。元々素早く身体を突いてきたレイピアは、精度と速度をましてプスプスと突き刺してくる。

さらに困ったことに煽った影響なのか、痛みを少なく且つ動けなくならないくらいにいたぶって攻撃をしてくるのだ。


「よくも私に向かって、その頭って将来は禿()げそうだなとかナヨっとしているなとか言ってくれたね。ナヨっとしているはまだいいだろう……だが私のこの頭が禿げそうだとは聞き捨てならない!!」

「ちなみにお祖父(じい)さんの髪の毛は?」

「……無い。」

「ご愁傷さまです。」

「貴様ァ!!!」


[敵の能力一部上昇を確認、能力一部上方修正]


クイットゥナーの身体が淡い緑の光に包まれると同時にスキルの警告が響く。


「許さん……貴様程度にコレは使うまでもないと思っていたが、全力で打ち倒させてもらうぞ!」


レイピアを正面に構えて睨みつけてくる、そこから身体を半身にしてレイピアを突きつけてきた。

さっきのスキルの警告で分かってはいるがクイットゥナーの何かしらがパワーアップしたみたいだ。

行動を注視しながら警戒をしていると、足を踏み出すのが見える。


「よっと! ぐっ……!?」


今まで避けることが叶わなかったので今度は攻撃の前に動くことにした、サイドステップで横にズレようとすると腕に痛みを感じた。

すぐに確認をすると、既にレイピアは俺の腕を突き刺してから元の場所へと戻っていた。

つまりは俺が攻撃の前に避けるはずだったのに、クイットゥナーはそれよりも早く俺の腕をレイピアで捉えていたのだ。


「遅い遅い、私の攻撃の前に避けるつもりだったのだろうけど全然速さが足りてないな。そら、これで終わりじゃないんだぞ!」


今度は足を踏み出すと同時に二箇所を刺された、レイピアの動きは本当に辛うじて見えるぐらいの速度でやってくるので防ぐのも避けるのもできない。

あの淡い緑の光はジンの魔法、付与魔法で身体速度を上げてきたのだろう、だからこそさっきとは数段違う速度で攻撃することができるのだ。

よし……落ち着いていこう、俺も今のアイツと同じくらいの速さを出せるはずなんだ。

さっき避けられなかったのは上がった能力をフルで使っていなかったからだと思う。


「もう大丈夫だ、今度は避けてやるよ。」

「ほう……? だったらそうしてみろ!!」


足を踏み出すのは見える、だけどそこからのレイピアの刺突はどうやっても見えないので相手の肩を見ることにした。

あの肩の位置だと……。


「ここだっ! ……いつっ!?」


身体を捻じるように動かして腹部への攻撃を避けようとするも、完全には避けられず脇腹を掠める形となった。


「これは驚いた。避けはしないまでも掠めるだけに留めたか、さっきまでの動きとは別物じゃないか。だがそれでも私には届かないがね。」

「お前に届かない? まさか、今の俺はお前より速いぜ。」

「この……減らず口をっ!」


クイットゥナーが足を踏み出して攻撃へと移る、瞬間まで身体の動きをしっかりと見て予測位置を割り出す。

これはまた腹部を狙ってきてるようだ、予想通りさっきと同じところを寸分たがわずに突き刺してくるので今度は完璧に避けてやることにした。

プライドの高さ故なのか、自分の思い通りの結果とならなかったのが嫌だったのだろう、クイットゥナーはもう一度同じ場所を狙う事を選んだ。

これはもしかしたら使えるかもしれない。


「ちっ……気に食わないな。初めにくらっていたのも演技だったというのか? だとしたら、本当に癇に障る奴のようだな。」

「いい夢見れたろ?」

「ふふ、ふふははははは! だがお前は傷を負っている、それに比べて私は無傷だ! 私より少し速いだけで状況を好転できると思っているのか?」


その傷についてだけれど実はあんまり心配はしていない、なぜなら水の付与魔法と自動治癒のお陰により現在進行形で傷が(ふさ)ぎつつある。

自己再生力強化がこんな形で活きるとは思ってもみなかった。

ちなみにこれに気がついたのはリュリーティアさんとの地獄の特訓でだ、あの地獄を味わっていて良かった。

そしてこれは秘密にしておく、ばらしてもメリットが無いからな。


「何を笑っている……!? くそ、くそっ! おちょくるのも大概にしろ!」


おっとやばい、顔に出ちゃっていたようでクイットゥナーの怒りが増していくぞ。

しかしこれが上手い方向に転がってくれた、最初の煽りではミスなどの効果がなかったのだけれど、今それが現れ始めて相手の動きのキレが鈍くなってきている。

レイピアの刺突を避けることが格段にやりやすくなった、冷静さって大切なんだな。


「嘘だ、嘘だ嘘だ! 私がこんな普通の奴に負けるはずがないんだよ!? くっ……なんで当たらないんだ!!」


段々とおざなりな刺突へと変わっていく、そろそろ反撃の時間かな。

またもや狙ってきた腹部への刺突、その突き出して伸ばされている手首を掴んで相手の身体の中へ滑り込み、そのまま背負い投げを決める。


「グェッ……!!? ゴホッ、うぅ……。」


フワリと短い滞空の後に背中から叩きつけられたクイットゥナーは、すぐに立ち上がるも苦しげな呼吸をしている。



「やっちゃえトージ!!!」



最後のキメに相応しい応援を背中に受けて力が漲ってくる。

フラフラしながらもはや刺突と呼べない攻撃をしてくるのを躱し、腕に手刀を打ち込みレイピアを落として軸足を蹴って膝をつかせる。

丁度いい所にある顔めがけて、その場でくるりと回転して中段後ろ回し蹴りを決めた。

軽く地面を転がっていくクイットゥナー、ピクリと一度反応した後そこから起き上がることはなく俺は勝利を収めた。


「シャルルー!! 応援ありがとなぁー!!!」


振り返って後ろの観客席を見ると、身を乗り出しながら喜んでいるシャルルが目に入ってきた。

隣に立つリュリーティアさんは、腕を組んでさも勝って当然ですといった顔で頷くだけだった。

やだあの人、師匠の貫禄があり過ぎる。








「すごい、傷がもうほとんど塞がってます。なんで医務室に来たんですかキミ。」


ドゥードさんに傷の具合を診てもらったら酷いことを言われてしまった。


「念の為……ですかね?」

「そうですか、もう帰って大丈夫です。じゃあえっとこの薬をあげます、これを傷に塗ると綺麗に治ると思いますので。」

「もっとこう手厚い何かを期待させてくれてもいいじゃないんですかね?」


来て早々帰らされるのも少し悲しい。


「私も最初はその服の血汚れを見て怪我を治すつもりだったんですけど、いざ治療に入ろうとしたらほぼ治っているんですから拍子抜けしたんですよ?」


水の付与魔法と自動治癒でメキメキ傷が治っていくのを肌で感じていたから、本当は行かなくていいと思っていたんだけどシャルルがどうしてもと言うから仕方なく来た次第なのだ。


「とにかく健常な人が医務室に長いこと滞在されるのは困ってしまいます。まだ試合が残っているのでしょうからその準備をしてください。ささ、どうぞ出口へ。」

「対応が冷たい……。わかりました、これで失礼します。」

「あっ、最後に一つ。お名前はなんて言うんですか? 前は聞きそびれてしまって。」


扉に手を掛ける途中で呼び止められる、そういえば俺はドゥードさんを知っているけどドゥードさんは俺の名前を知らなかったか。


「八代闘司って名前です。ここの常連になると思いますので是非覚えてください。」

「はいはい闘司さんですね。それじゃあまた後でこの医務室でお会いしましょう。」


意外とジョークが通じる人なんだな、俺としてはジョーク半分本音半分なんだけど。

今度こそ扉を開いて医務室を後にした、医務室を出ると外で待っていシャルルが近寄ってくる。


「トージ。もう傷痛くない?」

「ああ大丈夫だよ。というか初めから大丈夫だって言ったのに。」

「ダメ! ケガを甘くみちゃいけないんだよ?」

「分かったよ、心配してくれてありがとな。」


本当にいい子だなぁ、いい子すぎてこのまま担いで連れ去りたいくらいだ。


「そもそもあんな攻撃を当たってるのが悪いのですわ。(ワタクシ)ならササッと避けておりますのに。」

「ししょう……じゃなくて、リュリーティアさんなら楽勝なんでしょうけど俺は違うので無理を言わないでくださーい。」

「まったくもう。さて、それではお昼を食べながら次の試合の対策を立てるとしますわよ。」










面倒なことに午後にもう一試合あるそうだ、大人しく提案を受けて次の相手の情報を頭に入れるとしよう。

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