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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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相手を知ろう

次回更新は三日後になります。

マリーさんと戦っていた時の方が幸せであったかのような地獄の特訓をさせられた翌日。

今日もいざビシバシやりますわよと死の宣告をされて連れてこられた闘技大会会場が、何やら少し賑わっているのに気づいた。

皆一様に大きな紙が貼られた立て看板の前に集まっているのだ、気になったので俺達もそこに近づいて騒ぎの正体を確かめてみることにした。

しかし人混みで上手く近づけなくて見えない、なので俺は心の中で喜びながらシャルルを肩車することにした。


「どうだシャルル見えそうか?」

「んんー? トーナメント表って紙に書いてあるよ、あっトージとリュリーティアの名前だ。」

(ワタクシ)と闘司さんのブロックと対戦相手のお名前は分かりますか?」

「ちょっと待ってね……。えっと、トージはBで相手はクイットゥナー、リュリーティアはAで相手はローレライだって。」


ひとまず確認できたので人混みから離れることにする、肩車はやめたくないのでそのまま。


「ちゃんと俺とリュリーティアさんのブロックは別れていましたね。」

「そのようですわね、今度グリンダルさんにお礼の品でもお持ち致しましょうか。」

「それが良さそうですね。」


グリンダルさんお酒好きそうだしそういう物を持っていけば喜ぶかな。


「しかしそうですか……。闘司さん、突然ですけどこの後の特訓は残念ながら中止とさせていただきますわ。」

「やったー!!」

「は?」

「残念だなー!! 特訓したかったけど中止なら仕方ないなー!!」

「よろしい。さて、特訓は中止ですけれど他にやる事が出来ましたわ。」

「やる事ですか?」


はて何か用事でもあっただろうか、俺とシャルルは同時に首を(かし)げる。


「情報収集のお時間ですわ。」







昼食にはまだ早いけれど、俺達は前回シチューを食べた酒場へとやってきていた。


「やっぱりここのシチュー美味しいね!」

「そうかそうか、お昼前にまさかシチューを食べるとは俺は思わなかったぞ。」


話し合いのために来たはずなんだけど、シャルルがおねだりするものだから身体が勝手に注文をしてしまった。

美味しそうな顔で頬張る姿がとてもほっこりするので良しとしよう。


「では先程言った情報収集を行いましょうか。調べるのは他の選手達についての詳細などをですわ。」

「はぁなるほど……。それで、今からこの酒場の人達に聞いていくんですか?」

「一人一人聞いていくのは面倒ですし、嫌がられて話してもらえないかもしれません。ならば、喜んで話してもらえるようにするまでですわ。」

「そんな事が可能なんですか、一体どんな方法を?」

「簡単ですわ、闘司さんリハート金貨を1枚いただけます?」


何に使うのか謎だったけれど、金貨の使い道に困っていたので特に気にせずリュリーティアさんへあげる。

それを手に取ったリュリーティアさんは立ち上がり軽く周りを見る、何をするのだろうと眺めていると。

バンッ! 突然テーブルを強い力で叩いて大きな音を立てた、幸せそうにシチューを食べていたシャルルがその行動に驚いている、ごめんな。

しかしその音によって店内は一瞬で静まり、こちらを怪訝そうに注目する客の視線で満たされた。


「皆さん、いきなりですけれどお聞きしたいことがありますの! どなたか闘技大会に出る選手の情報を教えていただけますか?」


だが、静まっていた店内は徐々に喧騒を取り戻して今の質問を無かったことにしようとしている、中にはリュリーティアさんへ野次を飛ばしたりもしている。

さすがに今のじゃ聞き出せないだろうと思いますけど。



「そうですか教えてもらえませんか。せっかく教えてくれた方の食事代を全額お支払いしようと思っておりましたが……いないのでしたら仕方ないですわね。」



ピタッ……、再びの静寂。

うわ、金にものを言わせたぞこの人。

ひとり、またひとりとテーブルへと寄ってくる、それを皮切りに我先にと人が集まってきて、最終的には店の中のお客全員が俺達のテーブルを囲んでしまった。


「お、おれ選手の情報いっぱい持ってるぞ!」「私だって知ってるわ!」「おい押すなよ!」「オレが先だぞこの野郎!」


暴動に発展しかねない程の事態になってしまう、このまま何もしないわけにはいかないので、何故か俺が列整理をすることになった。


「ふふ、皆さんありがとうございます。では一人ずつお聞きしますのであの人の指示に従って並んでくださいます? それと店主さん、こちらを。」


先程俺が渡したリハート金貨を指でピンと弾き、店の奥で静観していた強面(こわもて)の店主へと飛ばした。

くそっ……カッコイイじゃねぇか……!


「皆さんのお支払いは(ワタクシ)が受け持ちました、お釣りは貰っておいてくださいませ。」


決め台詞とばかりにポーズをつけてそう言い放った、結構ノリノリだなこの人。







酒場での情報収集を終えたのちに立ち寄ったのは様々な武器を取り扱うお店、ガンボさんの武器屋へとやってきていた。


「という事で本戦での相手の情報を元に、相手が使ってくるであろう武器の対策などを知っておきましょう。」

「わーわー、パチパチ。」「パチパチー!」

「おいお前ら、というか知らねぇチビも増えてるがなんでそんな事を俺の店でやるんだよ。」


お店の一角を陣取って作戦会議を始める、もちろんガンボさんは許可してない。


「ここなら何でも武器がございます、これ以上の場所と言ったら闘技場の近くしかありませんわ。」

「だったらそこへ行きゃいいじゃねぇか。」

「今朝行きましたし、またここから行くのは遠いので嫌ですわ。」


ワガママお嬢様かアンタは。

ガンボさんも呆れているようで、好きにしろと言ったあと店の奥へと引っ込んでしまった。


「帰りに何か買っていきましょうか……。」

「余計な出費は抑えるべきですわよ。」

「ダメですー! ガンボさんが可哀想なのでせめて武器の一つ買って帰りますよ!」

「頑固ですわねぇ。」


どの口が仰るんですか、まったくもう。


「それでは始めましょうか。まずは闘司さんの初戦の相手、クイットゥナー選手から参りますわよ。」


クイットゥナー、俺達と同じく今大会初出場の選手。

予選で使用していた武器はレイピア、珍しい武器もさることながら本人の性格も相まって色々注目されている選手だそうな。


「幸い闘司さんはレイピアの事を知っておりますし攻撃方法も把握しておられます。刺突メインの攻撃をどう躱して反撃していくかが勝利への道ですわよ。」

「でもレイピアって結構先端が細くて捉えづらいですよね……。」

「そうですわね。レイピア単体を見ると非常に避けるのが難しいですが、それを繰り出す腕と踏み出す足、目の動きを見ていれば攻撃箇所は絞れてきますわ。」


なるほど、メモメモ……。


「あとは……クイットゥナー選手はかなりのナルシストらしいのでそこら辺を利用して、相手の感情を逆撫でする戦法をとるといいですわね。」

「それって攻撃が激しくなって逆に危ないのでは?」

「レイピアという繊細な技術を用いる武器を使用している方が激情に囚われたりしたら、見えてくる結果は知れておりますわ。」


鼻でフンと笑いそう言い切る、怖い。


「残念ながら魔法の情報は無かったですわね、予選では一度も使用していなかったようです。つまりは、使わなくてもそれなりの実力があるということ、お気をつけください闘司さん。」

「はい、頑張らせていただきます。それで今度はリュリーティアさんの相手である、ローレライ……でしたっけ?」


ローレライ、俺の世界ではたしか妖精とかなんとかだったな。


「そうですわ、ローレライ選手は少し変わった風体をしているそうです。口を隠すような布を巻き付けて、緑の髪の毛が顔を覆い隠すほど異様に長いそうですわ。それに、武器は持たないみたいです。」

「武器を? それはつまり、格闘術を使うってことですか。」

「いえ、そうではありません。どうやら予選では開始位置から一歩も動かず、相手に降参を申告させたらしいですわ。」


それはたまげた、一体どんな手品を使ったんだ。


「選手曰く、何かが聞こえたと思ったらいつの間にか降参をしていた、との事です。」


何かが聞こえていつの間にか降参……、とすると。


「リュリーティアさん実は俺の世界にもローレライっていう言葉があって、こういう話があるんですけど……。」


ローレライ、その歌声をもって川に訪れた船員を魅力して、舟を水没させてしまうという伝説。

それを伝えて一つの考えをあげる。


「もしかしたらその降参した選手が聴いたのは歌ではないですかね?」

「ふざけてる……訳ではないようですわね。続けてもらえますか?」

「えぇっと、その歌声に力があるわけじゃなくて……歌声に魔法が込められてたり……なんて、しませんかね? こう、人を操る的な魔法を……。」

「歌に魔法……。」


腕を組んで目を閉じ、何かを考えるようなポーズをしている。


「あ、あの本当にただの思いつきなのでそんな真剣に考えなくても」

「それかもしれません。」

「えっ?」

「人を操る魔法というものはございませんが、そういう方向に誘導できる魔法はありますわ。恐らく闇属性の魔法を使用したのでしょう。」


闇属性はたしか、シェイドだったか。

恐慌魔法や分身魔法、気配を消したりする他に人の不安を増大出来たりするんだよな。


「不安を増大……あっ、そういう事ですか?」

「予想できましたか。相手選手の、もしかしたら負けるかもしれないなどの不安を増大させて、棄権させるように仕向けたのかもしれません。さらにローレライ選手の異様な風貌も不安に拍車をかける、と。」

「リュリーティアさんが相手を恐れるなんて事はないと思いますけど、厄介な相手ですね。」

「聞き捨てならない事を言っている気がしますけれど、対策はもう考えつきましたわ。」

「え、それってどんな方法ですか?」


どういう事をしようとするのか聞こうとするが、口に指を当てられて質問を遮られる。


「それは当日のお楽しみですわ、今ここでネタを話すとシャルルさんが楽しめなくなってしまいますもの。そうですわねシャルルさん?」

「グーグー……。」

「寝てますね、話しが長かったのとさっきのシチューでお腹が膨れたのが原因でしょうね。」

「あー……まあ構いませんわ。とにかく、大それた作戦でもないので闘司さんにお話しする価値はありません。」


そう言われると気になってしまうのですが。








「はいはいそんな目で見ないでくださいまし。まだ他の選手の情報が沢山あるのです、今日はじっくりと対策をねっていきますわよ。」


そうしてガンボさんに叩き出されるまで店に居座って作戦会議をした。

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